第6話 最初の街シルベルタ

 遺跡のダンジョン攻略はを終えた俺達は、てっぺんから見えた湖へ行く事にした。10分くらいで着いた湖は透きとおった綺麗な水だった。


どうやらこの水は飲むと魔力と体力が回復するらしい。

便利なので亜空間に貯めておこう。


ダンジョン攻略のお陰で、俺達はレベルとスキルがまた上がって俺はレベル55、ララは正体不明の使いを倒したのが大きかったのか70になった。


なので俺の亜空間の大きさは最大で40x40になり、数は48個まで造れる。


亜空間1個でも1600トンの水が貯められるので1個で十分だろう。


亜空間に水を貯め終わったら、何処からか声が聞こえて来た。


「人族なんて珍しいわね、500年ぶりかしら?また私に魂を捧げに来たのかしら?よく観ると私好みの良い男だし」


そう言って洗われたのはシースルーのガウンを纏った絶世の美女だった。


形の良い乳房と乳首が透けて見えるので目のやり場に困る。なんて綺麗なお姉さんなのだろう。ポ~とした俺の目に映った文字は水の妖精ウンディーネだった。


妖精か?


その時ウンディーネはプルッっと身震いした。理屈抜きで俺の適性鑑定を感じたのかもしれない。


「嫌な予感がするわ、貴方から魂をもらってはイケナイ気がする。何がお望みなの?」


べ、別に俺に敵対しないなら何も問題無いよ。戸惑って声に出せず心の中で言う。


何も言わない俺に不安を感じたのか、要求もしてないのにウンディーネは焦って言った。


「エリクサーなんてどう?2個、ううん、5個あげる」


目の前にパッと出されたので反射的に受け取ってしまった。


「あ、ありがとう」


「いいのよ、見逃してくれたお礼だから。困った事が有ったら、またいらっしゃい」


「はい」


俺の返事を聞くとウンディーネは湖に消えて行った。



「なんだかな~」


でもエリクサーをもらったし、スキルも増えたからウンディーネさんに感謝。



俺はレイス、リッチ、ヒュドラのお陰で魔法はどの属性でもほとんど使えるようになっていた。魔力操作の修練を兼ねて出くわす魔物は魔法で倒すようにしている。


お陰でだいぶ上手くなった。




遺跡のダンジョンを出て2週間が過ぎた。この頃になると出現する魔物が弱くなってきたと感じる。ひょっとするとあの遺跡が中心だったのかもしれない。


魔物との遭遇も落ち着いたので休憩場所を探しているとララが何かに気がついた。


「にゃにゃ」

「どうした?ララ」


魔物の気配は感じないが……ララの視線の先を見ると木に白骨化した骸が寄りかかって座っていた。


手にはミスリル剣と盾を持っている。魔物に襲われた冒険者なのだろうな。


首には名前と番号が彫ってあるミスリルのペンダント、これは認識票みたいな物だろう。後は指輪をしているな。


本で読んだことが有る。こういう物は冒険者ギルドに持っていけば消息が判って助かると。


これも何かの縁だ持っていってあげよう。


遺品を亜空間に入れ歩き出して直ぐにある違和感を感じた。


「にっ」


ララも感じたようだ。口では説明が難しい、森の雰囲気が変わったぐらいにしか表現出来ない。


しかし魔物が出るでもなく異変があるわけでもない。考えながら進んでいると急に視界が広がった。ちょっと先に街道が見える。森を抜けたのだ。


「やった~!」

「にゃ~」


歩く速度も自然と速くなる。やっと普通の生活ができるのだ。まぁ、森の生活も楽しく俺達が強くなる為には必要な事ではあったと思うが。


街道ですれ違う人達は俺達を見ると憐れむような目をするのだが何故だろう?


歩くこと半日、日が暮れるちょっと前に街の防壁が見えて来た。


皆が街に入る為に順番に並んでいるので俺も最後部に並んだ。


順番が来て門番の人が俺を見ると質問してきた。


レベル35の衛兵の人で職務に忠実で公平な考えを持っている人だ。


「何処からか来て、なんの為にここに?」


予め用意していた応えをする。


「北に在る田舎の村から冒険者になる為に出て来たのですが途中で盗賊に襲われて身ぐるみ剥がされてしまって」


「それでか、可哀相に」


俺を上から下まで見た後、俺の足元をじっと見ている。


あ~、俺の格好が変だったのか。葬儀の後だったので白いYシャツに黒いズボン。洗濯はしているがシャツは黄ばんでズボンはしわくちゃでヨレヨレ、おまけに裸足で板を弦で結んで靴替わりにしている変な奴だ。これ。


「身分証が無いと街に入るには銅貨10枚が必要だが?」


金目の物は持っているがお金は無い。貴重品を出す訳にもいかないし。


「そうだ、西の森でこの様な人に会ったのですが」


森で白骨化した骸の遺品一式をポケットから出したようにしてを渡した。


「ん?……これはテリーさんの認識ペンダントじゃないか。6年前から行方不明なんだ……俺が駆け出しの頃、お世話になった人なんで気にしてたんだが。解った、後はギルドで詳しく説明してくれ」


そういって青い水晶をおれに触らせて、犯罪歴を確認してから冒険者ギルドに連れて来てくれた。





「おかしいな西の森は大して広くないし魔物も出ない。薬草の採取が関の山、それでも捜索はしたんだ。それにテリーはAクラスでもう直ぐSクラスに上がるくらいの腕で、このギルドのエースだった男だ。その辺の魔物に殺られる訳が無いのだが……坊主が嘘を言ってないのは俺にも判るし、盗賊にでも騙し打ちにあったのか?」


今、俺はここのギルド長のマッカラムさんと話しているのだがどうも話が噛み合わない。


大体、あの森は広大でけっして狭くはないし魔物だって強いのがうじゃうじゃ居た。俺が見たり経験した事とは全く違う。


これは本当の事は言わない方が良さそうだ。


「何らかの思いもよらないトラブル巻き込まれたのだろう。何れにしてもよく持って来てくれた。僅かだが褒賞金に色をつけておいた。良い靴でも買ってくれ」


褒賞金が出るのか助かった。


「下の受付で受け取ってくれ、冒険者登録も出来るぞ。期待している」


「はい、ありがとうございます」


受付で貰った褒賞金は銀貨25枚だった。この世界の相場は判らないが、これで風呂付きの宿に泊まれるかもしれない。


「あと冒険者登録したいんですけど」

「分かりました。ではこの水晶に触れて下さい」


俺のステータスが全部判るのかな?不味いなかと言って改竄するスキルなんて無いし。


「魔力量はずば抜けていますが属性がありませんね。無属性の魔法は習得が難しいと言われていますが大丈夫ですか?」


良かった。魔力量と属性しか判らないらしい。


「剣術が得意なので何とかやってみます」


「そうですか、ではこのカードに名前を書いてここに魔力を通してください」


言われた通りにすると白いカードがクリーム色に変化した。それを受付嬢がタブレットみたいな魔道具に乗せた後、銅製の認識ペンダントと一緒に渡してくれた。


「Fクラスからのスタートになります。頑張ってくださいね」


「ありがとう御座います。あっ、ララは登録しなくても?」


「あら、かわいいフォレストキャットですね。こんなに毛の長いのは初めて見ました。じゃ、従魔登録しましょう。その子の鼻に登録証を当てて魔力を通した後、一度戻してください」


「はい」


鼻紋でも取ったのかな?


「フォレストキャットで名前はララね?」

「そうです」


言われた通りにして彼女に渡すと再びタブレット型の魔道具に乗せた。戻って来た登録証には従魔(フォレストキャット・ララ)と俺の名前の下に記されていた。


ボルテックスタイガーなのだけどね。まぁ、いっか。


「解りました」


ギルドを出て教えてもらった宿へ直行。風呂にララと入ってベッドへ、自分の家のベッドとは比べものにならないが

すごくふかふかに感じる。安心感からか俺とララは直ぐに眠りについた。

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