第4話 遺跡のダンジョン

 オークの縄張りを抜けからてひと月が経った。あれからオーガ、バイパースネーク、ラミア、アラクネの縄張りに次々とぶち当たったがスキルアップしてたお陰で難無く進む事が出来た。


待望の胡椒に近いグルの身や岩塩を手に入れたので食生活も充実している。


そして今、俺達はキマイラと対峙している。



LV60 キマイラ

長所:無し

短所:性欲強い、考え込む、騙され易い

適性職業:キマイラ

適性一致:有

変更可能職業:ゴブリン、オーク、サキュバス……



この世界の魔物は大体が性欲強いが付いているので本当に楽で助かる。


炎や石化のブレスを吐かれると厄介なので即座に定番のゴブリンへ変更する。


「今度はララの番だね」

「にゃん」


オークの縄張りを抜けてからレベルアップが偏らないように順番に倒す事にしている。


ララがくるんと尻尾を振ると小さな魔法陣が先に出来た。そして再び尻尾を振るとキマイラの頭がゴトリと落ちた


「斬れ味最高、絶好調だね」

「にゃ」


いつものように亜空間にキマイラを入れて再び歩き出す。

暫く進むと注意していないと見落としそうな直角に曲がる小径が左側にあった。



「どうする?」

「にゃにゃにゃ」



今の俺のレベルは28だ。ララは32なので多少の自信もある。ヤバくなったら亜空間に逃げ込めばいいから気は楽だ。


「良し、行こう」

「にゃう」


ララの危険察知は完璧だし、俺もさっきのキマイラの気配察知を使いながら森の小径を進む。


段々と上り坂になって来た。10分ほど歩いたところで木々の無い拓けた丘の様な所に出た。


「あそこに遺跡が在るね。行ってみよう」

「にゃ」


更に上って5分で遺跡に到着。最初に俺達が転移した遺跡よりも外観は風化しているが形を留めてしっかりと建っている。


中に入れそうだ。入口から薄暗いので生活魔法のトーチを使って進んでいく。


最初に遭遇したのはコウモリの魔物だった。サッキングバッド、レベルは35で俺達よりやや高い。だけど特に変更する事も無くララにあっという間に狩られた。しかも役に立つスキルは持っていたのでありがたい。


今のところサッキンングバッド以外魔物は出ないし、罠も無いただの一本道になっている。


3分くらいで大広間みたいな場所に出たが、大広間の真ん中に大きな丸い石が乗っかった台座が有るだけで何も無く、壁には色々な模様や人物像が彫ってあるが目新しい物は見当たらなかった。


「何も無いか……待てよ」

「にゃ」


ララも気付いたようだ。


左の奥に下り階段が有る。


「にゃうう」

「そうだね、魔物の気配だ」


用心しながら階段を下りるとそこは遺跡ではなく洞窟いやダンジョンと呼んだ方が良いのかもしれない所だった。


「これは気を引き締めなくては」


俺は亜空間からオーガジェネラルが持っていた疾風の剣を取り出し握り締める。


「にゃ」


1、2歩進んだだけなのにもう来たか。現れたのはソードブレイカーだった。


ソードブレイカー LV65 血も涙もない、剣術好き

             傲慢



最初の階でこのレベルか、最下階はどんだけ凄いんだよ。


検索でヒットしたのは[剣術好き]のオーガファイターと[傲慢]のアラクネだった。ここは元の能力が低いオーガファイターを選ぶ事にする。


斬り掛かって来た剣を軽く受け止め弾き返し、オークキングの斬撃波でソードブレイカーを真っ二つにする。


ソードブレイカーは黒い霧となって消え剣をドロップしたので鑑定する。


「名称はポイズンソード。うわっ、この剣はヒュドラの毒効果が付与されている。えげつないな」


とは言っても効果は期待出来るので疾風の剣と持ち替える。加えて俺に足りなかった剣術スキルも得られたので大満足。


その後もソードブレイカーや蛙の魔物フロッガルを倒しながら進んでいくと無数のファイヤーボールが飛んできたが、予めララが感知していたので余裕でキマイラのマジックシールドを張って防ぐ。


遠距離からの魔法攻撃は初めてなので新鮮な感じだ。


俺に目視される前に撃って来るのだから高い技量を持った魔物なのだろうな。


暗い奥から現れたのはLV66のレイスだった。うろ覚えだがアンデットで幽体に近い存在だった筈、なので物理攻撃は効かない可能性があるし、今のところ変更出来る魔物がいない。こういうタイプは難しい。


「ララ、頼む」

「にゃう」



ララの下に青白い魔法陣が展開されバリバリと音を立て青白い光の波がレイスを襲う。ララの雷属性ライトニングウェーブだ。


光に触れたレイスは黒い霧となりロッドをドロップした。


「低位のアンデッドを操れる漆黒のロッドだ」


亜空間に放り込み歩き出す。右奥に下に降りる階段をみつけた。



地下2階に降りて遭遇したのはLV67のミスリルゴーレムだ。


動きもなかなか速いし厄介そうな奴が出てきたと思った。

変更可能な魔物はあるのか?直ぐに検索する。


有った。単純繋がりでホーンラビットがヒットしたので変更する。


しかしレベルや能力はホーンラビットLV1になってもミスリルゴーレムの体の硬さは変わらないので、頭と胴の隙間から見えるコアを破壊しなければならないのは、やはり厄介だ。


俺はオーガキングの持っていた強者の槍に持ち替える。


ミスリルゴーレムの動きは緩慢になったが、奴の拳が当たったら痛そうなので距離を取りたい。


身体強化をしソードブレイカーの足捌きを使って一気に間合いを詰める。


レベルの差とスキルの差で、ミスリルゴーレムは俺の動きに対応出来ず、俺は簡単に僅かな隙間から見えるコアを突く事が出来た。


黒い霧となったミスリルゴーレムがドロップしたのはミスリルの塊。ど定番だがありがたい。


ミスリルゴーレムを倒しながら進んでいくと道は二股に分かれていた。


どっちに行こうか?そういえばオーガの巫女が持っていた占いの骨が有ったよな、使ってみよう。


ボッグリザードの骨なのだが表は綺麗な紋様が彫ってあり裏は平らに削ってある。


5個投げて表裏の数と落ちた時の形で占うらしい。ここは単純に表が多く出たら左としよう。


5個取り出して空中へ。表3裏が2、左に決定だ。


曲がりくねってはいるが一本道だった。突き当りは広い部屋のようになっているが何も無い。かくし部屋も見当たらない。


「まぁ、トラブルに遭わなかったと言う意味で、吉凶を占うのであれば、これはこれで当たったと言う事になるのかな?」


「にゃ」


仕方ないので引き返し右に進む。


「にゃにゃ」


かなり距離は有るが魔物の気配がある。


「ああ、それもうじゃうじゃ居る感じ」


この道も一本道なので気付かれ無いように少し進んで、コカトリスのスキル[バードアイ]を使って見る。


「おお、よく見える」


牛の頭に筋肉隆々で立って歩いてる。そう、ミノタウロスがウヨウヨと広い部屋を徘徊しているのだ。


性格は粗野、冷酷、意外に生真面目でもあるらしい。酒好きってのはよく言われているな。


レベルは65~68で全部で12頭だ。小説では肉は美味しとされているのを思い出した。


途端にブランド牛の肉の塊に見えて来た。美味しそうな霜降り肉。俺はだいぶこの世界に毒されて来たようだ。


[粗野]繋がりでクレイジーベアLV1に変更。


「ララ、肉を傷つけたくないので頭をハネちゃって」

「にゃうん」


良い返事をしてララは空中に12個の魔法陣を3重に構築した。


「にゃぉ」


ララの号令で一斉に強力なウインドカッターがミノタウロス目がけて飛んで行く。


ララが魔力をコントロールしているのだろう。軌道を変え1頭、1頭へ的確に命中していく。首が落ちたのを見たので部屋と向かった。


部屋に入ると頭数分のミノタウロスの斧や力の指輪や霜降り肉が落ちていた。


「あっ、そうか。ここはダンジョンだった。倒し方なんてどうでも良かったんだ」


照れ笑いをしてララを見ると「なぁに?」と言う顔をしていたので良しとするか。


ドロップ品は全て回収し奥を見ると降りる階段が有った。


この時点で俺はレベル45、ララは54になっていた。


美味い食材も手に入れたし、一息入れてから地下3階に行くとしよう。

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