第2話 スキルの検証
出発する前に困った事があった。部屋に居たときに転移したので靴を履いていなかったのだ。
「靴下で森にはさすがに入れないよな」
靴らしき物を作るしかないのでララに風魔法で樹を薄く切ってもらい、錆だらけのゴブリンの剣でなんとか形を整え生えていたツルの様な植物で縛り付けた。
なんとも歩きづらいが仕方がない。気を取り直して出発する。
ララにボルテックスタイガーに変身してもらい慎重に進んでいく。
ダンジョンなら下階か上階に進むにつれ魔物が強くなって行く。森なら奥に進むにほど強くなって行くのが異世界での大体の相場だ。
後ろは断崖絶壁だから遺跡は一番奥と考えるのが普通なので、これから出て来る魔物は強者なのだろうが……ちょっと引っかかる。
「にゃ!」
「魔物か?」
何が出て来る?ゴブリンの錆た剣を握りしめ身構えるが現時点ではララが頼みの綱だ。
茂みから飛び出てきたのは角の生えた兎の様な魔物数頭だった。
ホッとしたのと拍子抜けしたのとで、ぼけっとしていたら角の生えた兎の魔物が飛びかかって来た。
「しまった」と言う前にララの風魔法ウインドカッターで4頭の魔物は真っ二つになった。
「助かった。ありがとうララ」
「にゃう」
兎の魔物の血はゴブリンとは違い地球と同じで赤い色だった。
俺はスキルを使う。
ホーンラビット
長所:繁殖力強
短所:一本調子、単純
適性職業:ホーンラビット
適性一致:有
変更可能職業:ワイルドボア、ビックブル……
「なるほど」
気になるのは変更可能職業って言う所だよな。ダメ元でやってみるか。
「ワイルドボアに職業変更」
なんの変化もない。駄目か……。
すると目の前に文字が表示された。
『対象が存在しません』
『職業ストック帳に載っていません』
対象が存在しない……つまり生きてないと駄目って事か?
職業ストック帳って何だっけ……ああ、俺のスキルに有ったな。
つまり遭って職業鑑定するか倒さないと駄目って事だろう。
OK、今後に期待だ。
これどうしようか?ララを見ると食べたそうにしている。
そういえば腹が減ったな。こっちに来てから何も食べてないし。
例外は有るが魔物を食べる話は多い。角などの部位は売れる可能性があるし取っておくか。
「ララ、これ食べるか?」
「にゃ」
食べると言うので2頭あげると美味しそうに食べ始めた。
口のまわりが血だらけだ。後で洗わないとね。
流石に俺は生では食えないので焼くか煮たい。俺に魔法属性はないので属性魔法は使えない可能性が大だ。
ララの闇魔法は焼くというより燃やし尽くすと言う感じの物だし。
どうしよう。……確か生活魔法とか言うのが有ったよな。
考えるのを忘れていたが、この森でを生きていく上でどうしても必要な物が水と食料だ。ララには水属性は無いのでなんとかしなければ。
早速試してみる。……どうするんだっけ?確か体内の魔力の流れを感じて、魔力を練るみたいな……後はイメージがだいじな様な表現だった筈。
手のひらに集中して丸い水球をイメージする。
「ウォーター」
願いを込めて唱える。
すると10cm程度の水球が手のひらの直ぐ上に現れた。
「やった!」
叫んだ事により集中力が切れ水球は形を失い手を濡らし地面に落ちた。
だが成功は成功だ。後はホーンラビットをさばかなくてはならないが。この錆びた剣ではな。
砥石でもあれば研げるんだけど。
「仕方ない、血抜きをし水洗いをして皮ぐらいは剥いでそのまま焼くか。となると調味料も欲しいよな」
段々と贅沢になってくるのは現代人の性だ。
指先から出た5cmくらいのファイヤーボールで火をおこし肉の部分だけをムシって腹ごしらえをする。味は淡白で食べられるがやはり調味料が必要だ。
腹が膨れた俺は休憩をとる事にして、あらためて自分のステータスを見る事にした。
錬金術、鑑定、職業適性、亜空間……か、こうしてみると俺が学んで来た物に少なからず関連している感じだ。
アクセサリーを作るの必要な宝石の良し悪し、教職課程や心理学、統計、物理といった具合だ。
「確かに異世界の転生、転移、召喚ってそういう傾向があるかもね」
スキルの後ろに有る数字はスキルレベルの事だろう。10が最高って事だな。
面白そうなのは亜空間だ。よく出て来るアイテムBOXみたいな物なのだろうが、感覚的には部屋と言う感じがする。
造ってみるか。
「亜空間」
スキルなので魔法とは違いそのまま対応してくれる。
たぶん他の人には見えないという確信がある。俺には目の前に10mx10mの部屋が見えているのだが。
大きさはそれ以上大きく出来なかったが、小さくは限りなく出来た。
数はどうか?最高で12個だった。これが今の俺のスキルレベルと言う事だ。
さて、次は中に物を入れる作業だ。試しにホーンラビットの角を入れてみる。大丈夫入った。そして視界から消えた。
問題は生き物だ。俺は亜空間に進み境界を越えた。弾かれる事なく中に入る事が出来た。外の景色は見える。
「にゃ~お!」
突然消えた俺に慌てたのはララだった。キョロキョロと見回す。
どうやら気配も消せる様だ。ララは手当たり次第と言うかそこら中を走り回っている。そして俺にめがけて走って来た。
ボルテックスタイガーの巨体で当たられたらひとたまりもないので、反射的に避けるが亜空間をすり抜けた感じで壁から壁へと通っただけだった。
他は入れない?……もしくは俺の許可が必要?
亜空間の外に出ると俺を察知したララが突進して来る。
「ララ!それは不味い」
「にゃ」
俺にぶつかる寸前に元の姿に戻り、ふわりと俺の腕の中に収まった。
「悪い、悪い」
「にゃにゃ」
今度はララ抱っこして亜空間へ入る。良し、問題無い。これで安心して眠れる。
「先に進もうララ」
「にゃう」
俺達は足取りも軽く再び歩き出した。
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