第8話 南の行商帝国へ。間に出会った行商人達。。
チーキルをなんとか倒した後、援軍を呼ばれては敵わないので、その獣を夜食とした。南帝国に入ったら御法度の件だが、まだ帝国敷地内に入ってない、ここ、帝国内以外なら大丈夫だった。
チーキルので足の肉は、臭いが強いが、臭い隠しのための強い薬草に包んで焼くと、噛みやすい、香ばしいモモ肉へと変化する。薬草が臭い消しと味付けと肉への影響を与えているのだろう。
ノワールは嫌そうにしていたが、ヴィクスは素直に食べた。これから長い旅になるのだ、人間より劣るが知恵ある獣だからと言って、食べないわけにはいかない。そもそも腹は酒場の事件から何も手をつけていなかった。そう言うわけもあってか、結構美味しかった。
肉汁を拭きながら、ハグハグ、と、ガツガツ、と、食う姿は、王宮にいたら恥晒しの死刑ものだが、美味しく頬張る姿はつい最近まで15歳と言うのが素直に感じ取れた。
これからの食事代のことも考えなくては、、そう、考えているバーバリーの姿を見て、食欲がないと勘違いした放浪王女は、彼の分まで、手をつけようとした。彼は素直にやめてくれと言って、与えなかった。ノワールの分まで食べたろうお嬢さん、、。と、諌めたら、素直に頷いた姿は、可愛らしいととるべきか。
可愛いと思わずにしても、これから一緒に運命を受託するのだ。慣れねば。
彼女はすっかり満腹になると、焚き火の後も消さず寝こけてしまった。
そうだろう、このお嬢さんは旅に慣れてない。下手すると、肉の匂いが他の獣を呼びつけるとか、焚き火が強い風に吸い込まれて、野良火事になるとか知らないのだ。そこには明日から充分にきちんと自分が上格だと教え込まないといけない、そう、バーバリーは思案した。ノワールも猫の姿に戻っていたので、自分が寝ずの夜番だ。
まあ、ノワールも猫の姿をとっているだけで睡眠は彼にとっては必要ないのだが。
ーー2時間だろうか。その刻が刻んで来た時、人間の声がした。
チーキルか?一瞬、緊張して、剣を掴んで耳を澄ませて息を殺すと、しかし、その声はこちらに聞こえるように、大声だった。人間として判断して良さそうだ。
声の主はこちらに「剣を下げてくだせーー怪しいもんではありますが、悪意は持ってません!!」と寝ているヴィクスも起こす声で言って近寄ってきた。
声の主が見えて、ヴィクスは驚いたようだ。寝ているつもりはなかったのだろう。
「貴方達誰?」「お前達、ひょっとして、南行きの行商人か?」
ヴィクスは驚いた声で、バーバリーは魚が水を得たように嬉々とした声で彼らに声をかけた。
行商人とよばれた彼ら団体達は、嬉しそうに言った。
「そうでやんす!これから、中央で仕上げたモノ、西で手に入れた美術品モノを、買い占めてきたモノを、ここから南のルドールに売りに行くんでっさ!」
行商人は少しトーンを落として、落ち着いた声で言う。
「貴方達、ここで何してるんで?ひょっとしてと思って声を掛けてみたんすが、あってますかい?」
バーバリーは喜ぶ声で言う。礼儀も忘れずに。
「ありがたいね、こんなところで馬車に乗れる上にクセのない行商人の手伝いをできる参謀とは!そうさ、俺たち、東から来た、お尋ね、、、いや、、放浪の旅人でね、、、!いきなりの旅路で楽な行路足と、南に入る準備がなかったところでして!」
ヴィクスはそれを聞いて、無礼な、しかしながら愛嬌のある声音で。
「えーー!!行商人って初めてみた!え?ひょっとしてそのカッコいい生き物ーーダクトだっけ?に乗せてくれるの?ありがとうございます!」
その無礼にも笑顔を浮かべて行商人達は、屈託なく言う。
「ダクトにも乗せてやるが、それには代金、つまり労働してもらわんと?な?、、しかしまあ、ルドールまで、ウチらの荷台に乗っていきな!そのかわいい黒猫も一緒にさ。」
黒猫姿のノワールもヴィクスの肩の上でニコニコ笑っていた。
その10時間後、彼らはとうとう、堂々と南の行商とうまい飯で栄えたルドール帝国に入国した。
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