第4話 葡萄酒のツケ払い!

トホトホとした足取りで、街まで情けなく歩いて行くのは、この話の主人公、ヴィクスだ。

そうこうしているうちに夜更けが来てしまった。

ぐきゅるーううとお腹がなってしまった。。年頃とは言え、満足に食えていたのは、ここの宮殿暮らし、15歳の頃までの話。その宮殿の暮らしの時のご馳走(当時はそれがフツーだと勘違いしていた)を思い出しては口中に涎が出る。腹ぺこなのを隠しきれない。しかも手に持っているのは銀の匙と皿という不思議。食器だ。きっとコレに乗せるには王様やオバ様のような方の食事だろう。


フラフラしてようやく、街明かりが見えてきた頃、怒鳴り声が聞こえた。

一体なんの騒ぎ?そう、ひょっこり顔を覗かせてみると、先ほどの酒場で喧嘩が行われているらしい。

店主らしい恰幅のいい男が怒鳴る。ここまで聞こえた。

「だから、ここは無銭食事提供じゃねーんだよ!!ちゃんと金払ってくれよ!!あんた、人を殺した金で食って行ってる傭兵だろうが!!!」

いい歳した割には言葉使いが若々しい。見た目より若いのかもしれない。


相手はというと、片目が潰れた怪我を隠す眼帯が、いかにも、彼を『世間』から外に追い出していく空気を作っていた。

なんとなく彼に目をスーっと息を呑み込んで、見つめていたら、パチリ!と、目が合ってしまった!その眼帯の男がニヤリとするのを、なぜか、ドキッとして急いでこの場を立ち去ろうとした時ーーーパチンっと眼帯男が指を鳴らした。


その瞬間ーーーヴィクスは自分より遥かに屈強な男性たちに囲まれた。


男たちはタトゥーをしたり、髪を剃り上げていたり、いわゆる『夜』の男だった。

ニヤニヤしてヴィクスを囲んでいるところに、眼帯男が囲みに加わってきた。そしてなぜかヴィクスの肩を親しげに寄せてニヤリと本人はニヒルのつもりで笑えてるつもりらしい。いかにもな作り笑いをしてきた。


そして店主にこういう。「こいつ、俺のオンナだ。。コイツを好きにしていいぜ、金は現金じゃなくていいんだったらの話だけどな。」

店主は明らかに戸惑った様子だ。

「いや、だから、人殺した上に金もらうのがあんたたち傭兵だろう?そんなモヤシ少年にまで手を出してなんでやろーだい、お前さん、、。。」

「なんだ、酒場の店主にしちゃノリが悪いな。そんなんじゃ『夜』を楽しめないぜ?」


呆れるというかつまらない感じでタバコに火を吹かそうとしている眼帯ーーー。。

流石にヴィクスはイラついて、眼帯の股ぐらを膝で蹴り上げた。


ーーーーカキーンというような効果音。。!!

「いってーーーー!!何しやがんだ!!このくそモヤシ!!!」

急に周囲のマッチョたちがワイワイガヤガヤ響く。「大丈夫ですかい!兄貴!」「クソ坊主!俺たちの親分のオンナになりたかないのかよ!!」「いっちょ締めますか!!???」


【急に賑やかだな、、人間たち、、、】

隣から聞こえてくる声に思わずウンウンと頷く。?!?。だれ???横を振り向いた瞬間に腰を抜かしたヴィクス。今日は何から何まで夢のようだ、、。

そこには今日出会った猫ではなくて人間が黒ずくめのローブを纏って立っていた。

美しい顔立ちが隠せていない。漆黒の髪を腰まで靡かせ。緑色の目のオリーブグリーンがらんらんと灯を輝かせている。

ん?と腰を抜かしたヴィクスを見て。

【あゝご主人様、挨拶がまだでしたね。コレからよろしくお願いします。あなたの愛猫、ノワールと申します、魔法使いの館の外ではこの姿の時はまだお披露目してませんでしたね。】

腰を抜かしつつ、「よ、よろしくお願いします、、、。」とタシタシ後ろに尻餅ついて下がり頭をウンウンと頷く滑稽なヴィクスを見て、眼帯がイカつい声を荒げる。少し涙目だ。

「てめー!!よく見たら、オンナどころか、本当に“女の子“じゃねーか!!しかも、俺のオンナに相応しい度胸と器量良しじゃねーか!!気に入った。『夜』をしっかり叩き込んでやるよ!やってやろうぜ、お前ら!」


うおーーー!!


「喧嘩は他でしてくれーー!!」店主の悲哀が響き渡る。


『夜』は今宵どうなるのか。。




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