第8話 敗北者のバッジ

「残念だったな。」


その男は余裕そうな顔をしている。バッチを見ると、そこにはBランクと書かれていた。


私じゃ勝てない。私でもそんなことはわかっていた。だから、私は彼を見つめることしかできなかった。


「俺の能力はあらゆる物を壊す能力だ。お前の能力を知らないが、所詮Eランク。大した能力ではないだろうな。降参してバッチを全部渡してくれれば、見逃してやるぞ?」


「能力を自分から言うなんて、随分と余裕なのね。」


「ああ、Eランクなんて雑魚の集まりだからな。降参するか?するなら早くしてくれよ。」


正直、勝ち目はない。あいつがいつ攻撃してくるのかもわからない。どうすれば...


自分の心臓が激しく鼓動しているのを感じながらも、拳を固く握りしめた。逃げることもできない。しかし、ここで立ち止まってしまえば、すべてが終わる。覚悟を決めた瞬間、男が不気味な笑みを浮かべた。


「そうか、死にたいらしいな。」


その瞬間、その男の姿は目の前から消えて、鋭い何かがイチカに向かって放たれた。二発目が放たれようとしたその瞬間、男の動きは止まった。


「やめろ。」


いつも聞き慣れていた声が聞こえた。見ると、扉のところにろんが立っていた。しかし、左目にはいつもの眼帯がなく、青色の瞳が見えた。


「殺されたくなかったら、どっか行けよ。お前。」


「お前もEランクか?それは俺のセリフなんじゃないのか?」


「そうか。ならばやるしかないな。」


その瞬間、その男の身体は水色の箱のようなものの中に入っていた。


「なっ…!?」


男は驚いた表情をして、そこから出ようと試みる。


「無駄だ。その中では能力も使えなければ、まともに動くこともできないからな。」


ろんの片目はいつものように眼帯で覆われていたが、今はその下からうっすらと光が漏れ出していた。


「お前…Eランクじゃないのか!?」


「ああ、そうだ。俺はEランクだ。ただ、Eランクだからってなめたのがお前の敗因だな。そんなわけでじゃあな。ちなみに、そろそろ視覚と聴覚が失われるぞ。」


「や、やめろ。頼むから。おい!」


男の声はだんだんと小さくなって、完全に聞こえなくなった。


「大丈夫か?」


イチカは目を見開いたまま、言葉を失っていた。


「う、うん…ありがとう。」


「Bランクでも意外と勝てるんだな。ちゃんと前にしておいてよかった。」


「私のこと馬鹿にしている?」


「そんなことない。」


イチカは「はぁ...」とため息をついた。


その後、なんだかんだで誰とも遭遇することなく、僕とイチカは無事に訓練を乗り切り合格を果たすことができた。結局、僕たちはバッチを取ることはできず、昇進もできなかったが、生き残れたのでよしとしようじゃないか。


そんな地獄の3日間が終わり、自宅に帰って僕はすぐに寝てしまった。

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