第6話 世界最強

僕が目を覚ますと、またベッドで横たわっていた。しかし、そこは家ではなく、病院だった。


「大丈夫か?」


その声を聞くと、僕は身構えてしまった。


「安心しろよ、こんな時に攻撃なんてしないからな。」


恐る恐る目を向けると、そこにはあの男がいた。


「ここの病院の施設は凄くてな、お前のその怪我も今日大人しくしていれば明日には退院できるらしい。お前の左目も治せるかもしれないぞ。」


僕は、あんたは誰なのかと尋ねた。


「俺は先生だ。個人情報を言うことは禁じられているから名前は言わない。ちなみに、巷では世界最強といわれている。」


ああ、やっぱりこの島にいたのかと僕は納得した。本土にいるときにその噂を聞いたことがあったし、国の最後の砦とも言われていた気がする。彼が世界最強であるのは、その雰囲気からして間違いないだろう。


どうしてこんな自分にここまでしてくれたのかと尋ねると、彼は少し考え込んでからこう言った。


「...なあ、俺はお前の実力が知りたい。本気を出すとどれくらい強いのかも知りたい。俺がお前を初めて見た時、俺と同じ感じがしたんだよ。それだけだ。」


そして、突然こんなことを言い出した。


「なあ、俺と手を組まないか?」


どういうことですか?と聞こうとしたが、彼はそのまま話を続けた。


「あまり大きな声では言えないが、この島にいる人たちは...いつの日か人間ではなくなる。記憶を消去されて、支配される。まるでロボットのように...。そこで、提案だ。俺と一緒に本土の本部をつぶさないか?」


僕は何も言えなかった。この提案にはすぐには返答できない。なので、こう聞いた。


「もし、嫌だと言ったら?」


彼は少し笑いながら言った。


「お前を今にでも殺すしかないよな?ははっ」


いや、「ははっ」ですますなよ...。どうやら従うしかないらしい。


「わかりました。その提案を受けます。ただ、条件をつけてもいいですか?」


「おう、言ってみろ。」


「僕の『目的』に支障が出そうになったら、僕は一切かかわらないというものです。」


「ほうほう、その『目的』とは?」


「ある人を助けたいんです。詳しくは言えないですが、支障が出そうになったら声をかけます。」


彼はしばらく悩んでから、「わかった」と返事をした。そして、「今日はもう寝てろ」と言い放って病室を出て行った。


世界最強が本土に逃げて、本部をつぶすか...。どうなってしまうのやら。僕は天井を見上げて、今後のことを考えていた。

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