第13話

テン達がいる国は、地球のある宇宙とは別の宇宙に存在する惑星にある王国で、タイヘーン王国。


タイヘーン王国には大中小で9つダンジョンがあり、第5ダンジョンは王都から5番目に近いダンジョンと言う意味だ。


ちなみに、第5ダンジョンの分類は小規模ダンジョン。


階層は10までしかないのだ。


大規模ダンジョンだと、100階層まであることもある。


ダンジョンの前には広場があり、王国兵士たちが警備とかしている。


第5ダンジョン前広場を警備しているヘイム隊長にロットは言った。


「ヘイム隊長」

「はい」

「マスターとシャル様は、時に人前であたふたしてます」

「え? あの……」

「しかし、それは猫を被っている狼なのです」

「……はあ、なるほど」

「その真の実力は、この世界で1位と2位。そこんとこお忘れなきように」


あたふたするテンとシャル。


「お、おい、ロット」

「ロット、何を言って」

「マスター、シャル様、私にお任せください」

「あ、うん」

「そ、そうね、任せたわ」


テンとシャルは、本気で自分たちはこの世界で最弱クラスの存在だと信じてるのだ。


「で、ヘイム隊長」

「はい」

「ダンジョンに入る前のチュートリアルがあるわよね」

「あ。そうでした。ありがとうございます」

「説明して、簡潔に」

「はい」


ヘイム隊長は説明を始めた。


・他の冒険者とトラブルを起こしたら重い処罰もありえる。

・ダンジョン内で得た物は、ダンジョン前広場の施設で全て換金すること。手数料税金等として2割を引く。

・第5ダンジョンは小規模なので、S級冒険者に相当するモンスターはいない。なので、S級冒険者、そのパーティーは、魔石や宝石採取のみ許可する。モンスターは倒さないように(他の冒険者たちに任せること)


「ロット様、これくらいですかと」

「なるほど。理解しました」

「宜しくお願いします」

「では、入ります」

「どうぞ、どうぞ」


テンはロットに質問した。


「ロット、モンスターを倒すなって、襲ってくるよね?」

「来ますね」

「……どうするの?」

「どうするも何も、マスターがバリア展開すれば問題ないかと」

「バリアを……展開? どうやって?」

「どうやって? 黒板に指示すれば出来ますよね?」

「できるの?」

「面白い御冗談です。できますとも」

「そ、そうか。やってみる」

「お願いします」

「う、うん」


テンは黒板に「バリア展開をお願いします」と書き込んだ。


黒板に返事が。


『了解しました、バリア展開開始。このダンジョンの脅威度から1時間につき、金貨1枚か金貨1枚相当の資材等を徴収します』


「ロット、1時間で金貨1枚だって」

「はい、マスター。私も黒板を読んでます」

「大丈夫?」

「数時間で金貨100枚相当の魔石や宝石を採取しますので、問題ないかと」

「そ、そうか。なら大丈夫だね」

「もちろんで御座います」


ロットを先頭に、テンとシャルは恐る恐るダンジョンの中へ入っていく。


まあまあ進んだ。


「あのさ、ロット」

「はい、マスター」

「モンスターどころか、他の冒険者さえ1人もいないね」

「いえ、たくさん居ます」

「えっ? まったく見えないよ?」


キョロキョロするテンとシャル。


「マスターのバリア展開で見えなくなっているだけですね。よーく見ると必要な物だけ見えますよ」

「え? 必要な物?」

「はい。地面や壁の中にある魔石や宝石、貴金属とかですね」

「本当に?」

「もちろんでございます。私には見えませんが、マスターだけに視える特殊能力かと」

「へ〜、ロットでも見えないのに僕だけ見えるの?」

「正確には、かなりの対価を使用した鑑定魔法とかを使えば見えますが、対価も高いので利益はほとんどなくなります。なので、普通は勘で掘るしかないですね」

「へえー、なるほどね」


テンは、じーっと地面を見てみた。


赤く光る石みたいな物が地面の下に見える。深さは約50センチくらいか。


「あ、ロット。この下、50センチくらいに赤く光る石みたいのあるよ」

「流石でございます。ロット、掘ります」

「あ、うん、お願いします」


ロットは黒板からスコップを取り出して地面を掘った。


凄いスピードで掘っていく。


「マスター、このスコップは超特殊合金です。そして、私のパワー。普通の冒険者が使うスコップでは、このスピードでダンジョンの地面は掘れません」

「へー、そうなんだね」

「ありました」


途中からスピードを落とし慎重に掘っていたロットが、赤く光る石を地面の穴から取り出した。


「おおっ、綺麗な石だね」

「そうですね。魔石か宝石なのか。魔力の無い私には鑑定できませんが、黒板に入れると分かると思います」

「あ、なるほど。やってみて」 

「はい」


ロットは黒板に赤く光る石を入れた。


「ルビー、宝石ですね。推定価格金貨100 枚です」

「ええっ!? その石が金貨100枚なの!?」

「末端価格ですけど、そうです」

「まったん?」

「最終的に宝石店が指輪等にして客に売る時の価値かと」

「あ、なるほど」

「ダンジョン前広場の取引所では、恐らく金貨50枚、手数料税金等を引かれ金貨40枚かと思われます」

「はー、なるほどね。勉強になるよ」

「ありがとうございます」

「しかし、もう金貨40枚を稼いだのか」

「マスターの特殊な能力のおかげです。たとえS級冒険者でも、この短時間では不可能です」

「そうか、特殊な能力。持ってて良かったよ」

「はい、マスター」


ダンジョン初日は、これで引き返すことにした3人だった。






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