第10話

冒険者ギルドで冒険者登録をすることにしたテンたち。


登録できるのは午前9時かららしいのだが、テンたちは午前6時に来てしまった。


なので、ギルド内で朝食をとることにしたテンたちなのだ。


ロボットのロットも、人型ゴーレムのシャルも人間の食事を食べることができる。


ロットは黒板から食事を取り出しテーブルに並べた。


食べようとしたら、外からギルドへ入ってきた1人の冒険者


「ん? おい、美味そうだな。俺にもくれよ」


あわあわする、テンとシャル。


ガン無視するロット。

 

「おい、聞こえねえのか? 俺を誰だと思ってる」


ロットは冒険者に顔を向けた。


「しっ、しっ」


向こうへ行けと、手を振るロット。


ますます、あわあわするテンとシャル。


「……てめえら、ギルドの中ではケンカできないと思ってナメてるのか?」

「しっ、しっ」

「てめえら……」


そこへ、外から入ってきた冒険者ガスンと仲間たち。


「お? おい、イルガ、なんか揉め事か?」

「お、ガスン、聞いてくれよ。こいつらが」

「あ? こいつ、ら…………」


ガクブルしだす冒険者ガスンと仲間たち。


「おい、ガスン」

「すみませんでございます!!」

「あ?」


テンたちのテーブルの前に土下座する冒険者ガスンと仲間たち。


「お、おい、ガスン」

「ふざけんな! てめえ! 俺たち全員を殺す気か!?」

「は?」


ガスンと仲間たちは、イルガという冒険者を無理やり土下座させた。


「ちょっ! ガスン! てめえら! 何を…」

「うるせえ! 黙って謝れ! てめえ!」

「わけ分かんねえよ!」


ギルドの当直職員が起きてきた。


「おいおい、お前らよ。ギルド内で揉め事は冒険者資格剥奪にもなるの忘れたか?」

「うるせえ、ガドル」

「あん?」

「てめえ、何で早く仲裁に入らねえ?  死にたいのか?」

「あ、何だと?」

「このお方たちはな、異空間魔法使い様達と、伝説の大賢者ライトール様のお弟子様なんだぞ!」

「何を……え?……ちょっと、マジ?」

「俺が嘘や冗談で土下座するか?」

「……すみませんでした!」


土下座をする冒険者ギルド職員のガドル。


全員がテンたち3人にガクブルしながら土下座をする、そんな異様な空間になってしまった。


そして、あわあわしているテンとシャル。そして、いつもながら堂々としているロット。


「ガスン、久しぶりね。元気だった?」と、ロット。


「ははっ! ありがたき御言葉。このガスン、とても元気であります」

「そう。そんなガスンに免じて、この場は許してあげる」

「ありがとうございます!」

「見ての通り、マスターは食事中。皆さん静かにしてね」

「ははっ! このガスン、命に代えても皆を静かにさせておきます!」

「頼むわよ」

「ははっ!」


何とか? この場はおさまったようで、ちょっと安心したテン。


「ま、まあ、ロット」

「はい、マスター」

「僕はちょっとくらい賑やかなほうが好きかな」

「そうなの、ですか?」

「うん。あまりにもシーンとしてたら落ち着かないよ。適度に会話とかしてもらうほうが落ち着くかも」

「……なるほどであります。このロット、いつも勉強になります」

「あ、うん」


ロットは冒険者ギルド内にいる者たちに、適度な会話をするように伝えた。


そんな和やかな?雰囲気で朝食を終えたテンたち。


時刻はまだ午前7時だ。受付け開始まで2時間もある。


ずっと座っているのも何だかなと思うテン。


ロットが黒板から何かを取り出した。


「マスター、これは将棋と言い、とても高度で知的なゲームです」

「しょうぎ? ゲーム?」

「はい。黒板にルール説明等が出ております」

「あ、うん」


黒板に書かれているルール等を読むテン。


「ロット、覚えたよ」

「流石はマスターでございます」

「いや、これくらいのルール、すぐに覚えるよ」

「流石はマスター、いつもながら面白い御冗談です」

「あ、うん」


これくらいのルール、1回読めば忘れないけどと思うテン。


テンは1回見た、読んだ、聞いたものは、ほとんど忘れないのだ。


普通の人間にできることではない。


「ちなみに、この世界ルールとして、30秒以内に次の手を指さないと負けとなります」

「なるほど」

「将棋盤のここが黄色く点滅すると残り5秒で赤くなったら時間切れで負けです」

「うん、分かった」

「私と勝負していただけますか?」

「あ、うん。お願いします」


冒険者ギルド内にいる者に伝えるロット。


「皆のもの、これからマスターと将棋を指します。静かに見学してルールを覚えなさい」

「お、おい。ロット」

「はい」

「……いや、何でもない」

「さようですか。では、一局」

「あ、うん、お願いします」

「お願いします」

「……」

「……」

「あの、マスター」

「うん?」

「上位者が振り駒を」

「ん? あ、そっか」


駒の歩を5枚取り、振り駒をするテン。


「と金」が3枚出た。


「私が先手ですね」

「あ、うん」


ロットが飛車先の歩を突いた。


テンは角道を開ける。


しばらくすると、ロットが二歩をした。反則だ。


「ロット、二歩だよ」

「負けました」

「いや、今回は待ったして良いよ」

「分かりました」


それから、ロットは様々な反則をした。


「マスター、反則は以上でございますね」

「あ、うん」


見学者たちにルールや反則を教えるために、ロットはわざと反則をしていたのだ。


「では、マスター。次は本気で」

「分かった」













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