第6話
家を建てる許可をもらうために、山からおりて役所のある村か町へ向かうテンたち。
途中では虫が多かったが、虫除けスプレーを使って歩いていく。
毒のあるヘビというニョロニョロしたのや、オオカミという肉食獣が襲ってきたりしたが全てロットが殺した。
山から出ると農作業をしている人がいたので道を聞くことに。
聞くのはロボットのロットだ。
「お仕事中にすみません」
「あん?」
「役所へはどう行けばよろしいでしょうか」
「やくしょって役所か?」
「家を建てる許可をもらいたくて」
「あー、そんなら町の役所か。向こうのほうにずっと行ったら町に入る門があるから」
向こうを指差す農作業の人。
「ありがとうございます。これ、よろしければお礼です」
ロットは黒板から、木を掘ったミニチュアサイズのイノシシを取り出した。
農作業の人からは何もない空間から取り出したように見える。
「うへー! あんたすごい魔法使いさんかね」
「まあ、そのような者かもです」
「そのイノシシもちっこいけど本物そっくりやな〜」
「ありがとうございます」
「もらってええのか?」
「どうぞ」
「ありがとうな」
教えられた方向へ歩いていくテンたち。
「さっきのイノシシはロットが作ったの?」
「はい、マスター。私は寝ないので夜にいろいろしてます」
「なるほどね」
しばらく歩くと大きな道に合流した。通行人もちらほらいる。
「お母さん、あれはなに?」
指差すテン。
「さあ?」
首をかしげる人型ゴーレム。
「マスター、あれはウマが引く馬車という乗り物です」
ロットが説明した。
「ウマ、バシャか」
異空間で育てられたテンにとって、外の世界は知らないことばかりだ。
人型ゴーレムもそれほど知識を持っていない。
「ロットが何でも知ってて助かるよ」
「ありがたいお言葉ですが、黒板から引き出す知識ですので。私の能力ではありません」
「そうなのか。でも、黒板をそんなに上手く使えるだけでも大したものだよ」
「ありがとうございます」
町へ入る門が見えてきた。
町の中へ入るにはいろいろあるようだ。
テンたちは門番に身分証の提示を求められた。
そんな物は持ってない。
「マスターは他の国の高位魔法使いです。この国の身分証など持っていません」
「他国の高位魔法使い?」
人型ゴーレムを見る門番たち。
「いえ、私のマスターはこちらのお方です」
テンに手のひらを向けるロット。
「は?」
13歳のテンを見ていぶかむ門番たち。
「とても高位魔法使いには見えないが」
ロットはテンにオートライフルを出すようにお願いした。
黒板からオートライフルを取り出したテン。
「いっ、異空間魔法!?」
驚く門番たち。
「マスター、今から私が空に投げる物を私が『どうぞ』と言ったら撃ってください」
「あ、うん」
ロットは黒板から木の塊を取り出すと空に向かってブンと投げた。
あっという間にはるか上空へ飛んでいく木の塊。
テンはそれにオートライフルを向けた。
自動で照準がロックされる。
『どうぞ』
引き金を引くテン。
ドン!
発射される弾丸。
ドン!
正確に着弾し、上空で木の塊は木っ端微塵となった。
「さすがはマスターでございます」
「あ、ありがとう」
いや、しかし、僕は引き金を引いただけだと思うテン。それくらいで褒められてはくすぐったくなる。
「魔方陣も無し、さらに無詠唱による異空間魔法に攻撃魔法。マスターは魔法の超絶天才でございます」
門番たちにどや顔をするロット。
「お、おい、ロット」
テンはますますくすぐったい。
「た、確かに異空間魔法はすごいが、攻撃魔法は武器を使っただけというか」
「ああん?」
門番を睨むロット。
「あ、いや」
「あの武器はマスターが魔法で作った物で魔法で動かす武器なのです。なので攻撃魔法なんで、すっ!」
「わ、わかった」
つらつらと嘘を言うロット。
「お、おい、ロット。あんまり目立たないようにしてほしいんだけど」
「申し訳ありません、マスター。力のある者ほど謙虚に、でございますね。勉強になります」
「え? まあ、うん」
「さすがはマスターでございます」
門番に向きなおるロット。
「さて、町の中に入れてもらいます」
「あ、いや、いくら高位の魔法使いでも身分証もないのでは」
「では、身分証を無くしたりした人はどうするのですか?」
「それは、身元の確かな人に身分の保証をしてもらうとか」
人型ゴーレムが何かを取り出して門番に見せた。
「あの、これでは駄目ですか?」
「ん? ……えっ? は? こっ、これは!」
「伝説の大賢者、私のマスターでもあるライトール様の身分証でございます」
「し、しかし、どうして貴女がライトール様の身分証を」
「……それは秘密です」
「まさか盗んだ」
「なんですって!」
いつも冷静な人型ゴーレムがキレた。
「あ、いや、そ、その、ライトール様から身分証を盗める者など存在しませんよね」
「ふー、その通りです」
ちょっとした騒ぎを聞いて、門番たちの上司がやって来た。
「おい、どうした」
「それが」
上司に説明する門番たち。
テンたちに頭を下げる上司。
「部下たちが大変に失礼をいたしました。ライトール様は身分証を異空間に収納しているはず。そんな身分証を盗めるわけなどありません。もし盗めたら、その存在はライトール様より上の存在」
「なんですって?」
ふたたび静かにキレる人型ゴーレム。
「あ、いや、その、盗んだなんて本気で思ってません。ライトール様の身分証をお持ちの方を疑うなど。どうぞ町へお入りください」
「ありがとうございます」
テンたちは町へ入ることができた。
「お母さん、伝説の大賢者様のお世話をしてたの?」
「そうよ、テン。あとで落ち着いたら説明するわね」
「うん」
テンたちは役所へと向かった。
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