第20話 懲罰

 戦闘員はナイフを女子生徒に振り上げる。追いついた藤堂は部分メドアで呼び出した剣でそれを防御する。

「させないぞ!」

 戦闘員のナイフを振り払い、どこかへ吹っ飛ばす。戦闘員はキーキー言いながらも藤堂を取り囲んでいく。

 襲いくる戦闘員を、藤堂はなんとかかわしていく。

「誰の差金だ!」

「決まってるでしょ! こんなことできるのは一人!」

 兎塚さんは戦闘員を部分メドアした拳で殴る。

「ピジョン……」

 昨日のことを思い出し、一瞬剣が迷う。ピジョンはどうすれば止められるのか? 世界征服を企んでるのも、何か理由があるのではないか? そんなことが頭をよぎる。

「何してんの!」

 そうだった。藤堂は気づく。今はこんなこと考えている場合じゃない。

 気合いと共に一撃を喰らわす。藤堂の背後に戦闘員が忍び寄る!

「後ろ!」

 迷っている剣では反応が遅れる。しかし戦闘員の攻撃は阻まれた。

「南雲センパイ!」

 南雲センパイの飛び蹴りが炸裂したのだった。

「藤堂、あとで話をするぞ。だが今はこっちに集中だ」

 南雲センパイと兎塚さんだけで四体の戦闘員を倒す。藤堂は目の前の一体を倒すので精一杯だった。

「ふう、やれやれ。なんとかなったわね」

「ああ、だが」

 南雲センパイは藤堂を見る。

「こっちは重症かもしれねえな」

「……」

 藤堂は下を向くばかりだった。

「ホッホッホやはりワタシの生み出した戦闘員程度ではダメのようですねぇ……。直々に相手をしないといけませんか」

 声の主は天井にいた。

「ホッホッホ」

 それはトカゲだった。ただ、大きさは二メートル級。コモドドラゴンを彷彿とさせる存在感だった。

「さて、我が主人からの伝言です」

「あ?」

「なによ! さっさと降りてこいよ!」

 トカゲの怪人は地面に降り立つ。

「ホッホッホ、伝言は……コレだあああああああ!」

 トカゲの怪人は相当な速度で駆けてくる。時速にすると四十キロくらいだろうか? 百メートルを九秒で走る速度だ。かなり速い。

「「「メドア!」」」

 三人の仮面戦士がトカゲ怪人の体当たりを止める。

「お、重い……」

 クネスは百キロの巨体から繰り出される体当たりをなんとか防ぐ。アルガはトカゲ怪人を蹴り上げた。

「今だ! 藤堂!」

 ラスターは跳び、トカゲ怪人に剣を突き立てる。否、突き立てようとした。

「コイツにもぼくみたいに帰りを待つ家族が? ピジョンもそうなのか?」

 そう思った瞬間、剣に迷いが生じた。

「藤堂!」

 クネスの声にラスターはハッと気づく。だが遅かった。空中で体勢を整えたトカゲ怪人に尾で防御されてしまったのだ。

「このまま切り落とす!」

 それでも流石に新三英傑。剣に力を込め、トカゲ怪人の尾を切り落とした。

「ギャアアアム!」

 切り離された尾はブルンブルン動き回り、同様にトカゲ怪人も痛がる。

「クッソー! ワタシのカワイイシッポを! 許さんぞ! 虫けらどもが!」

 怒りをあらわにしながらトカゲ怪人は震えている。

「痛ぶり殺してやる!」

 その怒りのスキに、ラスターはトカゲ怪人に背後から襲いかかる。

「もらったぁ!」

『希望! マズイ!』

 背後から襲いかかったのがマズかった。トカゲ怪人は急速で再生させた尾でラスターを捉えたのだった。

「ぐううう……」

 捕らえらたラスターは再生した尾でぐるぐるまきにされている。手も足も出ない。そもそも力が入らない。そんな絶妙な力加減で束縛されていた。

「ホッホッホ、いけませんねえこんな単純な手に引っかかるなんて」

「藤堂!」

 クネスとアルガが藤堂を助けようとする。

「動くな! 動いたらコイツをバラバラにするぞ!」

 クネスは一歩引く。今のラスターは何にたいしてかは知らないが迷いがある。力のコントロールができていない。このままだと本当にやられてしまうかもしれない。

「やってみろよ」

 アルガは一歩、また一歩と間合いを詰めていく。

「もし、そいつをヤったら……お前どうなるか分かってんだろうな?」

「ホ?」

 アルガはゆっくりとだが、確実に近づいてく。

「最も残忍な殺し方でお前をやってやる」

「もう、いけませんねえハッタリは」

「ハッタリじゃねえ。藤堂だって分かっているハズだ」

 ラスターは首を横にふる。

「なら腹括れよ、男の子だろ?」

 アルガは背後から、自分の身長大の大きなレンチをとりだした。

「さあ、そいつを離せ。離せば楽にあの世へに連れて行ってやる」

「うぐぐぐ……」

 もしやラスターは本当に人質にならないのでは? トカゲの怪人は考える。その一瞬のスキを見逃さなかった。

 気合いと共にアルガは巨大レンチをトカゲ怪人の脳天にめり込ませる。

「ぐ、ぐぺぺぺぺぺ〜〜!!」

 結果、トカゲ怪人は倒れた。ラスターは束縛から抜け出すと、藤堂の姿へ戻った。

「ありがとう、ございます。南雲センパ……!」

 アルガから戻った南雲センパイに頬をぶん殴られた藤堂は、その熱い拳の前に倒れた。

「と、藤堂! ちょっとセンパイ! 何するんですか!」

 背後で何か言っている兎塚さんを尻目に、南雲センパイは藤堂の胸ぐらを掴む。

「ちっとは目覚めたか? ああ?」

 藤堂は口からわずかに出血していたが、それすらも気にならなかった。

「な、南雲センパイ……」

「なにがあった? 言えよ! 俺たち、三英傑だろうが!」

「ちょっと、センパイ!」

「ケンカしてる場合じゃないでしょ!」

 すると、対不審者用のさすまたを持った教師連中が、ようやく現場にやってきた。

「お前ら! 何やっている!」

「南雲! 首謀者はお前かああ!」

 教師たちは南雲センパイを連れいてく。

「藤堂、兎塚、お前たちも来い!」

 有無なんて言っているヒマも無かった。三人はすぐさま校長室へと連行された。

「校長先生、犯人を連れてきました」

 校長は椅子を掴んでいる手にかなりの力を込めて叫んだ。

「退学だ!」

 言われた三人は驚きの声をあげる。

「え? ちょっと、え?」

「何それ! おかしくないですか? 私たちは!」

 すると、南雲センパイは一歩前に出た。

「校長、それは決定事項なのか?」

「当たり前だ! 天地がひっくり返ろうとも、この決定は覆らん! 貴様ら! 我が校で暴力事件なぞ起こしおってぇ……学校の名にキズをつけおってえええええ! 退学ッ、退学だああああ!」

「ちょっと、校長先生!」

「な、何を言っているかわからないわ……」

 呆然とする藤堂と兎塚さん。一方でため息をついている南雲センパイは冷静に見えた。

「わかった、校長。俺は退学でもかまわない」

 南雲センパイは拳を握る。

「コイツらは関係ない。どうか御為にも関係ないコイツらを退学にしないでほしい。いや、退学にしないでください。どうか、お願いします」

南雲センパイはその場で膝をつき頭を下げた。


 南雲センパイのおかげで二人はなんとか退学を免れたのだった。

 だが、払った代償は大きかった。

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