第3話 治癒と模擬治癒
ーー背後からの奇襲により宙に浮いた体は叩きつけられー
…気づくと地面に仰向けになっていて、音のする方を見るとダイヤと巨大な牛の角が生えた生物が戦っていた。
…いや、戦うというより一方的にダイヤが攻撃を受けている。
次に起き上がってみるーーと、傷はない。
まだジンジンとは痛むが外傷は一切ないのだ。
不思議だーーーー
「起きたか!!悪い!手伝ってくれ!!」
ダイヤの一言で引き戻された。
そうだこいつをーーどうすれば。
ーーーーーーーその時、目の前に転がる斧が目に入った。
『基本は突進攻撃しかしてこない』
ダイヤの一言が蘇ってくる。
ーーどうやら話し合いなんてことはできないだろう。
…ならせめて殺したくはない。
ダイヤは血だらけでフラついているーーもう猶予はないー
ーー斧を拾った。ーーー
ーーーそして飛び出してーーーー
ーーーーありったけの力を込めて角に斧を振り下ろした。
「ああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
夢中で。
ただひたすらに。
ーーーなんとか切れたーーと、同時に腹に衝撃が。
なんと自らもう片方の角を折ったらしく、それが刺さっていた。
ーーー奴はもう攻撃手段がないーーが、ダイヤも重症、動けないだろう。
勝てないーーそう感じた。
次の瞬間。
タ シン コウ ラク
能力『他辛来楽』
ダイヤの声ーー
ドンッ
……ーーまた気絶したーー……
慌てて起きると両角の折れた奴はグッタリとしている。
恐らくは瀕死状態、起きて攻撃はしてこないだろう。
ーーーーダイヤはーー
いた。
すぐ近くに転がっている。
血だらけの重症、言ってしまえば死にかけだ。
どうすればいいーーー自分もダイヤも酷い怪我ーー村まで戻る時間もー…
…!?
ここである異変に気づいた。
そういえば自分の傷がない。
先程ダイヤが能力を使ったらしい声が聞こえた。
もしかしたらあの能力は傷を治すものなのではないだろうか。
だとしたらーーーーー…
タ シン コウ ラク
能力『他辛来楽』
自分の右手がカッと光り、ダイヤの傷が治っていく。
…そして完全に治ってーー…ダイヤが目を覚ます。
…と同時に自分にどっと疲れが来た。
「あれ…俺生きて…てか傷がない…なんで!?」
「『他辛来楽』を使った」
「え…でもあれは…自分自身には作用しないはずで…」
「…いや、自分が使ったんだよ。ごめんね、勝手に真似して」
「…!?」
ーーダイヤは驚いた表情を見せる。ーー
ーそんなに駄目なことなのかー
「…ごめn…」
謝ろうとすると、
「え…まさか君も治癒系能力なのか!?」
「…え…」
「いや、勝手に使うも何もこれは治癒系能力が使えないとそもそも使えないはずなんだ…」
「でも…自分は今まで使ったことない気が…する…けど…」
なにせ記憶がないためわからない。
ただの感覚だ。
「…ま、まぁとりあえず良かったってことで…」
「だな!!」
「君の治癒能力は何か名前をつけたいな…仮のってことで…『模擬治癒』なんてどうかな?」
「模擬治癒…!いいね!!」
…さて、あとは帰るだけだ。
………って言いたいけど。
レンガとダイヤは同時に失神して瀕死状態の牛の化け物を見た。
「「こいつ、どうする?」」
まぁ悪とは言え死にかけの人を放置するわけにはいかない。
どうにか運ぶしかーーー…
ドォォォォン
急に何かーー…また奇襲!?
と思い恐る恐る目を開ける。
そこには巨大なハンマーを持ち目は充血して赤く、
正気の者とは思えない人がいた。
「こいつは…強い…つかえ゛る゛」
…あぁ、終わった。
直接声に出してはいないがダイヤも同じ感想だったのだろう。絶望した顔をしている。
「こいつ…を…丑として…」
そこまで言うと、こちらに気づいたのか振り返る。
が、
「お前らは…いらん…もっと強い奴と勝負…そうだ…勝負…勝負…勝負…勝負…勝負勝負勝負勝負勝負!!!!」
…………正気じゃない。
「まぁ…いい…こいつだけ…貰う」
急にまた落ち着く…と同時にもうあの牛な化け物の姿はなかった。
そして瞬きの間に次はハンマーを持った奴も消えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます