第5話 オーロラ探検隊のおまじない


 2024年7月22日17時。


 翌日、僕らは、またしてもプラッチの家の茶の間に集まった。


 今日は、オーロラの勉強会だ。先生は、もちろんプラッチ。


 先ずは、部屋の電気を消して、家庭用プラネタリウムを使ってのレクチャー。


 天井に写し出された星座を、プラッチは自分の自己紹介でもするように、楽しそうに説明していく。


 なぜオーロラ勉強会に、星座のレクチャーが必要なのか? そこは武士の情け、プラッチの名誉のために、問わないでほしい。



 僕たちはオーロラを見る前に、いくつの星座の物語を頭に叩(たた)きこんだ。


 やがて……そう、それは魚座の説明のところだった。


 プラッチが説明する前に、ぎょぴ子がかん高い声でしゃべり出したのだ。


 これぞまさしく、プラネタリウムの解説乗っ取りだ! と僕は思ったけど、面白いから、僕は、何も言わずにおいた。


 プラッチは、大人だ。ぎょぴ子がしゃべり終わるまで、辛抱強く待ち、ぎょぴ子の唱える新説、


『魚座はじつは、ケンタウルに釣られてしまって、星の世界から消滅してしまった』


 にも耳を貸して、


「それは見事な新説だね。中学生になったら、論文を書いて、発表したほうがいいよ」


 なんて、言ってのけたのだ。



 僕は、釣られてしまった魚座が、バカでかい魚籠(びく)の中でぴちぴちはねていて、それをケンタウルが担(かつ)いで、星と星の間を駈けてゆく姿を想像した。


 じつは、僕もそうとうのロマンチストなのだ。


 プラッチの星の勉強会は、30分ほどで終わった。それから僕たちは、パソコンで世界各地のオーロラの映像を見た。もちろん、YouTubeでだ。


 プラッチが気をきかせて、音楽をかけた。


 流れる曲は、エンヤの『ワイルド・チャイルド』。



 なんて僕たちにぴったりの曲なんだ。

 僕は、オーロラのきれいな映像を眺めながら、エンヤの曲に聞き入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る