第2話 プラッチの母ちゃん


 2024年7月21日のあの日、僕は4年4組の黒板に、でかでかと、こう書いた。


『7月24日の夜、こっそり家を脱け出して探検に参加できる隊員募集!』


 名乗りをあげたのは、結局、ボク島田拓也と、プラッチ。


 それから魚博士のサカナ君を尊敬している森本結実子(もりもとゆみこ)こと、あだ名は、ぎょぴちゃん。


 そして、最後のオマケはプラッチ母ちゃんだった。



「大人もいっしょかよ」


 僕は、しぶしぶOKはしたものの、2つの条件をクリアできたら参加できることとした。


★1つ目は、大人の威厳(いげん)をかざさず、大人しくしていること。


★2つ目は、僕たちの親に、全員の夜の探検の許可を得ること。



 プラッチの母ちゃんは、すばやかった。


 その日の夕方には、メールが、来た。


〈島田拓也さま


 このたび、あなたが率いる【東京オーロラ探検隊】に志願していますプラッチママです(o^∀^o)。


 さっそく全員のご両親に電話して、許可はとりましたよ。


 ただ、みんなでプラネタリウムに行くことになっているので、聞かれたら、そう答えなきゃね。


 それから、1つ目の条件は、このメールで宣言させて頂きます。


 〈わたし、プラッチママは、この度の東京オーロラ探検において、大人の威厳をかざさずに、大人しくしていることを、ここに誓います♪~θ(^0^ )〉



 夕方、僕は、さっそく探検隊を召集して、作戦会議を立てることにした。


 もちろん、集まる場所は、プラッチの家のお茶の間だ。


 一階の玄関のそばにあるお茶の間は、80歳になるプラッチの婆ちゃんの部屋だ。


 白髪で、よく正座しながら、お茶をすすっている。


 大きい声では言えないけど、目がやたらに大きくて、耳の先がトンがっているところは、映画スターウォーズに出てくる『マスター・ヨーダ』にそっくりだ。


 だから、僕らの間では、【マスター・婆ちゃん】で、通っている。


 マスター・婆ちゃんには、僕らの参謀役になってもらうつもりだ。



 僕は、マスター・婆ちゃんの好物のお菓子を買うために、夕焼けを背中に浴びながら、近所のイトーヨーカドーを目指した。

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