第六話:魔法少女、登場☆ (やだ、私の魔力量低すぎっ!?)

 授業が終わり、ホームルームも終わった時間。

 それぞれが帰路につく、そんな時間。


 私は体育館倉庫裏にいた。


 何故かって?

 そんなの決まっているじゃない。


 智明アイツをボコボコにするためよ!

 フフフ、私をコケにした事、絶対許さないわっ!


 しかし―――、


 全然来ないわねアイツ。

 準備してから行くって言ってたけど、まさか、怖じ気づいて逃げたのかしら?

 あれからもう既に四十分くらい経ってるんだけど?


 その時、朝に智明アイツの母親から渡されたスマホが鳴った。

 見れば、智明の名前。


 ……一体何かしら?


『拝啓、愚かで親愛なる我が召喚した悪魔、鈴鐘へ。


 今、貴様がこれを見ている時、俺はこの世にいないだろう。

 だが、気にする事はない。いずれ第一第二第三の俺がお前を倒しに行くだろう!

 フハハハハ! それまでに首でも喉でも頸部でも洗って待ってるんだな!

 そしてこれを見て「全部首じゃねーか!」とお前は言うんだろう。


 ククク、フハハハハハ!!


 P.S.母ちゃんにお使い頼まれちゃったから先に帰るので、お前も寄り道しないで帰ってくるんだよ? 今日はお祝いだってさ』


 ……。


 テテテ、テテテ、テテテ、テテテ、テレン♪

 テテテ、テテテ、テテテ、テテテ、テレン♪

 テテテ、テテテ、テテ―――


「はい。お電話ありがとうございます。佐藤のスマホです」

「もしもし、佐藤智明さんですか? わたくし、鈴鐘ですけど」

「ああ、鈴鐘さん。いつもお世話になっております」

「いえいえ、こちらこそ。 と こ ろ で 一言、言いたい事があるんですけど今、大丈夫ですかー?」

「はい、大丈夫ですよ」

「じゃあ、言わせて頂きますね」

「はい」



「 _人人人人人人人人人人人人_

  > ッ全部首じゃねーか! <

   ̄y^y^y^y^y^y^y^y^y^y^y^y ̄ 」



「うるs(プツッ)


 あー、スッキリした☆


 思い切り声を出すのが良いって言うの正直迷信だと思ってたけどこれを経験すると本当かも知れないわね~。うんうん。

 さてと、予定なくなったわけだし私も帰ろーっと。


「あのっ」

「ん?」


 振り返ると拳を握っている人間の女の子が一人。

 いや、この子は見た事ある。

 教室で私の事を見ている中で私を見ていた子だ。

 何か用でもあるのかしら?


「何か用かしら?」

「ええ、そうです」


 胸の前で拳を握る彼女。

 一体何かしら?


「貴女、悪魔なんですよね?」

「ええ、そうよ。智明の言ってたとおり、私はアイツが喚び出した悪魔」


 そう言った時、私の頭の中で作戦を台無しにされた事が思い出された。

 てか、本当にアイツは! 私が人間牧場にしようとしてるのに、なんて事してくれるのかしら。

 まあ、魔法を使えばあの学校自体の征服は出来るけど、ぱっと見、そこまで魔力量持ってる男がいないから使用分の割に合わないし、そう思って清楚キャラで野郎共を懐柔していこうと思ってたのにィー!


「あのー」

「はっ! ごめんなさい。それで、何か用事なのかしら? もしかして魔界での暮らしとか聞きたいとか?」

「いえ、そういうのじゃなくてですね」


 そういうのじゃないとすると、何かしら?

 あっ!


「分かったわ! 貴女、私みたいな感じになりたいんでしょ? 見るからに正統派ヒロイン的な見た目してるけど、こうちょっと花が足りないっていうか、そういう足りてないところを私を見て自覚して、その足りないところを埋めに―――」

「いえ、違いますけど?」


 ……へ?


「え? じゃあ、なんの用事なの?」

「佐藤くんと体育館倉庫裏ここで決着付けると聞いて来たんです」


 あっ! 野次馬か。


「確かにそう話してたけど、残念ね。アイツはその約束すっぽかして帰ったわよ?」

「そうですか。それなら安心しました」


 安心しました?

 え? どゆこと??


「安心しましたって、貴女。私が智明をボコボコにするところを見に来たんじゃないの?」

「違いますけど?」


 いや、違うんかーい。

 じゃあ本当に何しに来たのよ。

 それで何で話しかけて来たのよ。


「でも、良かったです。初めてで苦労しましたけど、被害が出る前に張った人払いの魔法が効いているようで」

「ん? 人払いの魔法?」


 彼女、どう見ても周りより魔力量の低い普通の一般ピーポーよね?

 その口から出て来た人払いの魔法という言葉にある予感が過ぎる。

 まさか―――、


「あ、貴女、まさか―――っ!」


 私が見やる彼女は真剣な眼差しで見てくる。

 それが何よりの証拠だと突きつけるように!

 そして私の中でそれは確信へと変わった!

 この子ッ!!


「貴女、そんな正当な見た目して厨二病ちゅうにびょうキャラなの!?」

「ち、違いますよ! 本当に出来るんです! いえ、出来たんです!」


 ま、マジかぁ!

 この子、痛い方面じゃないけど自覚したくないタイプの厨二病だぁ!

 そんな子を相手にどうすりゃ良いのよ。

 とりあえず、私だけは優しくしてあげよう。

 そうすれば、この見た目だもの。後々役に立つでしょう。

 私の眷属として、ね♥


「鐘音さん」

「はい。なにかしら?」

「今ココで、貴女を倒します!」

「……はい?」


 この子、急に何を―――?


「来て! 契約精霊グリモワ!」

『はいはい来たでー! グリモアちゃん登場や!』

「うわっ! ビックリした!!」


 普通にビックリしたぁ~……。

 突然、背後の茂みからなんか出てくるんだもの。

 てか、何アレ。魔物に見えそうで見えないあの謎生物は。てか謎に浮いてるし。

 なんだあれ……。


『そいで由美ゆみ! やっこさんは?』

「今日転校してきた、鐘音さんだよ!」

『そうか! それじゃあ、って……え?』


 勢いを落として目が点になるこの変な生命体。

 いや、こっち見んな。


『いやいやいやいや! 由美、どう見ても一般人やんけー!』

「そう見えるかも知れないけど、あの人は佐藤くんが喚び出した悪魔だって認めたし―――」

『あのちょい頭おかしなガキンチョがただうてただけやろ? どう見てもただの一般人やし! 魔力量も普通の一般人並しか感じないで?』


 そりゃあ抑えてるもの。

 魔力量分かる相手に自分の魔力見せつけるのは三流よ。


「そう言ってこの間、擬態してる怪人逃しちゃって大変な事件になっちゃったじゃん」

『アレは、そのー。……と、ともかくや! あんな擬態が上手い怪人や魔物がホイホイ来る事なんてあらへんのやし! それに擬態してバレてる、というまだ相手が確証を持ってない状況で自分から『自分、悪魔ですー』って認めた発言する、そんなアホな奴はおらんやろ!』


 うっ!

 心にダメージが!

 てか、確かにあのアホが言ってただけで確証なんて本来無いのになんで私諦めたのよぉー!


「確かにそうかもだけど……」

『それに、もし怪人や魔物やったとしても、こんな魔力量、雑魚中の雑魚やろ~』


 ……は?


 はあ゛ぁ゛?

 わ、私が、雑魚……?


『せやから、ウチらはもっと強いのを相手に―――』

「ちょっと、黙って聞いていれば雑魚だのなんだの失礼じゃないかしら?」

『ん? ああ、気に障ったのならスンマへん。 せやけど自分、悪魔って言ってるでけで実際違うやろー?』

「ええ、そうね」

『せやろー? やっぱり―――』

「アンタが私を雑魚って言う前はそう言って逃がしてあげようかなーって思ったけどねぇ」


 私は怒りにまかせて徐々に変身を解き、抑えていた魔力を解き放つ!


「魔界で傾国と呼ばれた私を雑魚呼ばわりとは良い度胸じゃない」


私の様子を見てこの二人の様子が驚愕といった様子に変わっていく。

フフフ、格の違いが分かったかしら?


『な、ななな、なんやこの魔力量! 今まで戦ってきた奴等の比じゃないでぇ!?』

「今はそんな事言ってる場合じゃないよ! いくよ。グリモア!」

『分かったで!』


 そう言うとあの謎の生命体は由美とかいうこの子の手に乗り、強い光を放った。

 てか、凄い眩しい。

 一瞬、失明するかと思った。


「 魔法少女マジカル☆スターライト参上! 」


 光が落ち着いた頃。さっき由美って子がいたそこには、立派なんだけれどどこか玩具にも見えるような杖を持ち、可愛らしい服に身を包み、髪色が変わった由美って子の姿があった。


 正義の味方、魔法少女。

 人間界現代史で見た事がある。


 ただ、習った時は仕組みまでは教わらなかったけど、さっき目の前にいた時よりも魔力量が上がってるのを感じる。

 私みたいに抑えていたって感じはしなかったけど。

 これが不思議な事なのかしらね?


「鐘音さん、覚悟して下さい」


 私へ手にした杖を向けてくるこの子。


「フッ、覚悟ねぇ。私の事を雑魚呼ばわりしたそっちも覚悟しな―――」

「スターショット!」

「ぶッ!!?」


 私の顔に直撃する魔力弾。

 ……。


「ちょっと! 話してる最中に攻撃するんじゃないわよ! それでも魔法少女なの!? てか、顔狙うのやめなさいよ!」

「ご、ごめんなさい! でも、グリモワが倒さないとって」

『ナハハー! 凄い魔力量と傾国っちゅーても、不意打ち直撃とはお笑いやで!』


 杖の先端辺りからそんな声が聞こえてきた。

 フフ、フフフフフ。

 久々にキレちまったわよ。


「良いわ。一撃で、―――沈めてあげるッ!」


 声と共に私は地を蹴った。


「ッ早―――!」


 肉薄し、懐に潜り込んだ私に彼女は距離を取ろうとする動作を見せるけど、


「逃がさない♥」


 私は彼女の杖を持ってる方の腕を掴んで笑顔を向けて あ げ る 。

 一瞬にして彼女の顔に恐怖の色が見える。

 フフ、フフフ。良いわぁ。毎度格の違いが分からない奴相手から向けられるこの表情。たまらないッ!


 まあ、それと。

 宣言通り、一撃で沈めてあげる準備でもしょっか。


「あ、あれ? なんか力が―――?」

『ッ!? アカン! スターライト、腕を振り解くんや!』

「だーかーらぁ、逃がさないって言ったでしょ? それと頂くわね。貴女の魔力ま・りょ・く♥」


 握った彼女の腕から魔力を頂いて、ついでに頂いた魔力に刻まれている技の数々の情報も頭に入ってくる♥

 へぇー。


「だめ、振り解こうにも魔力を吸われすぎて強化魔法が―――」

『なんとしても振り解いて距離を―――!』


「フフ、それじゃあ自分の最強技でおねんねしてね?」

「何を―――」


 パニックに陥ってる二つの声にえつを感じながら、もう片方の手を彼女に向ける。


超星光魔力砲スターライトノヴァティーキャノン♥」


 途端に私が向けた手から、凄まじい光の攻撃魔法が放たれた。

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お気軽、悪魔召喚っ! ~魔界で最凶災厄の私、おかしな人間の高校生に召喚される。~ 寺池良春 @yoshiharu-t

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