第五話:バレる子ちゃん (転校生ってそうそう来ないよね)
各教室にて担任により行われる連絡事項を言う時間の事を指す言葉。
そんな時間に私は、教卓の横に立たされて、若い人間達が席からこちらを見ている。
その人間達は私の事を見て、同性の人間は見惚れながら「綺麗」と発し、異性の「可愛いくね?」って後ろのコと言ってるのが聞こえたり、視線が合った子が少し視線を逸らしたりしているのが見えている。
ふふっ、これよこれ。
私を見た人間から受けるべき言葉や見受ける仕草は!
決して、コントローラー片手に「DKコングに似てる」ではない。
こんな私をDKコングって言った
アイツら、私が教室にきたっていうのに何話してんのよ。
……てか、大抵の生徒は見惚れてる様子だけど一部見定めているというか、なんか雰囲気違う様子が見て取れる。
まあ、一部は仕方無いだろうけど。
「それじゃあ、
っとと、そんな事を気にしてる場合じゃないわね。
「はい。―――皆様、初めまして。ご紹介にあずかりました。
言って、軽く頭を下げる。
どうよ。この清楚系な挨拶は!
思い、顔を上げれば教室のほぼ皆が見惚れている様子。
フフッ。我ながら完璧ね♥
「鐘音さんは今、お家の都合で佐藤の家にお世話になっているそうだ。だからって佐藤に鐘音さんの事、根掘り葉掘り聞かないように。良いな?」
「先生、俺は別に聞かれても大丈夫だぜ☆」
「それじゃあコミュニケーションに繋がらないだろ? でもまあ、最初は分からない事もあるだろうし。と、そういう事で、智明の隣の席を空けたので今日からその席で!」
担任の教師はそう言うと智明の隣の空いてる席を指さした。
正直、別の席が良かったんだけど。
丁度、アイツの隣以外の席も空いてるみたいだし。
でも、まあ、仕方無いか。
「お気遣いありがとうございます」
私は先生に一礼して、席へと向かう。
それはもう、立てば
「隣の席でもよろしくお願いしますね? 智明くん」
「お、おう」
微笑み言うと、ぎこちなく答える智明に笑いそうになるけど我慢我慢。
てか、普通にこういうのは恥ずかしいのね。フフッ、可愛い♥
って流れで思うようにしてるけど可愛いは前言撤回だわ。コイツ別に可愛くないし。
するとコイツがちょいちょいと手招きしてきた。
何かしら?
「なあ、お前めっちゃキャラ作ってたけど大丈夫か? 後々苦労するぞ?」
「智明くん。どういう意味ですか? 私は普段からこうですけど?」
智明の耳打ちに私は平然と答えた。
そうそう。私は普段からこうなのよ。
するとコイツは更に言葉を続ける。
「いや、普通に恥ずかしいんだけど。その演技」
はぁ? 恥ずかしいだぁ?
何言ってんのよ。
「演技ではないのですけど、この言葉遣いが嫌でしたら、
とりあえずシュンとしてコイツの株だけ下げとこ。
そして可哀想な私と酷いコイツの完成~☆
ハブられたらかわいそ~。クスクス。
「凄いな。普通に演技に見えない」
「ああ、でも演技って分かってるし、俺の評価落とそうとしてるのが見えてちょっとムカつく」
「それは、智明。ドンマイ」
てか、普通にあんたらの周りの席の子にも聞こえてんですけど。
めっちゃ聞こえてる子達が困惑してるんですけど。
そんな様子だと
はあ、仕方無い。あとでコイツらにはお灸でも据えておこう。そうしよう。
「それじゃあ、HRはここまで。これから授業を始めるぞー」
決意を胸にした私の耳に、担任教師の声が聞こえてきた。
それからは授業が始まる。
けれど、普通につまんないわね。
教科書見れば普通に分かるような事、ただただ言ってるだけだし。
時々、生徒に当ててるけど、なんで当てられた子、答え分からなかったりするのかしら?
あんなの X=2 でしょ。
暗算でもできるわよ。
でも、頭が良いよりも少し悪い方が男受けは良いのよね~。
ただ、限度もあるからそこは見極めないといけないのが難しいところかしら。フフッ。
「それじゃあ、この問題。鐘音さん」
「はい。 Y=3x ―――でしょうか?」
「正解」
席に座りながら少し安堵する。
だって、危なかったもの。
簡単すぎて今、普通に答える所だったー。
途中で疑問形にしてちょっと自信なさげに答えて軌道修正できて良かったぁ。
こうする事で「あっ、鐘音さん。この問題少し自信なかったんだ」って思わせて、自分と同じ学力くらいなんだと見せる事ができて親近感を抱かせられるのよ。
これぞ魅了する悪魔の技。
一つ一つの動作が重要なのよ。
そうしてこの後は難なく授業を終えて授業間の休み時間。
早速、智明達にお灸を―――。
「ねえねえ、鐘音さん」
据えるために呼び出そうとしたら、席を囲まれた。
しかも同性の人間達に。
一体、何かしら?
「はい。なんでしょうか?」
私が問いかけると怒濤の質問が飛びだしてきた。
ああ、これが転校生や編入生が受けるという
使ってるシャンプーの種類だとか、化粧品とか、家での
本当に当たり障りもないただの会話。
それを私も当たり障りも無く答えていく。
……あれ?
「あの、魔界って―――?」
「あれ? 佐藤くん達が今日の転校生、召喚した悪魔だからって言ってたから」
「えっ……」
女子の言葉に智明を見ると、
(≧ワ≦)b
凄く良い笑顔でサムズアップしてきた。
ピキピキピッキーン!(^^♯)
「何してくれてんのよアンタァ! そもそも
「ヌハハ! 母ちゃんの指示など知るかァ! 貴様の好きな様にはさせんぞ悪魔め! それに皆さん見ましたか! これがコイツの本性です! このように怒りにまかせて俺の胸ぐらを掴むような危険な悪魔です! 騙されてはいけません!」
「ハッ!」
し、しまった!
いつもならやらかさないのに!
コイツの調子に乗せられたぁっ!
この私が、こんな人間ごときにィ!
「でも、さっきのより今の方が親近感湧くよね」
「だねー。さっきの感じだとちょっと近寄りがたかったし」
「え?」
落ち込む私の耳にそんな言葉が。
「だから言っただろ? さっきの演技した様子だと苦労するって」
優しい声色で声をかけてくる智明。
ああ、そっか。無理にキャラを作ろうとした私が間違ってたのね。
……。
「いや、それは違うでしょ。私、
「まあまあ、もうこの教室を自分の良いようには出来なくなったんだから諦めな☆」
確かに、コイツのせいで普通の方法で私だけの人間牧場にする事は出来なくなっちゃったけど……。
「あら、言ったわよね? 私は夢淫魔。魅了の魔法のプロフェッショナルよ? 力尽くでこの教室自体をどうにでも出来るのよ? フフフ」
そう私には魅了の魔法がある。
正直、魔法を使うのがだるいから徐々に染め上げようとしたけど。
「ププー」
私の言葉に吹き出す智明。
「何よ。その笑い」
「いやだって、俺に効かない程度の魅了しか使えないのにイキるンですもの。 これを笑わずにいられませんわよ? ププー、
んぐッ! この~……!
「普通は効くのよ! 効かないアンタがおかしいのよ!」
「あらあら 負 け 惜 し み ですかぁ?」
キーッ! こいつぅ!!
「良いわよ。そこまで言うなら放課後覚悟しておきなさい!」
「やれるもんならやってみな。俺には
「いや、今日はちょっとヒーロー協会で装備の新調あるから無理だ」
「なっ!?」
あらあら。
「あらあら、頼りにしてたヒーロー様に断られて今どんな気持ち? ねえねえ、今どんな気持ちぃ??」
「んんんん! このぉ! ほ、放課後覚えてろよ!」
ああ、甘美なる勝利の味。
吠えるコイツの負け犬言葉をBGMに勝利の余韻に浸りながら、私は次の授業を受ける準備をするのだった。
「傾国の悪魔って言っても誰一人まだ堕とせてないくせに! ばーかばーか!」
「は、はぁ!? ふざ、…ふざけんじゃないわよ! 私が本気出せば一瞬よ! 一瞬! それにバカって言った方がバカなのよ! このバカ!!」
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