第四話:登校したらヒーローが来たった件 (拝啓、魔界の家族へ)
魔界にいる、お母様、私の親愛なる弟くん。いかがお過ごしでしょうか?
心地よい朝日を浴び、朝早くから活動する人々の声を聞きながら私は、人間社会に降り立ち、通学路を歩いています。
「なんで私が学校なんて行かないといけないのよ~」
魔界の学校にて優秀な成績を残した私が、こんな人間の学校に行くなんてだるいだけなんだけど。
「まあまあ文句言うなって。友達とか出来て面白いかも知れないだろ?」
「友達ぃ? 友達ねぇ~」
友達なんて大抵上辺だけのものよ。親友、友情なんてないない。
まあ、けど、逆に考えれば学校に行けば若い人間の雄が沢山いるわけで、魅了の魔法でクラス、いえ、学校そのものを支配すれば、私だけの人間牧場としてはなかなか良いんじゃないかしら?
フフフ……。
「そういや、鈴鐘」
「ん? 何よ」
「昨日は髪ピンク色だったのに今日、黒髪なんだな」
「え? ああ、これ? 能力で髪色変えたのよ」
「んえ? なんで?」
「そりゃあ、相手を魅了するのにその場その場の環境に適した色にするのは必然だからね。それに、日本の男の子ってこういうのが好きなんでしょ?」
サラサラの長い黒色に変えた髪をさらっと手で払いながら答える。
この仕草、動作一つ一つと流れるように動く髪質に堕ちない男はいないはず。
「えー? あー、まあ、別に元のピンク髪でも好きな奴は好きだと思うぞ? あと、髪型も好みは千差万別だし、元のあのふわっとしてる感じの髪でも全然良いと俺は思うぞ。うん。普通に別に変える必要は無いと思うぞ」
「ちょっと、元も子も無い事言わないでくれる?」
なんかコイツにそう言われると能力で色変えた私が馬鹿に思えてくるんだけど!
そんな少し落ち込んだ私の肩に、優しく手が置かれた。
見れば、私に優しい微笑みを浮かべて見やる智明の顔。
「鈴鐘、ドンマイ☆」(^_-)-☆
「フンッ!!」
「ぐふぇ!」
イラッとして振るう私の拳がコイツの腹にクリーンヒット。
その衝撃で少し浮いて、うずくまるコイツ。
フンっ。
「っしゃあ! 見たか! 人間風情がこの大悪魔である鈴鐘様に盾突くからそんな目に遭うのよ!」
ついにコイツに一撃を与えられた!
やったぁ!!
それに、うんうん。そうそう。
ただの人間がこの私に盾突くのがいけないのよ!
「さあ、智明。これに懲りたら、これからは私に
「おーい、鈴鐘~。何遊んでんだー? 早く行くぞ~?」
「……は?」
前の方から聞こえた声に視線を向けると、私の足元にいたはずの智明は平然とした様子で結構な歩数を歩いたであろう距離から振り向いて私に声をかけていた。
って、え? あれ? いつの間に?
というか、ここで
い、いない!?
いつの間に立ち上がってあそこまで行ったの!?
「なに立ち止まってんだー? 早く行くぞー」
「え? わっ! ちょっと!?」
目の前で起きた事に理解が出来ていない間に戻ってきた智明に私はヒョイと持たれた。
こ、これって―――、
「……おい、智明」
「ん? どうかしたか?」
「どうかしたかじゃないわよ! 普通運ぶならお姫様抱っことかでしょ!? どこの世界に肩に
「分かってないな。科学的に見れば、だらんってなってる物を肩に担いで運ぶより、ピーンとなってる物をバランス良く持って運ぶ方が運びやすいんだぜ? ほら、あんな風に」
言って智明が指さす方向。
そこでは土方のあんちゃんが肩に角材を担いでいた。
あー、成る程。確かに。
担いだ物のバランスが取れていればこの方法は有効な運ぶ手段になり得るって訳ね。
うんうん。
「って、騙されると思ってんのかー! つか、角材扱いか! 私は!」
「耳元で騒ぐなよ。『鼓膜無いなった』になるだろ!」
「無くなれ!」
「無くなれだなんて、そんな、酷いわ! 鈴鐘ちゃんの鬼! 悪魔!」
「鬼じゃないけど悪魔ではあるわよ。あとその言い方キモい」
「ひどぅい!」
そうして膝をつく
勝ったはずなのに疲労感が強く感じて素直に喜べない。
「よっす! 智明」
そんな明るくて少し馬鹿そうな声がして見れば、同じ制服を着た人間の雄が一人。
見た目はまあまあ。
「んお? おお、よっすー。
「いや、俺はいつも通りだぞ? 逆にお前が早くて珍しいな。つか、なんで見知らぬ可愛らしい女子担いでんの?」
そんな事を聞いてくるこの辰也とか言う男。
まあ、私が可愛いのは当たり前だけど、この言葉を聞いてさっきの疲れが少し抜けたように感じるわ~。
「ああ、コイツか? コイツ俺が呼び出した悪魔なんだよ。 それで今日から編入生としてうちの学校に来る事になったからよろしく」
「ほーん、そうか。つー事は、悪魔召喚したって事か」
「んー、まあな。辰也、最近ヒーロー活動忙しいって言ってただろ? だから遊び相手いなくてよ~。それで召喚したら来たんだよ。コイツが」
「なるほど~」
うんうんと納得するこの辰也。
……てか、ヒーロー活動って、何。それ?
「つまりお前は悪魔を呼び出しちゃったって訳か」
「ん? あー。まあ、そういう事だな」
「じゃあ、敵だな?」
「え? 何言ってんだよ」
「何って、そのまんまの意味だよ」
「いやいや。俺達、友達だろ?」
「そうだな。友達だったな」
「おいおい、何言って―――」
「―――変身ッ!」
智明の言葉を遮って辰也は言葉を発した。
その瞬間、辰也の体が光に包まれて―――、
なんか変な装飾を施された顔を全部覆うヘルメットを被り、手にはなんか光ったりしてる機械みたいな
「悪魔召喚者の家系に産まれたお前を監視していたんだよ。いずれ悪魔召喚者として覚醒する事があるかもしれないと上が判断してな」
「なっ、そ、そんな―――っ! 俺達の友情は、あの日々は偽りだって言うのかよ!」
「ああ、楽しかったぜ? お前との友達、いや、友情ごっこはよ! さあ! 自分が、己が犯した罪を後悔しながら懺悔しな!」
「くっそぉおおお!!!!」
空を見上げて叫ぶ智明。
そこには裏切られたショックから来るであろう感情も言葉に乗り空気を震わせている。
けれど、それでどうこうなるものじゃないのは分かっているはずだ。
「って、ちょっと、へこたれてないで戦わないといけないんじゃないの!? つか、降ろしなさいよ! 智明! 私、アンタと共倒れとか嫌なんだけど!?」
そう智明に言うけれど、智明は反応しないし、降ろそうともしない。
いや、智明はどうなっても良いから早く私を降ろせよ!
「なあ智明」
「ん? どうした辰也」
「お前に言われてセリフ考えてきたけどさ」
「おう」
「この『友情ごっこは楽しかったぜ』って悪役のセリフっぽいから、もっと正義のヒーローっぽいセリフにしたいから、このやり取りまた後日でも良いか?」
「え? あー、まあ、個人的にはこのやり取りがしたいからやってくれただけで嬉しいんだけど、辰也がそう言うなら別に良いぜ」
「サンキュー。今度、もう少し良いセリフ考えておくぜ。それじゃ」
「おう。また学校で」
手を振り合って二人は別れた。
って、
「え? どゆこと? あの辰也って奴。アンタと私を倒しに来たんじゃ無いの? 逃したら、後日襲われる可能性もあるでしょ」
「は? あー、いやいや。アイツはそんなつもり一切無いぞ?」
「へ?」
「いや、まあ、召喚した悪魔によって俺がおかしくなってるならアレだけども。 アイツには以前から、悪魔召喚できたら悪役になってしまった親友ごっこしたいって言っててさー、早速それが出来ると思って昨日ラインで連絡したんだよ。アイツも忙しい中、セリフ考えてきてくれて、俺ちゃん嬉しい!」
「成る程ねぇ~」
そうかそうか。
うんうん。
「紛らわしい事すんな!!」
「ふべっ!」
変な演劇をした智明の頬に拳を叩き込み制裁を加えて、コイツの通う
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