【マヤ・ザネシアンは最強過ぎて乙女ゲーの悪役令嬢が務まらない】~転生して赤ん坊の頃から魔力を鍛えた廃ゲーマーは無敵のアンデッド軍団を従え無双する。追放先で魔王ムーブするつもりが不死女神と崇められた件~
第12話 慇懃無礼な執事とブチキレてるっぽいメイド
第12話 慇懃無礼な執事とブチキレてるっぽいメイド
城の門番達に招き入れられ、マヤとレイチェルはウィンサウンド城内へと足を踏み入れた。
スレイプニルは、
世話係の青年が、やたら怯えていた。
だがいくらスレイプニルでも、とって食いはしないはずである。
ゾンビは普通、人を襲って食らう。
食事の必要はないのだが、生前の健常な肉体への渇望からくる衝動的な行動だ。
しかしマヤの魔力をもらえる
城内は、落ち着いた雰囲気だった。
だがシンプルに美しく、
マヤは、不思議な居心地の良さを感じていた。
「素敵なお城ね……」
「ウィンサウンド城は、お気に召しましたかな? マヤ・ニアポリート嬢」
玄関ホールの奥から、男性の声が響いてきた。
しかしその物言いは、なかなかに冷たく無礼である。
辺境伯夫人となったはずのマヤを、ニアポリート嬢呼ばわりしたのだから。
声の
顔の
後頭部で
瞳と同じく、
そのグレーの瞳のうち、片方は
マヤは敏感に感じ取った。
執事が現われた瞬間、背後にいるレイチェルの雰囲気が変わったのを。
配下達の中で、最強の
この執事、
情報収集で潜入しようとした
「わたくしはクレイグ・ソリィマッチ。カイン・ザネシアン辺境伯にお仕えする、執事でございます」
「よろしくね、クレイグ。ニアポリート侯爵家が娘、マヤよ。もう、マヤ・ザネシアンだけど」
「書類上婚姻は成立したのだから、つべこべ抜かすな」と含ませる。
「それにしても……
「我が夫となる
「ほう……。お館様の
「『化け物辺境伯』と、呼ばれている件かしら? そんな噂、当てにならないわ」
「客人用のお部屋に、ご案内します」
「あら? 辺境伯夫人用の部屋ではなくて?」
「準備中ゆえ、ご容赦ください。……すぐ、お帰りになりたくなるかもしれませぬし」
クレイグは
ついて行く前に、マヤは背後のレイチェルを振り返る。
美貌の
相変わらずのクールビューティぶり。
しかし唇の端が
アイスブルーの瞳が、獲物を見つけた肉食獣のように輝いているのも。
彼女がひっそりと
「やっと……やっと見つけた……。【剣鬼】クレイグ・ソリィマッチ……。絶対に、逃がさない……」
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マヤとレイチェルは、客人用の部屋に通された。
「それで? 私の旦那様には、いつ会えるのかしら?」
マヤはクレイグに問いかけた。
しかし、彼の返答は素っ気ない。
「お館様は、執務などでお忙しい身。夜までお会いできませぬ」
「ふうん。逆にいえば、忙しくても夜のお相手だけはして欲しいってことかしら? ……性欲旺盛ね」
「いえ、お館様は……。とにかく、夜までごゆっくりお過ごしください。お食事は、こちらに運ばせていただきます」
クレイグはそそくさと、部屋を出ていった。
執事の足音が遠のいたのを確認してから、マヤはレイチェルに尋ねる。
「
「はい。生前に、
「
「その通りです」
おそらくは、復讐だろう。
生前のレイチェルを殺したのは、クレイグなのかもしれない。
マヤはそう推測していた。
クレイグを見る時のレイチェルは、青いミディアムボブが逆立ってしまいそうなほどの殺気を
あれではクレイグからも、敵意に気付かれてしまっているはずだ。
いつも感情と気配を消し、影と化しているレイチェルとしては非常に珍しい。
「……わかったわ。クレイグ・ソリィマッチに関しては、好きになさい。私にできることがあれば、協力するわ。赤ん坊の頃から仕えてくれている
「
どのように凄惨な方法で復讐を果たすのか、悩んでいるに違いない。
こちらからはあれこれ指図せず、相談された時にしっかり話を聞いてあげよう。
マヤはそう決意した。
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