第2章
18 小学校6年生!
小学校6年生。
俺の背も高くなり、主人公補正か、俺の前世の身長に並ぶほどに。身体能力も相応に伸び、生殖能力もいっぱしに育った。
相変わらず友達は出来なくて、図書室に行くのもやめてしまって。
今は、近所の図書館の本を読んだり、パソコンで前世にアクセスできないか試してみたりしてる。
中学受験も高校受験も準備万端。
勉強会はいつの間にか俺を除く全員が異次元の頭脳を誇るようになった。
……結果がこれである。
「おにいちゃん、読むの遅くなぁい?」
「おにいちゃんって、そんなこともわからないの?」
「もっとがんばってよ、おにいちゃん!」
俺には歌以外の妹がいた経験がないのだが、多分歌はブラコンである。しっかり妹キャラである。
「妹よ、そんなにあおっても、何も出んぞ……」
「はいうそー」
「うた、静かに」
たくましくなってきた誠一が神経質に歌をたしなめる。勉強会中なので、うるさいのはご法度である。歌の声は、特に煽りモードの時は高くよく響くので、勉強の妨げこの上ないということだ。
ちなみに歌は、俺の前でだけこうしてぶりっ子になる。
誠一は坊主頭に日焼けした肌で、いつも仏頂面だけどたまに見せる笑顔が無邪気でヤバいとクラスの女子が言っていた。
「誠一、私が出した問題、解けた?」
「ああ。これ」
「相変わらず字がきれいね~、うん。あってる、たまには間違えてくれないと面白くないんだけど」
「俺も間違えるだろ」
「最近一回も間違えてないじゃん」
千佳は小学生で化粧なんか始めて、中学でクラスカースト一位になること請け合いである。歌は言わずもがな。人当たりのいい絶世の美少女がカースト下位になるわけない。
小学校入学当時から、ずいぶん成長したものだ。
クラスの人気者3人に囲まれた俺は、友達もいない、ボッチ。
本は人間より、よっぽど付き合いやすいから。
「誠一は結局どこ受けるの?」
「白銀は簡単すぎるから、黄金かなぁ」
白銀学園中等部がこの国の2番手、怪異がいる疑惑のある黄金学園中等部がこの国一番の教育機関だ。
生徒も最高峰で、どの大会でも、だいたい一位だし、財閥家の人間とか王族も通ってるみたいだし。大学直通だし。ここに行けたら勝組ってやつ。で、白銀学園は大きく突き放されてるけど、レベルの高い進学校だ。
俺以外の3人は白銀学園は超簡単、黄金学園は簡単、みたいな人々である。俺は黄金学園はちょうどいい難易度だと思うんだけど。
相手にしていられない。
いつの間にか俺の教えることはなくなっていた。
俺たちの勉強会は、自習会みたいになっている。
俺の存在意義は、多分ない。
誠一がまず大学の勉強を終えて何やら難しい投資の本(俺にはとても難しい)を開いてさらさら鉛筆を動かしている。次に千佳が黄金学園の過去問の自己採点をし終え、最近ますます上達してきたメイクを直し始めた。
歌のケータイが鳴った。
「あ、ちょっと出るね」
部屋の外で話し始める。歌は、俺に倣ってプログラミングを始め、いつの間にか上達して去年、ゲームを一本仕上げてしまった。あんまりいい出来だったものだから公開して見たら、日本中で大流行りしてしまって、ゲーム会社からオファーを受けたのである。
俺のゲームを作りたいという小さな夢は、何だか萎えてしまった。あれより面白いの作るとか、無理。
結局俺のPCはもっぱら歌が使い、今ではもっと性能のいいモニター等々周辺機器もそろえている。
「ちょっと行ってくるね。6時には帰るから」
2作目のキャラデザができたらしいので行ってくるとのことだ。
「いってらー」
おしゃれな服を着て出かけていった歌は――帰ってこなかった。
_______________
難しい章になりそう。
自分でも100%納得できるものは、まだ書けないのかもしれない。
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