第22話 読みかけの思い出

 先程まで他者様の作品を読んでいたのだが、唐突に昨日のことが思い出されて書こうと思い立ってしまった。読みかけの作品の作者様、申し訳ありません。忘れてなかったら続きを読ませていただきます。


 おトイレに立って、窓の外から家の裏の山を見ると……見覚えのある黄色い小さなシルエットが……。


 おお、あれって「キノコ」じゃね!?


 私は、トイレから飛び出すといそいそと、その「黄色」が見えていた場所へと足を運ぶ。果たして、それはキノコであった。畑の端っこに生えており、見た目も微妙で食毒は不明。しかしながら、この手のきのこが生えているということは、もう他のきのこも生え始めているということでもある。

 私はサンダル履きのまま、裏の斜面をよじ登り栗のイガが散らばる山に分け入っていく。家を出て10秒。誠に、キノコ採りには素晴らしい環境だ。


 目を皿のようにして、地面を舐めるように確認していく。しかし、菌影は見あたらない。さっきのがたまたまだったのかな? そう思いつつも、最近の急な冷え込みと雨量でキノコの生育にはもってこいの環境が整っていることに思いが至り、もう少しだけ、と家の後の林を縫うように歩いていく。すると、目当てのキノコではなかったが明らかに食べられるきのこが生えているのが見つかった。

 見た目は茶色でところどころ傘が崩れている。はっきり言って美味しそうな見た目では無い。だが、キノコは見た目に反して非常に食味が優れているものも多いのだ。

 指で触れただけで崩れるほど脆いので、手のひらに乗せるようにして採取する。

 不思議なもので、一旦眼がキノコにアジャストすると、次からは面白いようにキノコが見つかる。先ほど歩いてきたところにもよく見ると生えているではないか……さっき見た時は見つけられなかったのにw


 因みにこの時、私が採取したのは、『ナラタケ』


 恐らく、としたのは、すぐとなりに明確に『ナラタケ』と分かる全く見た目の違うキノコが生えているからだ。

 図鑑やガイドでは、ナラタケは木に生えるキノコで地面から生えているものは別種なので絶対に食うな、としているものも多い。

 実際は、地面であっても小枝や葉が積もって広い意味での腐朽木の上に生えている状態であり、これも木の上としていいのだろうが、素人目には地面から生えているようにしか見えないのである。


 何より、見た目が全く違う。これは、キノコの達人でもない限り同じキノコとは思わないであろう。実際、玄人知識の人に見せても、直接採取しているところをしていない限りは「食べられる」とは言わないはずだ。それくらい、地面から生えるキノコというのは見分けがつきにくいのである。

 初心者は、木に生えているものを採取するほうがいいでしょう。


 これは、我が家で昔から食っていたキノコなので採取したが、知らないキノコなら例え達人のお墨付きであっても決して食べないだろう。

 実際、この季節になると毒キノコの誤食で食中毒になったり死亡したりというニュースが毎年聞かれる。キノコで命を落とす人は意外と多いのだ。


 山のキノコを普段から食している私からすると、「怪しいものは絶対に食うな」「図鑑で調べなければならないようなキノコにはそもそも手を出すな」と言いたい。

 山に生えてるキノコなど食わなくても人は生きていけるのだ。そんな危ない橋を自ら渡る必要など無いのである。


 そもそも、普段からきのこを採って食べている人であっても、いろんなキノコを採るという人は殆ど居ない。大抵は1~2種類に絞って狙うもので、何でもかんでも取ってくるのは明らかな素人だ。ぜひ、「お止めなさい」と言いたくなる。


 キノコの判別には、見た目や匂いなどというキノコそのものだけでなく、むしろ「どんな場所」「どんな環境」「地面に生えていたか」「何の木に生えていたか」という周辺情報のほうが重要なのである。キノコだけ持ってこられても、確実な答えは出せないのだ。キノコだけ見せて「これはいい」とか「だめ」とかいう人が居たら、あんまり信用しないほうがいいと思う。少なくとも、他人に聞かなければわからないなら「食うな」と言いたい。重ねて言うが、自分で採ったキノコなど食べなくても生きていけるのだから。


 ちなみに、どうしてもキノコを調べたいなら図鑑やネット、どちらでもいいけど必ず5~6冊(5~6箇所の別なサイトで)以上の本で見比べてから判断することだ。

 比べればすぐ分かるのだが、本によって同じキノコでも全く見た目の違う写真を掲載していることが多い。これは別に本が間違っている訳ではなく、事実としてこれくらいの個体差がキノコにはありうるということなのである。

 重ねていうが、必ず複数の情報源を5~6件以上使って判断して欲しい。それで、少しでも不安要素があるなら絶対に食わないこと。


 で、私の採ったナラタケらしきキノコは、お味噌汁に入れて美味しくいただきました。見た目が悪いけど、出汁がよく出てとても食感もいい、最高のキノコだ。店では間違いなく売っていない。そもそも取れる量が少ないし、アシが早く(すぐ腐る)店売りにはどうしたって適さないキノコなのだ。まさに、キノコ採りの特権とも云うべき美味しいキノコである。(ここまで言っておいて盛大に煽るw 重ねて言うけど、絶対に食うなよw フリじゃないぞ!)


 私の地方ではこのキノコを『カックイ』と呼んでいるが、ちょっと地方がずれると『ボリ』と呼んだり『オリミキ』『ボリミキ』『ボリメキ』『サモダシ』と呼んだりする。

 更にややこしいことに、私の地方では『シメジ』『マツタケ』『マイタケ』『シイタケ』『アミタケ』『ナメコ』『ヒラタケ』等の神セブンキノコ(神セブンも人によって差があります)以外の食べられるキノコを総称して『カックイ』と呼ぶことが多いので、人によって『カックイ』の呼び名が示すキノコに差がある。なので、『カックイ』シリーズは私が知るだけでも30種類以上あるのだ。決して、名前だけで判断してはいけない。



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