第10話 びゅうプラザの窓口
祐里(猫部)さまのノートで語られていたエピソードで、一つ思い出したことがありました。
今でこそ、宿でもチケットでもネットでさくさくと検索して手配しておりますが、以前は駅のびゅうプラザにわざわざ出向いて宿付きのお得な新幹線切符を見繕って出張に行くのが常でした。
その日は、お盆期間中の東京、横浜への一週間の出張のための、宿の手配と新幹線切符の確保という目的で、件のびゅうプラザを訪れていました。
何度か使って理解していたのですが、新幹線の切符は、私の最寄駅からだとだいたい片道16,000円ほど、往復割引でも3万円を超えてしまいます。
必要経費とはいえ痛い出費なのです。
そのため、新幹線を使う場合はびゅうプラザを訪れてお得な切符がないか確認するのが常でした。
スケジュールが確定しているなら早めに探せばかなりお安い切符が出ていることがあるのです。行き先東京横浜限定や、平日限定、早割、出発日限定、ホテル付きお得なプラン、等々、窓口限定でかなりお安いプランが組まれていることも多かったです。中にはホテル付きの往復で、半額近いものまであり、非常に重宝しておりました。……何でホテルが付くと安くなるのかは謎でしたけど。
その日は、残念ながらホテル付きは見つからず、往復割引のちょっとだけ安いプランで、宿は別途自分で探すことにして発券してもらいました。
発券作業を待っている間、隣の窓口で手配していたとある老夫婦の様子に目がいき、伺っていると……。
そのご夫婦は、どうやら親族の結婚式へ出席するため、かなりの遠方へ移動らしかったのです。新幹線と共に飛行機の切符まで連結、さらにお宿も付随してなかなか複雑な手配のご様子。しかもどうやら、ご夫婦の分だけではなく家族や親戚一同の分までも頼まれてきていたようなのです。見るからに不馴れな感じでしたが、その夫婦の前に出された切符が……これまた無情とも思えるほどの大量の切符。
窓口係の女性は慣れた様子でテーブルに、カジノのポーカーゲームのディーラーのような手さばきでズラリと切符を並べていったのです。
いや、もう……見るだけで気の毒になってしまうほどの枚数。一人分でも15枚以上あるのではないかと窺わせる量。しかも、10人分くらいあるのだからざっと見ただけで150枚以上……。
さらに窓口係員は非情な説明を続けます。
「こちらが、途中合流する方の切符になります。こちらが当駅出発分。こちらが帰りのみ合流する方の分ですね。で当日、万が一天候が悪くて飛行機が飛ばない恐れもありますので、変更に対応するためにここからここまでの切符は混ぜないで別にしておくことをお勧めいたします───」
もう、老夫婦はパニックを通り越して放心しているようにも見えました。あたしでもこの量の切符を提示され複雑な説明を受けたら、そうなる自信があります。……いや、それ以前にこんな手配頼まれたら断りますよw
何となく、志の輔師匠の新作落語『みどりの窓口』を思い出させるような一幕でした。
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