第2話 最終的に目的が果たせていない
CMネタでもうひとつ。
これは、私が個人的にもっとも印象深いと思っていたCMです。
以下、内容。
恐らくは農村といっていい地域に住む、とある親子。
娘は高校生、毎朝学校まで送ってもらっているらしい。
送っているのは、父親。
如何にも実直で不器用そうな、父親。
農村だと思った理由は、その送り迎えに使われている車が軽トラックなのである。
思春期の、年頃の、色々難しい時期の女の子。
季節が移ろうなかで、毎日欠かさず送り迎えする父。
「今の、クラスメイトじゃないか?」
父の問いにも、無言。
通学路で、同じ制服を着た生徒に顔を見られないように車内でノートで顔を隠してすれ違う娘。
いつものように校門前まで送って行き、
「行ってらっしゃ──」
父の送り出す言葉が終る前に、乱暴に軽トラのドアを閉める娘。
それでも毎日、その送迎は続けられていく。
雨の日も、雪の日も
ほんの一瞬、
朝の一幕だろう、やかんのお湯を掛けて軽トラのフロントガラスの氷を溶かして準備する父。
やがて、卒業式の日。
いつもとは違う背広に身を包んだ父と一緒に、いつものように軽トラで学校に向かう父娘。
校門前で、車を降りた娘がいつものようにドアを閉める前に
立ち止まり、
「今まで……ありがとう」
そう、少し拗ねたような、不本意なような顔を浮かべながらも、そう父に感謝を伝えて、去っていく───
ほんの15秒ほどのなかに、これほどに繊細で美しい描写が出来るものかと、強烈に印象に残っているCMでした。
今思い出して涙を流しながらかいてますよ。
特に、やかんで窓を溶かすシーン。
北国の冬の朝の定番なんですよ、これ。
このシーンは、実際に住んだことがある人にしか描けないと思いました。
しかしながら、あまりに作中の印象が強すぎて、何のCMだったか全く覚えていないという、本末転倒なCMでした。
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