第42話 豚のペニスはドリル状?


 

 走りながら思った。五蔵の精を受けて身についた千里眼の能力で、九戒の様子が見えるのではと。

 いったん立ち止まって意識を先ほどの野原に移そうとしたけど、今度はうまく出来なかった。

 やはり一度使うと消えてしまうものなのか。

 だったら、せっかく貰った五蔵の能力はいざという時以外使わない方が良いようだ。

 まだ五蔵の能力がすべて消えたわけではない。そのことは確信できるのだ。

 

 目を開けて再び雑草の伸びた小道を走りだす。

 羽虫を手でよけながら走っていると、やっとさっき張ったテントが見えてきた。

 

 九戒、九戒、と五蔵が周りに向かって叫ぶが返事はないようだ。

 テント周辺には特に変わったことはないが、九戒の姿はそこには無かった。


「ああ、やっぱりあのお肉は九戒だったのだ。ああ、九戒、私がほったらかしにしたばかりに……」

 五蔵が膝をついて嘆いている。嘆く気持ちはよくわかった。

 彼にとって九戒は、ただの従者ではなかったのだ。

 五蔵の記憶の中から、九戒の大きなペニスに貫かれてあえぐ五蔵のイメージが現れる。

 二人の間には、ほとんど恋愛と言ってもいいくらいのつながりがあったのだった。


 まだそうと決まったわけではないですよと、僕とカオルで周囲の高い雑草などを分けて探して回ったけど、やはりどこにも見当たらない。


 仕方なく僕はテントの所に戻ってきたが、嘆き悲しんでいる五蔵を慰める言葉も見つからなかった。

 

 その時、テントの中から鼾が聞こえてきた。

 もしかしたらと覗くと、想像通り、大イノシシが食料を食い散らかして寝入っているのだった。まったく、人騒がせなイノシシだ。


「よかった。九戒、無事で」

 五蔵が抱き着いて大イノシシを抱きしめた。

 ぶひっと言ってイノシシが目を覚ます。

 五蔵が慌ててその猪の首に縄を描けようとするがうまくいかないようだ。


 ダメだよ、九戒、もう置いていけないから言うこと聞いてよ。

 そう言いながら四苦八苦している五蔵を見て、カオルが僕に言った。

「淫乱ケツマン波でおびき出し作戦やってあげてくださいよ」

 カオルが言うのは、当のカオル自身をチュードンでの釜茹での刑から助け出すときに使った作戦のことだ。

 その場で警備にあたっていた男たちに僕のお尻の穴を拝ませて、魅了の術にかけてから城の外に誘きだしたのだった。

 まるでハーメルンの笛吹き男みたいに。


「何かいいアイデアがあるんですか?」

 五蔵が一筋の希望を見出したかのごとく僕を見た。

 カオルが説明する。


「是非、それをおねがいします」

 五蔵法師に頭を下げられると、僕には断ることなんてできない。

 わかりましたと言って僕は引き受ける。


 まずは段取りを決める。

 九戎にお尻を見せて魅了した状態で、僕は寺院まで走る。

 追いかけてきた九戎を引き連れて寺院に入ったら、反転して僕だけ室内から抜け出す。その時カオルがドアを締めて九戎を引き剥がす作戦だ。


 目標を見失った場合、魅了の術が速やかに解けるというのは以前の経験でわかっている。

 カオルと五蔵法師に確認した後、僕はテントの外で九戎にお尻をめくってみせた。

 ブヒっと眼を輝かせた九戎が僕に飛びついてくる。

 僕はそれをひらりと躱して寺院に向かって走りだした。

 魅了の術にかかった九戎が僕を追って走ってくる。

 

 一匹と二人を引き連れたまま寺院に向かうが、一つ忘れていたことがあったのだ。

 あの時、カオルを助けた時は僕の中に狼の走力が蓄積されていたのだが、その能力はすでに使った後だから、僕の中にはもう残っていなかったということ。

 

 始めはともかく、すぐに僕の足は重く、遅くなっていく。

 もっと速く走らないと九戒に追いつかれてしまう。

 と言うか、だいたい猪の足の方が人間なんかより断然速いのだ。

 術にかかってよろけながらとはいえ、狼の走力を持たない僕に逃げきることは無理だったのだ。

 寺院が見えてきたところで、僕はとうとう足がもつれて転んでしまった。

 めくれ上がったローブを正すまもなく九戒の巨体がのしかかってくる。


 ダメだよ、九戒、と言って五蔵法師が止めようとするが、魅了の術にかかってるイノシシが言うことを聞くわけがなかった。

 九戎の太い前足が僕の腹の下に回って腰を持ち上げられる。

 ああ、結局こうなってしまうのか。

 

 カオルが魔法で何とかしてくれないかと思ってみるが、カオルの顔はすでにエッチな興奮で赤くなっている状態だ。

 止める気は毛頭ないみたい。

 確か豚のペニスは細い管が螺旋になっていてドリルみたいに見えるという知識がふと浮かんできた。

 だったら、このイノシシもそんな感じなのかな。


 でも、細いものが入ってくるかと思ったら、肛門を圧迫してくるその太さは、これまで経験してきた何人かのごつい男たちのそれよりもぶっとい感触だった。


 いや、なにこれ。ぶっとい。


 だめ、裂けちゃうよ。

 そう思いながらも、僕のお尻の穴はサキュバスの特技で自然に濡れて、そのぶっとい亀頭をぬるりとくわえ込んでしまった。

 

 ああ、すごい、すごい。太い肉棒が内部から圧迫して僕の一番感じる部分をごりごり刺激してくる。

 ああん。気持ちいい。九戒、もっと!


 その九戒の異様に強力な精を五回受け取る間に僕はその倍はエクスタシーの渦に巻き込まれていったのだった。


「きゃ、やだ。変態ですか?」

 なんの騒ぎかと寺院から様子を見に来た尼僧のローラが、口に手を当てて呆れた顔をしていた。


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