第20話 サキュバスとばれて


 いきなり僕のお尻を取り合って取っ組み合いを始めた男らにリリーはあっけに取られていたけど、すぐに剣を取って二人の男を感電させて倒した。


「こいつはいいから、しばらく待ってて」

 僕が叫ぶ。


 男が僕のお尻を一生懸命舐め始める。

 舌を肛門にねじ込むようにして味わっている。


 僕のお尻を舐めることも、もしかしたら人間に何らかの効果があるのかしら?


 でも、久しぶりに受精できる。

 男の硬くなった亀頭を濡れた肛門に迎えながら、僕は幸せを感じる。


「へえ、こんなでかいの良く入るな」

 男が一回目を射精して少し動きが止まったとき、横で身なりを整えたリリーの声が聞こえた。

 

 リリーは腕組みして僕らの結合部を覗き込んでいた。


「もう少し待ってくださいね。五回射精したら終わりますから」

 再び男が腰を使い始める。


 あんまり待たせるのも悪い。

 お尻の締まりを強くしたり弱めたりして、僕は挿入された肉棒を刺激してやる。


 なんどもアナル受けしているうちに、お尻の中の肉棒を速やかに絶頂させるすべを身につけたみたいだった。

 残りの四回射精させるのには、ほんの十分程度しかかからなかった。



「お前、さっき何やったんだ?」

 いびきをかく男の身体から抜け出す僕に、リリーが質問する。


 でも、今は時間がない。


「それより、あいつらが目を覚ます前にさっさと逃げましょう」

 眠ってる奴はそのうち起きるし、感電させられた奴らも気絶してるだけのようだった。 


 ササッとテントを片付けてその場を立ち去る。

 朝日を背に受けながら二人で急ぎ足でチュードン向けて歩き出した。


 ここまで来ると僕がサキュバスだというの、秘密にしておくのも無理がある。

 僕は歩きながら、リリーに僕の特技のことを話した。


「へえ、まるで男の娘サキュバスみたいだな」

 ほじった鼻くそを指で飛ばしながらリリーがつぶやく。

 まったく、可愛い顔なのに人前で鼻ほじるなよ。


「実は、そうなんです」

 僕は小さく言った。


 これまでリリーといて、リリーが悪人とは思えなかった。

 さっきの暴漢だって、殺そうと思えばできたのに、そうしなかったし。


 多分僕の精液で一儲けとか、考えないんじゃないかな。


 希望的観測でしかないけど。



「え、そうだったのか? そういえばお前のおしっこの匂い、思い出した。あれ回復薬の匂いとよく似ていたんだった」

 叫んだリリーは、すぐに道の脇によってしゃがんだ。


 そして腕をまくって肘を出す。


「じゃあ此処におしっこかけてみてくれよ」

 リリーの指差すところは、さっきの乱闘のときにできたかすり傷があった。


 紫色の痣と、切れた部分には少し血が滲んでいる。


 一瞬躊躇はしたものの、周囲を見回して、一応誰もいないことを確認してから、僕はローブをまくった。


 そしてその傷のところにかけてやる。さっきしたばかりだから、少ししか出なかった。


 でも、その数滴の効果は劇的だった。

 あっという間に痣は消えて行って、更に傷口も閉じる。


 数秒後にはどこが怪我をしていたところなのか、見分けがつかないくらいに回復していた。



「おおー本当だ。お前案外役に立つじゃん。これはいい拾い物だったな」

 きれいに治った肘をさすりながらリリーが喜んでいる。


「え、と。僕の事、まさか転売したりしないですよね」

 恐る恐る聞いてみる。


「しないしない」首を振るリリー。


「精液を搾り取ったりも?」


「あはは、そう言えば男の娘サキュバスの精液って、若返り薬になるんだったっけ」

 その言葉の後、俺はまだそんな年じゃないぞっと怒った顔で言った。


 僕の地位はしばらくは安泰のようだ。


 奴隷だけど。

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