第5話 酒場へ
おじさんが起きそうにないから、僕は仕方なくタンスをあさって適当な服をもらうことにした。
大きめのシャツと、ふんどしになりそうなタオルをもらって身なりを整える。
長めのタオルを六尺ふんどしを巻く要領で巻きつけた。
このふんどしの巻き方、これは前の世界の僕の知識だったのか、それともこの世界で覚えていたのか、もうわからなくなっている。
考えても仕方がないか。
カバンを一つもらって、それにいくつか食料を詰め込んだ。
まあ、僕のお尻に五回も気持ちよく発射させてあげたんだから、それの代償としてこのくらいはいいよな。
最後に靴だけど、何足かあるけどサイズが全く合わない。
隅の方に木の板と革で作ったつっかけが有った。まあこれなら履けそうだ。少しぐらつくけど。
さて、これからどうしよう。
ゲームでは、酒場で情報収集というのが常道だけど、この村に適当な酒場があるのかどうか。
家を出ると、僕が上がってきた川岸とは反対の通りに歩み出る。
5メートル幅くらいのメインストリート。
その両脇にいくつか家が並んでいた。
向かい側の並びの、奥の方に店の看板らしきものがぶら下がっているのが見えた。
多分あれが酒場だな。
僕は入り口の階段を上がって、その店のドアを開いた。
「いらっしゃい。旅人さんかな? 見ない顔だね。火のそばで暖まって」
店のドアを開けると、奥のカウンターから女主人が声をかけてくれた。
部屋の真ん中に石作りの細長い暖炉があって、温かい炎が揺れている。
僕は暖炉のそばの椅子に腰掛けた。
「何か飲む? あなたにはお酒は無理そうね。ミルク温めようか?」
女主人が優しく聞いてくれるけど、僕は無一文だ。
金目の物も何もないし。
首を振る僕の後ろから声が聞こえてきた。
「なんだい、金ないのかな? だったら俺がおごろうか。かわいい美少女にミルクをいっぱい温めてやってくれよ、フルダ」
振り返ると、若い男が僕を見ていた。
髪が長いな。そう言えばさっきの中年男も、同じくらいに肩まで髪を伸ばしてたっけ。
この世界では男も長髪が普通なのかもしれないな。
女の子と思われたようだけど、見た目で男に見られる要素は裸にでもならないと皆無なわけだから当然か。
きょとんとしていた僕の前に、フルダと呼ばれた女主人が、カップを置いてくれた。
温かいミルクだ。
若い男にありがとう、と一言答えて、僕はミルクを一口すすった。
すごく濃厚なミルクだった。
まるでスープみたいだと思った。味も、少し独特な獣臭い癖がある。
「旅人かい? どこから来たんだ?」
男は僕の横に座ると顔を覗きこんできた。
「まだ子供じゃないか。一人なのか?」
続けて聞いてくる男に、僕は一つ頷く。
「どこに行くんだ?」
若い男の腕が僕の肩を抱いた。その手のひらがゆるりと下がって僕の腰をさする。
僕が男だとわかったら、この男はどんな反応するだろう。
俺は男だって怒鳴ったら、どんな顔するだろう。
いたずら心が湧いてきたけど、ミルクおごってくれたからそれはやめておくことにした。
代わりに僕は尋ねてみる。
「この近くに大きな町があるでしょう。そこに行くつもりです。仕事も見つけたいし」
ゲーム内の地図を思い出して言ってみる。
あの地図通りかはわからないけど、村があれば町もあるだろう。
近くというのがどの程度かは別として。
半分はあてずっぽうだった。
そう言うと、彼はちょっと顔を離して僕を見つめた。
「この先を下ればホワイトホースという町がある。でも、仕事探してるんなら、俺の手伝いしないか? 俺は狩りをやってるんだけど」
彼の手が僕のお尻を触り始めた。お尻の中心をつんと突かれて、僕はあん、と声をあげてしまう。
僕のそこはすごく敏感なのだ。
「ちょっと! こんなところで始めないでよね。ここは酒場なんだからね」
女主人がくぎを刺してきた。
「俺のテントに行こうぜ。この上の方でキャンプしてるんだ。かわいがってやるからさ」
男の力強い腕が僕の腰を引き寄せた。
絶対逃がさないという意思を感じる。
まあいいかな、こういう展開も。
でも僕が男だとわかったら、どうなるんだろう。
ちょっと興味が湧いて、彼の引く手に着いて行くことにした。
まったく、ルーンときたらロリコンなんだから、そういう女主人の声が後ろから聞こえてきた。
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