第2話 川を下って
再びさっきの野原の道に戻って来た僕は、硬い岩の地面を踏みしめて丘を下って行った。
ゲーム内では、この先に村があるはずなのだ。
ほとんどのゲーマーが最初にたどり着く村。
そこで最初のクエストがあったりする。
道がなだらかになってきた。
水音も聞こえてきて、すぐ左手に小川が流れるのが分かった。
僕は草を踏み分けて、その小川に降りて行った。
気温は初夏というところか。水浴びするのにちょうどいいくらいだ。
着ている服を脱いでいく。
長細いずた袋に穴をあけて首と腕を出して腹に紐を巻いただけみたいな、服とも言えない布切れを脱いだ。
下着はふんどしみたいな布を巻いているだけだった。靴は、靴とはお世辞にも言えない、厚い革を切って縫って作った靴下みたいなものだった。
全部脱いでみる。しっとりしたきめ細かい肌の上腕を触ってうっとりしてしまう。
胸に手をやってみた。
あんまりおっぱいは大きくないな。ほんのりという感じ。
これじゃあ体系はロリ系じゃないか。
そう言えばキャラメイク画面では体系までは作ってなかった。
普通なら顔だけ決めれば、それなりの女性の体形になってくれるのだけど、この夢の世界は違うようだ。
ゆるやかに流れる澄んだ水の中に足を入れてみる。ちょっと冷たい。でも我慢できないというほどじゃなかった。
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気持ちが引き締まってくる。
朝の光が反射して、ゆらゆらキラキラ透き通った流れがそこにはある。
きれいな水だ。周囲にビルも工場もないと、こんなに流れのある川でも水ってきれいなんだな。
江戸時代はどこでもこんな感じだったんだろう。
ゆっくり膝まで入って、前かがみになって水を手ですくう。
顔を洗おうとした時、何かが視界にちらついた。
え?
なにこれ。
現実の世界では毎日目にしていたものが、なぜか股間にぶら下がっていた。
ええー? 改めてよく見てみる。
可愛い皮かぶりのおちんちんだった。
そう言えばキャラメイク画面で、性別を女性にするところがなかったのだ。
僕のやっていたあのゲーム内では、性別が男だとどうやってもかわいい顔にはならなかった。
だから、可愛い顔を作れるという事は性別は女性になってるものと思っていたのだった。
まいったな。これじゃあ美少女じゃなくて男の娘だ。
しょうがないな。でも、まあいいか、どうせ夢なんだし。
あきらめて身体を洗っていると、後ろの方から獣の唸り声が聞こえてきた。
振り返ってみると、狼が二匹僕の荷物をあさっていた。
干し肉なんかをがつがつ食べている。
ああ、僕のランチが……。
まずい。食料を奪われたことも痛いけど、この世界では狼は人間を襲う恐ろしい動物なのだ。
レベルが上がれば大したことないけど、多分僕は今レベル一だから二匹もいれば手ごわい強敵だ。
僕はいつもゲーム内でやっていたように、川の深みに入って流れに任せて逃げることにした。
狼は川には入ってこれないのだ。
流れにもまれながら下流に向かう。
身体を撫でていく冷たい水の感触、滑らかな石に擦られる感触、どれもリアルでとても夢とは思えない。
まるで現実の世界だった。本当に、これって夢なのかと不信感を覚えてしまう。
しばらく追いかけてきていた狼だけど、諦めたのかいなくなった。
いくつかの低い滝を落ちて、川幅が大きく、流れが緩やかになったころ、右岸に家が見えてきた。
どうやら村に着いたようだ。
しかし、まいったな。狼に襲われて、裸のまま、荷物も全部無くしてしまった。
村人に助けを求めるしかないか。
身体もすっかり冷えてしまって震えが来るほどだ。
このままじゃ風邪ひいてしまう。
僕は近くの家に向かおうと、裸のまま川から上がって茂みを分けていく。
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