異世界転生‐男の娘/僕はこの世界でどう生きるか

放射朗

一章 男の娘サキュバス

第1話 転生の目覚め


 やけに明るいな。

 朝と言っても、カーテン越しの光はこんなに強くないはずなのに。


 僕は薄目を開けて身体を起こした。

 手を横にやると、ザラリとした地面が触った。



 え? ベッドに寝てたんじゃない?


 慌てて周囲を見回す。もしかして酔っ払って地面に寝てたのか?



 ビルの入り口の段になった場所に寝転ぶ酔っぱらい。

 そんな想像ともかけ離れた世界が目の前には有った。


 野原だ。朝の野原。少し高台になってるみたいだ。

 すぐ近くに、この丘を降りていく小道が見えた。

 急いで立ち上がって、丘の突端になった場所から下を見下ろしてみた。



 ビルなんてどこにもない。


 草木の茂る低い丘がつながって、ずっと先にはギザギザの稜線の岩山が霞んで見えていた。朝のさわやかな空気の中で、僕は一人でそんな場所に立っている。


 これって、僕がいつもやっていたロールプレイゲームの世界の風景に似ている。


 これって、異世界転生ってやつか。


 これって、きっと夢を見てるんだな。



 好きなゲームの世界に入り込んだ夢。これは楽しそうだ、触った感触まであるなんてずいぶんリアルな夢だけど。


 僕は荷物を持つと、弾んだ足取りで小道を降りていった。

 

 ずいぶん身体も軽く感じる。生活につかれた新人サラリーマンの足取りじゃないぞ、これ。夢だからだろうな。

 

 自然と笑顔になってしまう。


 歩いていたら、どこからともなくゆっくり音楽が流れてきた。


 やっぱり、あのゲームの音楽だ。


 そう思った途端、画面が切り替わった。




 キャラメイク画面だった。

 この画面で自分のキャラの種族だとか、顔形まで作り出すことができるのだ。


 僕はパソコンでいつもやっていた要領で、まずは顔形を作っていく。

 いつものマウス操作じゃなかったけど、想像上のスライダーを操作して思うようにできた。


 いつも作っていたキャラは、かわいい美少女系だ。

 まず輪郭を調整して、目、鼻、口の場所を固定する。

 それからまずは鼻の形を整える。


 鷲鼻や団子鼻は論外。小さめのちょっと上向いたかわいい鼻を作る。

 なかなかいい感じだ。実際のゲーム上では解像度の問題で顎先が少し尖がったり、鼻の根元がかくついたりしてたけど、このキャラメイクは滑らかな曲線が思うように描ける。


 その次は口。目に行きたいのはやまやまだけど、まず鼻と口を決めてから行くのがプロなのだ。


 唇を少し突き出した感じのキュートな口にした。

 最後に眼を決める。


 ここでぱっちり可愛い目にするか、少しつり目の薄目にするかでキャラの感じはまるで変わってしまう。


 いろいろ試してみて、ちょいつり目のややぱちにすることにした。


 最後に髪形を決める。

 キャラメイクで重要なのがここだ。顔を作るときは坊主頭でやるってこと。


 そうしないと髪に隠れて見えない部分もあるし、その髪型でしか可愛くない顔になったりするから。

 

 僕はいつものように、ショートのボブみたいな髪型を設定してみる。

 あんまり長い髪は冒険者として似合わないし、美少女顔にはショートカットっていう思い込みもあった。


 髪型を合わせてみて、いい感じの顔になった。

 いや、これまでゲームで作ってきたキャラと比べても数段上質な美少女顔だ。


 全体を見回して、回転などもして決定ボタンをパチリ。


 これは楽しいゲームになりそうだ。



 そうして僕はこの世界に転生したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る