閑話4 幼馴染に仕える系メイド【1】
「どういう――こと?」
「今回のことで一週間は自宅休養ということになったでしょう。監視も込めて、貴女のお世話をお願いしたの」
「もう私は中学生! 監視しなくても、きちんと大人しく自宅で謹慎するわ」
「そういうけど、一週間も自宅で謹慎するわけなく、抜け出して鍛錬するに決まっていると、
「ぅっ」
「こんな子だけど、お世話をお願いするわね。冥夜ちゃん」
「任せて下さい! メイドとして一週間、完璧なお世話をしてみせます。ですから、ご安心下さい。お義母様」
「なんか発音が違う気がする!」
「気の所為です」
「いや、絶対、気のせいじゃないし。お母さん! 考え直してよっ。小学生の頃、ヨルツーのメイドご奉仕に付き合わされて、私、一人で着替えもできなくなったのを忘れたの!? 思い出してよっ」
「あー、そう言えば、着替えどころかトイレも一人で出来なく」
「忘れてよ!!」
「全く。思い出してと言ったり、忘れたよと言ったり、この子は我儘なんだから……。ごめんなさいね、冥夜ちゃん」
「いえいえ。メイドたるものこの程度の事はなんでもありません!」
私は胸を張って答える。
その後も、凛は必死でイヤだと母親に説得を試みたものの、決定は覆ることはなかった。
そこまで嫌がられる、メイドとして傷つくなぁ。
確かに小学生の頃は手加減ではなくて、凛をダメダメ人間にまで退化させてしまったけど、一応、反省はしている。後悔はしてないけど。
お義母様は仕事があるため、家を出て職場へと出勤していく。
家に残ったのは、凛と冥夜の2人。
幼馴染で近所に住んでいた冥夜は、紫桜家の内部を知り尽くしているので、とりあえず凛がリビングにある椅子に座らせて、紅茶を淹れて出すことにした。
「……自分の家なのに、自分よりも勝手を知っているのが幼馴染ってどうなのよ」
「メイドですから当然です!」
胸を張って答える冥夜に、凛はため息を吐いて淹れられた紅茶を飲んだ
「――ねえヨルツー。なにかあった?」
「別になにもありませんでしたよ。紅茶、まずかったですか?」
「別に不味くはなかったわ。逆に美味しすぎたぐらいよ。――貴女がストレスを溜め込むと、奉仕でストレス発散するクセがあるでしょう。その状態でやられると、受ける方も大変なの」
うんざりしたように凛は言った。
そうかな。そうかもしれない。
ストレスを溜め込んでも、奉仕していたらスッキリしていたから、きっとそうなんだろう。
指摘されるまで自覚が無かった。さすが幼馴染。
だけどストレスねぇ……
どう考えても先日のダンジョン省での一件ぐらいしか思い当たる節はない。
凛に気づかれるなんて、私もまだまだということだね。
『現在、国内ダンジョンは安定している。ただ、それは優秀な探索者たちのお陰でもある』
『安定させておくためにも、その優秀な探索者の人員は常に必要なのだ』
『つもり今の我が国に余剰戦力はほとんどない』
『そもそも少子高齢化が進んでいた我が国において、50年前のスタンピードで更に人口は大きく減った』
『1000位以上のランキングはG7の中でも特に我が国は空白が目立つ』
『……『冥王』、少し10位以上にランキング上げる人物を緩和したらどうかね。機密事項で誤魔化しているが、10位以上に3つも空位を作っておくのは、外面的に少し悪い』
『しかし中途半端な人材を上げたら、外国から舐められる事も想定される。一定の実力は必要だ!』
その後もグチグチと長い時間、国内情勢の愚痴を淡々と聞かされた。
『早い話が現状、沖縄奪還戦で活用できる人材はほぼいないと思ってほしい』
『しかしアメリカがトップクラスの探索者4名を出す以上、我が国としてもある程度の人材を出す必要がある』
『――そこで冥王。キミには大変申し訳無いが、力を貸してほしい』
『お前が持つ変化術を使えば、トップクラスの探索者を沖縄に派遣したという事実を出すことが可能だ』
『真似る人材の選定は任せる。ただし100位以上の探索者10名を変化するようにしてくれ。資料は用意して渡そう』
『第二次沖縄奪還戦で数少ない帰還者である『月灯』月詠都は志願してきているので、同行してもらう事が決まっている』
『後は夏休みに行われる『天藍祭』の競技である武闘際で、成績優秀だった学生も内々で参加させる予定である』
『我が国の将来を担う若者を犠牲にする可能性があるが、今の世代の子供、下手な大人よりも優秀だ。きっと戦力になるだろう』
『優秀な人材をこんな事で、亡くしたくはない。だから奪還戦と同時に、学生が死なないように視てあげてくれ』
『負担を強いる分、国として「冥王」。お前には数々の便宜と、必要なものがあれば国費の内で処理する事が決定した』
『だから、よろしく頼んだ』
ダンジョン大臣、外務大臣、防衛大臣、官房長官は私がメイドである事を感謝した方が良い。
もし私がメイド以外のジョブについていた場合、暴れまわって、半殺しぐらいにしているよ。
10人投影変化した挙げ句に子守までしろって?
まあ、私はメイドですから? 可能といえば可能ですが。
――ご主人様からのオーダーではなく、国からのオーダーって時点で、やる気があまり起きない。
「よしっ。とりあえず、脱いで下さい」
「はぁあ!? 突然っ、何を言い出すの」
「ダンジョン探索後の入院で、身体が凝り固まってるでしょうから、マッサージで解しましょう」
「…………いやよ」
「大丈夫ですよ。小学生の時もしてあげたじゃあないですか。メイドですから、その辺りの素人よりもマッサージはだいぶ得意なんですよ」
「え、もしかして、小学生の時よりも、腕が、上がってる?」
「当然です。メイドたるもの日進月歩。日々成長しているのです」
「――――――――絶対にイヤ」
「え、聞いてた? 上手くなったって言いましたよね」
「だからよ! 小学生の時でさえ、その、気持ち良すぎて、大変だったんだから。あの時、以上に気持ちよくされたら、大変じゃない」
「お嬢様が望むなら、極上な快楽を味あわせてあげることも出来ますよ」
「断固としてお断りするわ! 後、一緒に暮らすのなら、ルールを決めましょう。親しき仲にも礼儀あり。主とメイドの中にも一定の配慮は必要だと思うの」
「まあ……一理ありますね。承知しました。お嬢様が望まれるルールを制定致しましょう。」
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長くなったので分けました。
明日も投稿します。
それでプロローグ部分は終わります
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