第5話 寝所と子孫と先祖と孫と
すっかり夜になり、街は綺麗なネオンを輝かせている。
「ふぁ・・・」
おれはあくびをした。今日は色々と疲れた。いきなり知らない場所に来て、知らない人に出会って。
ああ、家に帰って寝たい。
「どうしたの、おじいちゃん。眠い?」
「うん、眠い・・・って、寝る場所ないじゃん!!」
おれは思わず叫んだ。
「あっ、そうか!そうだった!おじいちゃん、ちょっと来て!」
友美子は走り出した。
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おれが友美子に連れてこられたのは、知らない中学校の門の前。
「中学校?なんでここに?学校に寝る場所はないけど」
おれが友美子に聞いた。
「はぁ、はぁ・・・。ここはね、時空研究中学校っていうんだ。タイムリープしてきちゃった人は、ここに行く必要があるの。行けば、部屋とかを貸してもらえる。それでね、時空研究中学校では”時空”を研究してるんだって」
友美子が息切れしそうになりながらも説明してくれた。
「へえ。タイムリープが当たり前すぎてそんなとこもあるのか」
「あとは、タイムリープしてきちゃった人が行ける学校にも通えるようになるんだ。私は、その学校の1つ、四次中学校に通ってるよ」
「四次中学校⁉︎おれが通ってるところだ」
まだこの学校が存在しているのか。おれは思った。
「そうなの。四次中学校、今はそうやって使われているみたい」
おれと友美子はその「時空研究中学校」の敷地内に入った。
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「なんかすごい・・・」
おれは、四次中学校の校舎の廊下を歩いていた。
すごい。
「でしょ? 確か、アイツはこの部屋にいるはず」
「アイツ?」
おれは首を傾げた。
友美子が、「自習室」と書かれた教室のドアを開けた。
「優馬ー?いる?」
中には生徒が数人いて、みんな席に座ってワークみたいなのをやっている。
「あれ、友美じゃん。どうしたの?」
友美子が顔をあげると、教室の中にいた「優馬」と呼ばれた人物が気づいて声をかけてきた。彼は眼鏡をかけていて、真剣な目つきで問題を解いていたが、友美子の声を聞いてすぐに明るい表情に変わった。
「ま、またタイムリープね・・・」
「私はあるからいいんだけど、おじいちゃんの寝る場所を探してるの。優馬、何か助けてくれない?」
「おじいちゃん?友美の?」
「そうだよ。おじいちゃん、こいつは斉藤優馬。私たちの子孫にあたる人物らしいね」
「おじいちゃんかあ・・・」
優馬は一瞬驚いたように目を丸くしたが、すぐに頷いた。
「もちろん、任せて!隣には寝るための特別な部屋があるんだ。そっちに案内するよ」
優馬はすぐに教室を出て、廊下を進んでいく。達也はその後ろをついて行きながら、廊下に掲げられたポスターや作品に目を奪われた。近未来的なデザインの教室や、様々なタイムリープに関する展示物が並んでいる。
「時空研究中学校って、本当にすごいな。こんなに研究されてるなんて想像もしてなかったよ」
おれは思わず感心した。
優馬はちらりと振り返って微笑み、
「それに、ここにはタイムリープした人たちも集まっているから、いろんな人と話せるのも楽しいよ。おじいちゃんも、色んなことを学べるかもね。」
「まあ、そうかもな。でも、なんかおれみたいな人珍しいって友美子言ってたし」
「まあね。昭和からくる人なんてめったにいないかな。まあ大丈夫。みんな優しいから」
おれは優馬に導かれ、おれたちは昇降口を出た。
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数分後、到着したのは大きな建物の中の1部屋。この建物は、タイムリープしてきた人が使える部屋がたくさんあるらしい。
「ここだよ。今日から使っていいからね」
優馬が扉を開けてくれた。
部屋の中はシンプルだが、快適そうなベッドやクッション、勉強机が置かれていて、大きな窓がある。すぐにでも寝られるように準備されていた。
おれはほっとした気持ちになりながら部屋の中へ入った。
「ありがとう、助かったよ」
「ゆっくり休んでね。」
優馬はそう言って、友美子と一緒に部屋を後にした。
おれは学生帽と学生カバンを床に置いてからベッドに横になり、窓から見えるネオンの光を眺めつつ今日あった出来事を思い返していた。まさか自分が1億5千万年の時代に来ちゃうなんて夢にも思わなかった。
「明日から、どんなことが待ってるんだろう・・・」
おれはそう思いながら次第に眠りに落ちていった。
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