第2話 いざ、召喚へ

 仕事を終えた私は、いつものように自宅に戻ろうとした。だけど、交差点付近で足元に光が宿った。その光は、だんだん大きくなり、全身にまとわりついた。そして、下半身から光とともに消えていく。


「ここは?」

 目の前に広がる一面が、青に染まっている。

「おやおや、遅かったようだね」

 上方から声が響く。天から声の主らしき人が降りてくる。見た目は私よりも若く、美しい女性。

「あなたは?」

「わたくしは、風の女神・イラナ」

 彼女は、人ではなく神様のようだ。なんで神様が目の前にいるというのだ。

「わたくしが君を召喚させた」

「召喚?いつですか?」

「足元に光が宿ったと思うけど覚えている?」

 あれは、そういうことだったのか。納得した私は女神さんに問いただした。

「なぜ、私を召喚したのですか?」

 理由だけがいま知りたい。

「勇者として、ある国を救ってほしい」

「ある国?」

 勇者として違う世界を救う?一体なぜ?疑問が多く、頭の中は混乱の渦と化している。

「着いたら、教える」

 どんなところだろう。わくわくする気持ちと不安な気持ちが混ざり合っている。

 女神さんは、私に向かって魔法を放つ。

 なぜ、私が魔法の存在を知っているのか。それは、大好きなファンタジー作品を読み続けていたから。そのため、知り得た。実際に見るのは初だからこそ、ワクワクしている。

「慈悲な恩恵ヒルッシュ

 その魔法に食らった私はダメージを与えられたわけではないのだが、先ほどの光に包まれた。何をされたのだろう。不思議に思うと女神さまの一言を聞いた瞬間、私はその場から消えた。

「では、いってらっしゃい!」




 わたくしは風の女神・イラナ。わたくしの仕事は、気になる人間を見つけて勇者として異世界に飛ばす。個人も団体もその時々で違ってくる。今まで、数万人に恩恵を与えてきた。人それぞれ恩恵は違う。特に、今回の教師である彼はひと味違う。彼はこれからどう生きるのか楽しみだ。




 目の前に広がる草原。草を踏む感触も風を浴びている感触も存在する。本当に、ここは異世界なのだろう。

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