第44話 2人の前世
「捜査員の中での前世の探り合いは禁止だ」
奴隷契約を結んだあと、早速2人の正体を訊くことにした。
カレンやメイル、ルディとどのような関わりがあるか判らないからだ。
刑務所内で敵対していた場合、それを持ち込まれても困るのだ。
「仲間内での殺し合いも禁止だ。
もし勝手に動けばお前たち2人から処分する」
「なんで俺たちからなんだよ!」
「話が違う、これじゃ王国軍に残った方が安泰だ」
「ここからは、他の者に聞かせられない話がある。
2人はお互いの正体を知っているんだろう?
こっちに来るように」
俺は2人をカークやスケズリーはおろか、カレンとルディからも遠ざけた。
メイルは情報収集でこの場に居ないので省く。
これは他の者に会話内容を知られないようにという配慮だった。
「信頼度が違うんだよ。
お前たちの前世が刑務所に入っていた犯罪者だと知っている。
その特性はこの世界の犯罪者にのみ向けるように。
仲間に向けるようならば、即処分する」
薄々気付いていたようだが、2人がやはりという顔をする。
「解かったよ、つまり犯罪者ならば殺って良いんだろ?」
「俺の指示があればだ」
指示なく殺されてはたまらない。
特例を除いてな。
「だが、そのカレンという奴は指示も無くミゲロを盾にして殺したぞ?」
まさに、その特例を1人が口にする。
「俺と伯爵を守るためだ。
そして、前世でミゲロは連続レイプ殺人犯の三毛谷だった。
結果的に良い判断だった」
「じゃあ、俺たちの前世が凶悪だったら……」
「ミゲロのように扱われるのか?」
「どうしても許せない犯罪というのはあるからな」
「待て、俺たちはそんな凶悪犯ではない!」
「殺しをしていてもか?」
「違う、俺は巻き込まれたんだ!
仲間が殺っちまって、その共犯として捕まったんだ!」
「俺も、まさか死ぬとは思わなかったんだ」
「とりあえず、名前と犯歴を一致させる。
その名前が凶悪事件のものならば、かなりの行動制限がかかると思え」
そして、許せない凶悪犯罪ならば、処分する。
まあ、殺人だから遺族的には許せなくて当然だが、殺されたのが他人だと、人は案外無関心になれるものだ。
その犯罪内容に憤りを覚えないようなものだと、まさに他人事になってしまうのだ。
「【鑑定α】氏名前世犯歴」
〖貝塚真一:傷害致死 殺人〗
〖九条凪:強盗致死〗
貝塚真一は知らないな。
前世では人殺しの名前も強烈な犯行内容でないと記憶にも残らない。
そして、刑務所では番号で呼ばれるため、お互いに名乗らない限り本名は知らないのだ。
余程の有名事件でもない限り、名前など知らないものだ。
こいつが巻き込まれたと言っていた奴だ。
九条凪、こいつは有名だ。
強盗に入った先の被害者を死ぬまで殴り続けた奴だ。
それでいて死ぬと思わなかったという頭のネジが外れた奴という印象だった。
ネットで九条ネギと呼ばれていた凶悪犯だ。
さっきも死ぬと思わなかったと本気で言っていたな。
「貝塚、犯歴に巻き込まれたとは出て居なかったぞ?
言い逃れは出来ないと思え」
「本当に、名前までわかるのか!
あんた何者だ?」
その貝塚の質問は無視して話を続ける。
「九条、限度を超えて殴り続ければ人は死ぬ。
それを抑えられないならば、ここで処分だ」
「抑える、抑えるから勘弁してくれ」
どうやら、九条は知能に問題があり、暴力の加減が出来なかったようだ。
それが転生したことで、知性のある身体に宿ったのかもしれない。
聞き分けが良くなっているようだ。
「俺はお前たちを転生させた女神から、間違いだったから正すように依頼されている。
その手伝いをするならば生かすが、そうでなければ躊躇わず処分する。
解かったか?」
「解かった」
「そのつもりだ」
「おまえたちはカレンの下に付いてもらう。
カレンは殺人狂だ。
前世的にはアウトな人材だが、この世界では上手く折り合いをつけている。
殺されないように注意しろ」
半分冗談で脅しておく。
「ああ、そうだ。
お前たち、今世での名前はなんだ?」
「ヅッカだ。
名前なんて無かったから、前世の仇名を名乗っている」
「そのまんまクジョーだ」
ヅッカとクジョー、まだ見習いだが、新たな部下が増えることになった。
ムショ転生ー特殊犯罪独立捜査機関で凶悪犯の転生者を取り締まれー 北京犬(英) @pekipeki0329
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