第24話 河賊王

 王家御用達の船であり、さらにチャーターのようなかたちになったため、川船には俺達以外の乗客は居なかった。

そのため、本来ならば寄るはずの寄港地にも寄らずに素通りすることとなった。

その分アケーリアルへの到着が早まる予定だった。


「大変です、河賊の襲撃です!」


 船頭の爺さんが慌てて俺達に警告を与えた。

俺たちは逆に対処するために甲板へと上がる。

すると俺たちを守ろうとしてか、船頭の爺さんが前に出た。


 船の進路の先に何隻もの船が見えていた。

その船の数々が行く手を遮っていた。

海ならば海賊だが、河川だから河賊か?

まあ、船を操った盗賊ということだろう。

このままだと川の流れで船が包囲のど真ん中に行ってしまう。

そんな流れまで熟知しているということは、ここら辺を縄張りにしている常習犯というところだろう。


 ついに包囲の中に船が流れ着いてしまった。

素早く小舟が舷側に取り着く。


「いつものように、荷物の一部を通行料として差し出せ」


 甲板に乗り込んで来た河賊が、そう口にして固まった。


「あれ? 商人の船じゃねーのか?」


 そして間抜けな声を上げた。

どうやら襲う船を間違えたらしい。


「おい、次だって言ってたよな?」


 次とは船の順番のことだろうか?

河賊のボスと思われる男が部下に問い質す。

まさか、この船が寄港地を素通りしたために順番が狂ったのだろうか?


「この船は王家御用達ですぞ。

襲ったとなれば王家が黙っていないぞ!」


 船頭の爺さんが河賊に詰め寄る。

いや、既に襲っているので、これもう問題になっている。

そうなると、相手も引くに引けなくなる。

窮鼠猫を噛むで何をするか判ったもんじゃないぞ。


「まて、間違いだったのだろう?

ならば、直ぐに引き上げてくれれば無かったことにする。

お互いそうした方が良さそうだ」


 俺の提案に河賊のボスと思われる男が直ぐに同意を示した。


「俺は河賊王になる男だ。

商人から通行料は取っても、人を襲ったりはしない。

ということでさらばだ」


 なんか聞き覚えのある台詞が出たぞ?

年齢も15歳ぐらいかもしれない。

つまり……。


「(【凶悪犯探知】)」


〖凶悪犯の転生者1名〗


 やっぱり。

河賊のボスがまさかの転生者だった。


「(【鑑定α】)」


〖前世犯罪歴:テロ防止法違反 爆発物取締法違反(爆発物製造所持) 国家転覆未遂〗

〖今世犯罪歴:強盗〗


 ああ、テロリストなのね。

いや、あの〇賊王がテロリストというわけではない。

こいつが、個人として前世で〇賊王になろうとして、テロリスト化したということだろう。

捕まらなければ、ある意味賞金首になっていたのだろうな。


 この世界では河賊王を自称しても誰も文句を言わない。

好きにしろという感じだろうか。

海軍と揉めなければ、商人が必要経費という認識で通行料を払う程度ならば、何の問題もないだろう。

凶悪犯の転生者としてもスルーで良いか。


 この世界の寛容さに感謝だな。


 そして河賊が去り、船は解放された。


「爺さん!」


 その時、船頭見習いが慌てた声を上げた。

見習いは船頭の爺さんの孫だったか。

どうやら、爺さんが事件の緊張で倒れてしまったようだ。

船がコントロールを失って、河の激流に乗る。

そして、対岸に一直線に向かってしまう。


ドン!


 あれよあれよという間に、船は対岸に座礁した。

その勢いで、甲板に出ていた俺達が投げ出されてしまう。

だが、そこは運動能力に優れた面々、何事もなく着地した。


「あ、まずい!」


 そのカークの声に振り向くと、柵の一部が外れ、馬がパニックで脱走するところだった。

慌てて追いかけるカークとスケズリー、だが、その行動が良くなかった。


「おまえら、我が国に何の用だ!」

「さては密入国だな?」


 そう、対岸は隣国の領土。

俺たちは事故により密入国してしまっていた。



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