第19話 辺境伯領到着

 アードルング辺境伯領には、俺たちは東の蛮族の視察で来ていることになっていた。

それは倒されても倒されても湧いて来る、そう表現しても良いような、兵士の命など消耗品扱いで攻撃してくる謎の国家だった。

そこまでして攻撃してくる理由は不明。

その行動原理は理解の外にあった。

それを調べ、出来る事ならば戦争状態を終結させる手段をみつける、それが俺たちの表向きの訪問理由となっていた。

それが特殊犯罪かというと微妙だが、それを行う機関が他にはないのだから、そのこと自体は疑われていないと思われる。


「やっと東の守護者の砦に着きました」


 そこは巨大な防御施設だった。

この国の東側国境は、東に面して南北に長大な塀が建てられており、その塀は南と北の国境にある切り立った渓谷にまで繋がっていた。

この塀を乗り越えない限り、この国を侵略することは出来ないという万里の長城的な防御施設だった。

その一角が東に張り出す形で防御砦となっていた。

一角という表現では物足りない、広大な領地そのものが砦化している、それがアードルング辺境伯領だった。

つまり辺境伯領は、この国の東側国境となる塀から飛び出す形で蛮族の領土を侵していた。


「この土地奪還が蛮族の襲って来る理由だよな?」


 カークがポロっと真理を口に出す。


「しーっ! それを口にしては駄目だ。

今後二度と口にすることを禁止する」


 それは言ってはいけない答えだった。

その理由ではない真理があるという体で、俺たちは調査に来ているのだ。

尤も本当の調査目的は、血塗れの英雄が凶悪犯の転生者かどうか調べることにある。

その行動を隠すために、俺たちは真剣に蛮族の襲撃理由を探らなければならないのだ。

ある意味茶番だが、辺境伯お気に入りの英雄を調べるなど、こっちの命がいくつあっても足りなくなる。

そのための擬装だった。

無理があるのは重々承知だ。


 馬車と二騎の騎馬は、王家からの書状が先に届いているため、すんなり門を通過した。

だが、逆にその訪問を疑われていれば、それは準備万端で待ち構えられていることを意味していた。


「まずは辺境伯に謁見か」


 気が重いことになりそうだった。

もし、血塗れの英雄が凶悪犯の転生者だったとして、その処分など勝手に出来ない可能性が高い。

辺境伯にとってプラスとなるかマイナスとなるか、それと俺たちや王家との柵を天秤にかけ、なんだったら俺たちを蛮族に始末させることすらやりかねないのだ。


 まずは、アードルング辺境伯の人となりを探らなければならなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき

 すみません。眼病によりここまでです。

残り半分は本日中になんとかします。


 


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