第9話 偽ミーハン子爵を追い込む
ミーハン子爵家乗っ取りを正す。
そのために俺は動き出した。
手続き書類を集め、生き証人のシンディーが子爵家息女であることの確認書類も手に入れた。
これで簡単に偽ミーハン子爵を追い落とすことが出来るはずだった。
そして、貴族位簒奪は重罪。
偽ミーハン子爵は公的機関によって極刑となり、重罪を犯した凶悪犯の転生者を俺の手を煩わせる事無く処分出来るという筋書きだった。
だが、生き証人のシンディーが居るにも関わらず、法的にその地位を取り返すことは出来なかった。
手続き途中で、いきなり壁にぶち当たってしまったのだ。
結果、偽ミーハン子爵を捕まえて処分してもらうという筋書きは破綻した。
「手続きに関わった人たちも呪術で操られてるのか!」
証拠もあるし不正ならば正せる。
そう思ったのだが、それは間違いだった。
偽ミーハン子爵の正当性を調べる立場の者が呪術で操られていた。
たかが12歳の子供の訴えなど、そこで握り潰されていた。
シンディーの存在?
盗賊に誘拐されて死んでいると思っていたという話になっていた。
見つかったならば、返還するようにという命令まで出た。
良いようにやられていた。
「いっそ、偽ミーハン子爵を殺して、呪術を解除するか?」
あまりの無力感に、俺は物騒な気持ちに傾く。
だが、そんなことをしては俺が貴族殺しの罪に問われる。
出来ない相談だった。
「そもそも、相手も12歳のはずだろう?
法廷に引き摺り出せば素性がバレるのでは?」
「でも、あいつは背も高く、見た目は大人に見えているはずよ」
おっさん子供というやつか。
確かに、西洋系だと顔や姿が十代で完成している場合があるな。
12歳ぐらいだと、日本人だと子供だが、外人だと大人に見えるというのは良くあることだ。
俺? 俺は美少年系だから線が細い王子様キャラだ。
外人からはゲイ扱いされるというあのタイプだ。
公爵家という地位があってまともな扱いを受けている。
「そもそも裁判にもなってないんだよな」
役所の担当が呪術で操られているからこそ、偽子爵が登録出来たのだ。
そこで妨害されては、俺たち子供ではどうにもならない。
親に頼る?
父親は抜けているから駄目か。
爺さんに頼る?
爺さんの、公爵の権力ならば、手続きを進めることが出来るかもしれないな。
「仕方ない。
爺さんに頼るか」
俺は公爵である爺さんに面会を求めた。
◇
暫くして、現テラスター公爵である爺さんに面会出来ることになった。
公孫とはいえ、簡単に面会も出来ないのが貴族家というものだった。
「おまえは何をやっている?」
俺が事情を説明する前に、爺さんが口を開いた。
どうやら爺さんに俺がやっていることの報告が上がっていたようだ。
「偽子爵による爵位簒奪を摘発しようとしています」
「なぜそれをおまえがやる必要がある?」
「何故と言われましても……」
奴隷を買ったら子爵家の娘さんだったからだが……。
あれ? 奴隷を買ったって爺さんに言っても大丈夫なのか?
若い女性の奴隷を買うというのは、筆おろし目的と思われる。
実際、ロイドはそう思っていた。
爺さんに報告したのはロイドだろう。
これ、やばくね?
「おまえが性奴隷を買ったという報告を受けている」
やっぱりバレてる!
くそ、ロイドめ、やはり全部報告済みかよ!
「そんな女の戯言に耳を傾け、貴族家の御家騒動に首を突っ込むなど言語道断だ!」
「でも、彼女は呪術でステータスを弄られてたし、本物の息女だって証明もとれたし」
「息女は盗賊に誘拐され死んだと思われていたそうだ。
我が家に返還要求が来ているぞ?
いまは、我が公爵家が誘拐しているも同じ状態なのだぞ!
これは公爵家の名誉の問題である」
名誉を重んじる家系が誘拐状態を許さないらしい。
だが、おかしくね?
名誉を重んじるならば、偽子爵を討つのがテラスター公爵家ではないのか?
「わかりました。
我がテラスター公爵家の名誉のために、偽子爵は
それが名誉を重んじるテラスターの義務です」
「間違いでしたでは済まんのだぞ?」
「はい」
「我が公爵家からの援助も無いぞ?」
「はい」
「良く言った!
それでこそテラスターだ!
爺ちゃんはエルの成長を見れて嬉しく思うぞ!」
急に爺さんがデレた。
どうやら、偽子爵である裏は取れていたらしい。
お家騒動に首を突っ込み、それを俺自身がどう解決するのか、その決意を試されたらしい。
「さあ、今からミーハン子爵邸に乗り込んで、決着をつけて来るのだ!」
爺さん、孫を千尋の谷に突き落としすぎじゃね?
俺ってまだただの12歳よ?
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