第7話 奴隷の扱い
ジェイソンの馬車で公爵家王都邸に戻る。
奴隷女子の2人も一緒だ。
今の彼女たちは全裸にローブ姿なので、人目を憚る状態のため、裏口からの帰還だった。
「次こそは私の奴隷を見せましょう」
ジェイソンは、そう言うとそのまま帰って行った。
おかしい、いつ俺が一緒に光源氏計画をしたいと言った?
いつの間にかジェイソンに
それもジェイソンを知り、犯罪行為を知るため許容するしかないとは……。
俺の帰還に使用人が目敏く反応する。
「お帰りなさいませ、そのお2人は?」
俺付きの執事――ロイドが直ぐに表れたのは、使用人の誰かが呼びに行ったからだろう。
裏口から帰還するというイレギュラーな事態でも俺を待たせない、プロの仕事だった。
そして、俺が奴隷女子を買って来たと理解しただろうに、それを咎める事も、嫌な顔もすることなく、平然と対応してくれている。
「買って来た。
入浴させ、貴族相手に相応しい身支度をさせろ」
「承知しました」
「それから、こっちの子は元か現かはわからないが、貴族家の子女らしい。
外部からステータスに隠蔽がかけられ、奴隷に落とされていた。
素性を調べておくように」
「呪術魔法の形跡があります。
解呪してもよろしいでしょうか?」
「頼む」
「かしこまりました」
さすが公爵家の使用人。
無駄な事を尋ねずに俺の望む仕事を先回りでしてくれる。
俺は彼女たちのことをしばし忘れて、自室に戻ることとなった。
◇
俺の部屋は広い。
所謂ホテルのスイートルームという感じだ。
スイートというと「甘い」という意味だと間違う人がいるが、これは「全て揃っている」という意味のスイートの方だ。
部屋の中には応接室や執務室、複数の寝室から個人用の浴室・トイレまで、全てリビングから移動出来るようになっている。
呼べば使用人が現れる待機室や軽食が作れる程度のキッチンも備わっているが、俺が感知するべき部屋ではなかった。
俺も公孫として染まったものだ。
いや、染まるというよりも、10歳までに備わったと言うべきだろうか。
それが10歳になって前世の記憶が戻るという利点だったのかもしれない。
これを前世の意識のまま勉強させられたら、オーバーフローしていたかもしれない。
年を取ってから勉強させられるのは、苦痛を伴うものだからな。
気付いたら読み書きから貴族常識までもが備わっていた。
その利点は大きい。
「若様、準備が整いました」
執務室に入り、特捜や国際刑事機構のようなものを国に作る計画をたてていると、執事が奴隷女子の身支度が終わったことを知らせに来た。
女子の下着や服など、この短時間でよく準備出来たものだ。
優秀な使用人とはかくあるべきだろうな。
「うむ、何処にいる?」
「寝室にて待機させております」
ん? なぜ寝室?
それに寝室というか個室は友を泊めるなどの来客用のため複数あるのだが?
「どこのだ?」
「若様のですが?」
ん?
なにやら、俺と執事との間に認識の齟齬があるようだ。
待機させるのは応接室で良いし、まあ寝室だとしても俺のではなく来客用だろうに。
「わかった。
そっちに向かおう」
使用人のミスに寛容な態度を示すのも公孫たる資質の1つだ。
自分が偉いからって居丈高になってパワハラ叱責するなんてのは下の下なのだ。
俺は自分の寝室に向かい、自らドアを開けた。
「はい?」
そこには入浴後薄化粧を施され、シースルーの夜着を着せられた奴隷女子2人がベッド上で待っていた。
「ロイド、これは?」
ロイドというのは執事の名前だ。
プライベート空間では名前で呼ぶことが多い。
外では身分から「おい」とか「おまえ」とか呼ばないとならない。
「はい、夜伽の準備でございます」
貴族子弟ともなると、夜のお世話係も嗜みの一つ。
まさか、そのために買ったと思われていたのか!
「申し訳ございません。
若様のお手を煩わせる前に、我らが気付き準備するべきでした」
うん、12歳ぐらいだと精通してやりたい盛りだもんね。
1人での行為でも覚えたら猿だって言うもんね。
だが、これは違う。
俺の前世の常識では相手の年齢的にアウトな行為だ。
凶悪犯罪者を処分する役割の俺が、前世で犯罪に当たる行為をするわけにはいかないのだ。
あ、奴隷売買は救出と犯罪回避目的なので、その限りではない。
「そうではない。
この2人は奴隷商から救出したのだ。
ごく普通の貴族子女用の服を着せ、連れて来てくれ」
「若様、まさか男が好きとか「無いわ!」」
俺はロイドの在らぬ疑いに食い気味で否定した。
男娼など用意されたら迷惑だからな。
いや、女性の娼婦でもだめだが。
「この2人は妹のように扱え。
その後、どのような方向に進めるかは今後次第だ」
「承知しました」
まったく、前途多難だぞ。
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