第32話酒蔵と味噌蔵 その1

陣屋の見学は最後は少し駆け足であったけど、それでもちゃんと全部見学をした。


「時代劇の拷問で正座してる所に石を乗せる拷問があるけど、実際にあったんだね」

「そんな事言われてもわからないわよ」

「ほら、抱石ってあったでしょ?あれだよ」


わたしは温海に撮った写真を見せる。


「なるほど、これの事ね」

「この三角になってる木の責め台に縛られながら正座させられて、足の上に抱き石を置かれるんだよ」

「これは確かにいたそうね」

「でも、時代劇とかの創作でなくて実際の江戸時代のお役所だった場所にあるから本当だったんだね」

「そうね」

「あと石1枚40㎏っていうのも参考になったよ~」


空さんはそう言って何故か喜んでいる。


「時代物の拷問のシーンを描くのですか?」

「そういう訳じゃないけど、きっとその内に役に立つかなって思っただけだよ~」

「なるほど」


役に立つかはわからないけど、知っておくのは大事とは思う。

わたしも時代劇に出て来た実際?の物をみれから、なんか嬉しい。


「今は拷問は禁止でよかったわね、文乃」

「温海さん、なんでわたしが捕まる前提ですか」

「文乃が江戸時代に居たら強欲の罪で捕まってたわよ」

「そんな罪はないですぞ」

「わかってるわよ、冗談に決まってるでしょ。でも、文乃は余計な事をして捕まるタイプと思うわ」

「う、なんか否定できないのが悔しい」


何の罪で捕まるかはともかく、江戸時代に居たら余計な事をして奉行所に訴えれそうな感じが自分でもなんとかくする。


「そう考えると、現在に生まれて良かった」

「そうよ。そ、それに……こうやって出会えたんだし……」


温海は自分で言って顔を赤くしてる。

というか、温海さんは浮いたセリフを言って自爆してませんか?

まぁ、それがいいし、温海と夕と出会えたのはもちろん嬉しいよ。


「温海ちゃんってかわいいよね~」

「そ、空さんまでからかわないでくださいよ」

「だって、ラブコメ主人公ぽくていいし、ヒロインとしてもツンデレでかわいいし」

「そ、そういれると……ちょっと嬉しいかも……」


温海はそうつぶやくと顔を赤くしながら、夕の元へと駆けて行った。


「温海ちゃんは何度見てもかわいいよね~」

「はい、本当に飽きないです」

「温海ちゃんは温海ちゃんでいいけど、次の目的を果たさないとね~」

「酒蔵に行くんでしたっけ?」

「そうだよ。何軒かあるけど、時間の事を考えて近くの2軒に寄っていくよ~。あお味噌が売っている所もあるからそこにもね~」

「わかりました。味噌は家へのお土産として買っても良いですね。それでは行きましょう」

「だね~」


わたしと空さんは夕と温海に向かう所を教えると、陣屋の前の橋を渡る。

すると、今までの町並が一転し古い町並みに変わった。


「ここが古い町並みですか」

「うん、城下町と旧街道沿いの町並で江戸時代から明治に建てられたそうだよ~」

「江戸時代ぽい感じがしますが、全部が江戸時代じゃないんですね」

「明治に大火があったあったそうだから、全部じゃないんだよね~」

「なるほど」


全部が江戸時代の建物ではないものの、それでも江戸時代の建物はあるんだ。


「それはいいとして、目的地へいくよ~」


空さんはそう言って、古い町並みの通りに入っていくけど目的の酒蔵は近くにあった。


「ここだよ~」

「2軒向かい合っているんですね」

「うん、もちろん両方行くよ。でも、試飲できないのが辛い……」


空さんはそう言うと、高かったテンションが下がるけどまず最初に向かって通りの左側の酒蔵に入る。


「お店の前に何かぶら下がってますが、これは何ですか?」


初日に寄った酒蔵にもあったけど、軒に丸い物がぶら下がている。


「これはね、杉玉と言って冬に新酒を仕込む時に新しい物をぶら下げるんだけど

杉玉が青い時は新しいお酒が出来ましたと言う合図。

そして段々と色が茶色になっていくけど、これはお酒が熟成されましたって合図なんだよ~」

「なるほど、そんな意味があるんですね」


杉玉の色で新しいお酒やお酒が熟成されたと知らせると面白いな。


「そうだよ。今は夏だから、熟成されたお酒の時期だけどにはまだ早いかな~」

「ひやおろしって何ですか?」

「ひやおろしはね、熟成されたお酒のことだよ。大体秋から売り出されるけど

冬の新酒、秋のひやおろしと日本酒は季節によってたのしめるんだよ~」

「そうなんですね」


一口にお酒といても、そんな楽しみ方があるんだ。

わたしたちはまだお酒は飲めないけど、飲めるようになったら空さんとお酒を飲みたいな。


「わたしたちがお酒を飲めるようになったら、空さんと飲みたいです」

「わたしもだよ。それまでまてってるからね。それじゃ、どのお酒を買おうかな~」


空さんはそう言って、お酒を選ぶ。

わたしたちはお酒を飲めないし、お土産に買っても内の親は日本酒を飲まないからお土産にも買わない。


「そこに休憩する場所があるから、そこで待ってましょ」

「そうだね」


囲炉裏を囲って腰掛があるので、そこに座って待つけどその横ではお酒以外の物、

サイダー、酒粕を使ったチーズケーキやアイスなどが売っていた。


「なんか、サイダーかケーキを買わない?」

「ケーキはいらないけど、熱いからサイダーは飲みたいわね」

「わたしも~サイダーが飲みたいかな~」

「それじゃ、サイダー3本を買って来る」

「もしかして、文乃のおごりなの?」

「もちろんだよ、これぐらいおごるよ」

「文乃がおごるなんて……嵐の前触れかも……」


温海がそいうけど、1本200円ぐらい出しますよ。

ただ、温海が言うとおり2人におごる事は確かにないけど。


「たまにはいいでしょ。お金を払って来るから」


わたしはお金を払うと、2人にサイダーを渡してこの場で飲む。


「う~ん、おいしね~」

「歩いて来たから、丁度いいわね」

「だねー」


歩いて来たから、サイダーがおいしい。

その地方限定のサイダーだけど、なんかおいしよね。


「みんなおまたせ~」


サイダーを飲んでいると、空さんがお酒を買ってこちらと来た。


「2本買ったんですね」

「そうだよ。夏限定のお酒と、冷やさなくても多い酒を買ったよ~」

「夏限定のお酒もあるんですね」

「うん、さっぱりしたお酒で、この次期だけしか飲めないからね~」

「お酒は1年中楽しめるんですね」

「そうだよ。冬は絞りたての新酒、夏は夏用にさっぱりしたお酒、秋は熟成したひやおろしと同じ酒蔵でも、1年楽しめるよ~」


お酒の事はよくわからなかったけど、空さんの話を聞くと興味がでる。

ただ、まだ飲めないけど。


「お酒はまだ飲めないから早く飲みたいな~」

「あと4年待たないとね」

「まだそんなあるんだ。そういえば、酒蔵の中っていい香りがするよね」

「確かに、甘い香りがするわね」

「ああ、それ跳ね麹の香りだよ。今の時期はお酒を仕込んでないけど、古い酒蔵だから香りが残ってるみたいだね~」

「そうなんですね」

「日本酒は麹菌をお米につけて作りますからね」

「温海ちゃん詳しいね~」

「そ、そうでもないですよ」


温海は少し頬を染めて照れるけど、顔は嬉しそうだ。


「冬に来ると酒蔵見学もできるから、冬にも来たいかな~」

「そうなんですね」

「冬は来れないわよ」


間髪入れずに温海がこういうけど、今年の冬ぐらいはいいと思うけどな。


「今年ぐらいいいじゃない」

「わたしだって旅行はしたいけど、そうもいかないのよ」

「2,3日ぐらいいいでしょ。夕も行きたいでしょ?」


わたしは夕に振るけど


「はははは~温海ちゃんが~行くならいけどん~」


と言われてしまった。


「く、作戦失敗か」

「夕はその手には乗らわないわよ」

「く、これが愛の力か」

「な、何言ってるのよ……ま、そうだけど……」


温海はまた顔を赤くしてそう言うけど、のろけですか。

まぁ、恋人同士だからのろけても仕方がないけど。


「もし行くなら、また付き合てもいいけど無理そうだね~」

「そう簡単に諦めるわたしではないです。まだ半年近くありますから」

「それだけあれば諦めさせるわ」

「こればかりは負けないよ、温海」

「望む所よ」


わたしと温海は冬の旅行にかけるが、夕は


「空お姉ちゃんは~向かいの酒蔵にいったよ~」


と言うのだった。


「そうなんだ。それじゃ、行かないと」

「飲んだ空き瓶を置いてくるわ」

「あ、わたしも飲み終わったから置いてくる」


わたしと温海はサイダーの空き瓶を空き瓶置き場に置くと、空さんが先に行った向かいの酒蔵へと向かった。

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