第25話 空さんは文乃が知らない夕の事を話す
「それじゃ、最後の夜に乾杯だよ~」
「乾杯~」
「乾杯……」
空さんとグラスを合わせるが、もちろんわたしと温海はお酒じゃないよ。
あと、何で乾杯をしているかというと、夕は寝室のベッド似ていて起きる気配が全くない。
夕は1度寝たら温海以上に起きないので、仕方ないので空さんが
『最後の夜だから、一緒に飲むよ~』
と言って、こうなった。
「うーん、流石高級ホテルの一番高いお酒であって、おいしいね~」
「100%ぶどうジュースと言っても、全然違います」
「ワインで使うぶどうのストレートジュースだから美味しいわよ」
「そうなんだ」
「わたしとしては、ワインの方がいいけどね。でも、わたしもちょっと味見したいな~」
空さんはそう言うと、私のグラスを手に取って口をつけるけどこれはいわゆるあれですね。
「うーん、確かにおいしい。ワインじゃなくてもいいかもね~」
「ワインの味はわかりませんが、とてもおいしいですよね」
「だよね~」
空さんはそう言ってグラスをわたしに返すけど、あっさすぎませんか。
空さんの事だから『間接キスだね~』と言って、茶化しそうだけど
空さんはそのままお酒を飲んで、ルームサービス(これも込み)で頼んだおつまみを
食べてお酒を飲んでニコニコしている。
「……ねえ、温海、ここはわたしから空さんに間接キスですよねって言った方がいい場面かな?」
わたしは温海に聞くと
「あ゛?」
と温海が普段出さない声でた。
「温海さん、そのようなお声をお出しするのははしたなくてよ」
「ご、ごめん、げっぷが出そうだったから……。でも、そのキャラは何?」
温海が飲んでいるのはスパークリングジュースだから、げっぷを我慢したみたい。
「そうだったんだ、たまにはお嬢様キャラでもいいかなって。でも、そっちのスパークリングもおいしそうだね」
「何よそれ。飲むなら自分のグラスに注ぎなさいよ」
「わかってるよ。あと、間接キスの件はどうだと思う?」
「あたしに聞かないでよ。答られる訳ないでしょ」
「それもそうか。でも、ここは空さんがキスから、キスする流れじゃないかって」
「知らないわよ。それに、空さんがキスをすると思うの?」
「夕が言うには、酔うとキスをすると言ってからワンチャンあり?」
「だとしても、文乃としてはどうなの?」
「まぁ、悪くはないかな。減る物じゃないし」
「減る物なのよ。というか、文乃はファーストキスはまだじゃないの?」
夕とした事はしたけど、あれは数に入るのかな?
「夕とキスをしてると言えば、してるけど数に入れてもいいのかな?」
「し、知らないわよ。文乃が入ると言えば入るし、入らないと言えば入らないでしょ」
「それもそうか。で、温海としては夕とわたしがキスした事はどう思うの?」
「別にどうも思わないわよ、夕だし」
「何ですか、その余裕は」
「余裕ていうか……夕はあたし一筋だし……」
温海はそう言って顔を真っ赤にするが、それを見た空さんは持って来たステッチブックで温海の顔をさっと描いた。
「赤くなっている顔もいいわね~」
空さんはそう言って、描いた絵を見てニコニコしている。
「空さん、見せてもらってもいいですか?」
「いいわよ~、温海ちゃんも見る?」
「あ、あたしはいいです……」
「そうか、それじゃ文乃ちゃんだけに見せるね~」
空さんはわたしに描いた絵を見せてくれるけど、空さんのタッチで描かれた
温海の顔は本人の特徴をとらえつつも、少しデフォルメしてラブコメ的なキャラでかかていた。
「いかにもラブコメに出て来るツンデレキャラですね」
「でしょ~元がかわいいし、ツンデレだからそのままキャラとして出せるよ~」
「ですね」
わたしと空さんが話してるの聞いてた温海は、目線を逸らしてジュースを飲みつつ
顔を赤くしながら少し顔がにやけていて、内心では喜んでいる。
「喜んでるの隠してるのもまたいいでよね~」
空さんは小声でそういうと、わたしも頷く。
「ところで、文乃ちゃんは夕ちゃんとキスしたの?」
空さんはさっきのやり取りを聞いて質問したので、夕とのキスを話をした。
「そうか~夕ちゃんも案外キス魔で、親戚の女の子はわたしも含めてしてるからね~。
もっとも、わたしは酔って何度もしてるけどね~はははは~」
と言って笑った。
「そ、そうだったんですね」
「そうだよ~うちの一族は基本キス魔みたい~。ただ、夕ちゃんのお父さんの飯塚側はどちらかというと、お堅い感じだけどね~」
「そうなんですね」
「ほら、飯塚家って元は大地主で地元の名士だったからね。でも、おじさん……夕ちゃんのお父さんは堅そうで、結構遊び人だったけどね~」
「な、なるほど」
「夕ちゃんが男の子ぽい所があるけど、みんなおじさんが男の子がする事をさせてたしね~」
「それは夕から少し聞いた事あります」
「そうなんだ。でも、性格は子供の頃からほんわかしてたし、服装を見てもガーリーな感じから不思議だよね~」
「あと、なんていうか、ママって感じがあります」」
「そうそう、夕ちゃんってわたしより、ママ感あるよね~」
空さんはそう言ってお酒を飲むけど、グラマラスな空さんであるけど
陽気なお姉さんって感じでママ感はない。
一方、夕は16歳にして20代半ばの夕さんよりもママ感がある。
理由は多分、包容力だと思うけど、空さんも顔や雰囲気は夕と似てはいるけど
夕には租サランにはない独自の包容力を感じるんだよね。
「何で夕は包容力を感じるのでしょうね」
「夕ちゃんは元はお父さん子で甘えん坊なんだけど~」
「そうなんですか?」
「そうだよ~今は流石にあの胸もあって、おじさんにくっつことはないけど
昔はおじさんによくくっつたし、中学のころまでは一緒にお風呂に入ってたぐらい」
「そうなんですか」
わたしがお父さんとお風呂に入ってたのは10歳になるかならないかだったから
中学……すなわち2、3年前まで一緒に入ってたって事だよね。
夕の胸は中2で急に大きくなったそうだけど、中学の何時まで入ってたんだろう。
「あの、夕は中学の何時まで一緒に入ってたんですか?」
「ん~夕ちゃんが言うには、中2の春って言ったから胸が急に多くなる前かな」
「そうなんですね」
流石に胸が多きくなる前だったよね。
「中2の時点ではBカップあるかないかぐらいだったけどね」
「それでも、それなりにありますね」
「おじさんは中学になったからやめなさいと言ってはいたけど、どうも中2の時に学校で変って言われたから入らないくなったみたいだよ~」
「わたしも10歳ぐらいから入らなくなったので、変と言わなくてもそれとなく行ったと思います」
「わたしも、言ってはいたけどね~」
空さんもやはり中学生で一緒にお風呂は変とは言ってたそうだ。
「なんか酔ったせいで、夕ちゃんの事を勝手に話しちゃったけど、内緒だからね?」
「もちろん内緒にしておきますよ」
「信じてるからね、文乃ちゃん」
「大丈夫ですよ、口は堅いですから」
「もし話したら……その口を塞いじゃうぞ」
空さんはそう言って顔を近づけると、わたしの唇に口を近づける。
空さんは夕に似てるけど、年上だけあってやはり大人の雰囲気がある。
酔てすこし赤らんだ顔が、なんか大人の色っぽさを感じるのかも。
唇同士の距離はどんどん縮まって、わたしの鼓動が早くなる。
そして、空さんの息を感じるぐらい近づき、あと少しで唇がくっつく所で
「なんて~キスすると思った?」
といって、空さんが笑ったのであった。
「もう、期待したじゃないですか」
「冗談だよ~いくらキス魔でも、流石に口と口ではしないよ~」
空さんはそう言ってまだまだ笑っているけど、わたしもちょっと……
いや、かなり残念と思いつつも、安心している自分もいる。
頬ぐらいならスキンシップと思っても、口は流石にね。
もし、ここでキスをしたら……なんか空さんを意識しちゃう気がするし
ファンと推しが付き合うのはやっぱりだめだよ!
でも......空さんには夕にはない大人の色気があり、わたしの鼓動はまだまだ速いままであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます