第10話 視界の先には……
話しが解決したのか、リーラの言葉を最後に一瞬だけ沈黙が場を支配した。
エルダは何を言いたげではあったが、その言葉はリーラに届くことはない。何故ならば、瞬時に転移魔法を発動して大河と共に姿を消してしまったからである。
「くぅ~っ、やられました! ずるいです!」
リーラと大河の姿が消えたのを確認した瞬間に、テーブルを叩きながら悔しがり始めたエルダを横目にラムルフは苦笑した。
「別に今日じゃなくてもいいだろ。ワタシたちみたいに体力ないんだから一日中子作りするなんて無理なんだしさ」
「……先に手を出した人は黙ってて下さい」
「あれが本能なんだから仕方ない、というかお前も混ざってただろ」
「混ざってましたけどぉ……」
ラムルフとエルダの会話が横で流れる中、ラムルフの隣に立っていたクォーミァがラーインに向かって驚いた表情を浮かべていた。
「妖王が凄い発情してた。とても珍しい」
「そうだな」
「獣王は? 譲って良かったの?」
「ワタシは明日一日中ヤるからいいんだよ」
「獣王様までわたしの番を
「
「精霊樹にですか? どうして――――」
「どうしてって……タイガはラムルフを孕ませたんだぞ?」
獣人は他の種族と違って、子が出来やすい。
しかしその凄まじい性欲に耐えきれる存在は同種以外にいなかった。
強靭な肉体、無尽蔵な持久力、まさに獣のような性欲。発情すればその全てを持った存在が互いを貪り食らうように交わるのだ。
まぁ、つまり何が言いたいのかと言うと……
「もしもタイガがワタシたちで本気で興奮する希望なら……リーラなんてすぐにイかれちまうぞ」
◆
羽毛のように柔らかく、低反発するクッションのような弾力性。
今まで触れたことがないようなほど心地良い場所へと、ストンっと落とされたことは理解できた。
「どうですか? 体調が悪くなったりとかしませんか?」
「い、いや、それはないけど……ここどこだ?」
さっきいた場所とは一気に雰囲気が変わったように感じる。
感覚的には、神社とか寺……そういった場所の神秘さのようなものだ。
「ここはエルフが祀る〝精霊樹〟。その中にあるエルフのみが入ることが出来る聖なる空間です」
「精霊樹……聖なる空間……」
何やらファンタジーな響き……。
ただ今までと違い、見たいという意欲はあまり沸いてこない。
というよりも、見てもいいのだろうか? という疑問が好奇心に勝ってしまった。
「さぁ、タイガ様。あなたの〝願い〟はなんですか?」
「急に? そうだなぁ、願いは……この目隠しと縄から解放されることだな」
今もなお、力を入れることすら出来ない不思議な縄で両手両足を縛られ、ほとんど光を通さない肌触りの良い目隠しをされている。
それでも不自由なこと以外に不便がないってことが不思議だよな。
トイレの時は……まぁ、もう恥ずかしさなんてなくなったよね。
もう全裸見られてるし? 見られて困るもんなんかないし?
「……分かりました」
肌と布が擦れるような音が聞こえ、クッションが少し沈む。
「あなたの〝願い〟を叶えましょう、その対価にわたしの〝祈り〟を叶えてください。あなたの〝誓い〟を聞かせてください、その約束をわたしが〝結び〟ましょう」
ぴたりと、頬に張り付く冷たい手の平の感触に体が反応する。
「今、あなたに魔法を使いました」
「おいおい、どんなだよ」
「あなたが約束を守らねば、わたしの体の記憶を失う魔法です。体と言ってもエルフの姿を忘れるだけですがね」
「つまり……?」
「先ほど仰っていた〝目隠し〟と〝縄〟からの解放……それを叶えましょう」
「えっ! ホントに……良いのか?」
「あなたの言葉を信じます」
どのような動作をしているのか刃物などは浸かっていないようだが、徐々に縛っている縄がゆるんでいく。
違和感すらも感じなくなったおかしかった姿勢が整っていき、指先や足先に力が行き渡る。なんだか体が動くことが嬉しくなってきた。
「……目隠しは?」
「御自身で――――お願いします」
「よっしゃきた」
目元に触れて目隠しを下からゆっくりとめくり上げる。
3日間以上も光を見ていなかった瞳には、微かな光すらも痛みとして伝わってきて信じられないくらい視界がぼやけているが――――
「うわぁ……」
目の前のエルフがどれだけ綺麗なのかは、はっきりと脳みそが理解していた。
「なんだよ……」
痛みで潤んできた目を擦り、改めて焦点が合った時。
大河の瞳には、世界に一人でもいたら奇跡とまで言えるほどの美女が、とんでもなく薄くエッチな服装で現れた。
「(めちゃくちゃキレイじゃんか――――エルフ)」
人工的に作られた白ではなく、自然に作られた完成された白。
それは、ほとんど光が差していない空間で強調されるほど美しいものだった。
髪の毛一本一本すらも微かな光に反射して確認できるほどで、黄金と自然をかけ合わせたような宝石ような輝きを放つ瞳は強烈な印象を抱かせる。
神々しい、というのはこういうことを言うのだろう。
「……どうか、しましたか?」
それに目を奪われるのは見た目だけではない。
この世の男を魅了することが出来るほど――実った肉体。
見ただけで先から汁が溢れそうな、体感したことがないエロスを放っている。
「タイガ…様?」
「あっ、え、いやぁ……あはは」
かくいう大河も、これほどまでに男を刺激する女性に出会ったことがなく。リーラの言葉に何を返していいのかと、思考停止した。
「やはり、亜人はお気に――――」
「違う違う! そうじゃなくて……あーっと、なんて言えばいい? やばい、興奮して脳みそが動かねぇ……!」
この世界の人族は亜人と魔人を、容姿が自分たちとは異なるから気味悪く思っている――とエルダから聞いた時には既に確信はあった。
俺の世界に描かれ、存在していた……
魔法が得意な耳の形が少し変わっただけの絶世の美女であると。
でも、実際に見てみればそこまで綺麗じゃないと心のどこかで思っていた部分も少しはあった。だって理想は理想だから。
だけど
意識を混乱させるほどの美貌とエロス――――
「あっ」
体が反応しないわけがなかった。
「これは……お気に召して頂いた、ということで――」
「……間違いないです」
「ふ、ふふ……良かった、良かったです……」
表情が見えないくらい俯いては、ポタポタとこの沈黙を表すかのように涙をこぼすリーラを見て。大河は一瞬にして理性を取り戻した。
「そ、そんなにか……?」
「それはもう……この長いエルフの寿命の中で、一番嬉しいことかもしれません。いや……もしかしたら、これ以上喜びや希望を感じることはないでしょう」
涙を流す姿すらも美しく、喜びを表情に浮かべる姿は触れたら壊れてしまうようなほど儚げ、小さな動作ですら揺れ動くもったりと柔らかい双峰は辛うじて取り戻した理性を再び解放しようと迫ってくる。
「人族との関わりを持って早十年、エルフにとっては気がつけば過ぎている年数ではありますが…………色々なことがありました」
家族が死んだ。
友達が死んだ。
子供が死んだ。
その全てが、人族の科学の
人魔大戦の時は毎日が地獄だった。
大戦が終わり、勝利し、全てに決着をつけた後も……地獄は続いた。
人族たちの味方をした〝神〟と呼ばれる存在のせいで亜人・魔人たちは絶滅を迫られたのだから。そのおかげで人族へ精の提供を申し入れ、子孫繁栄を望んだものの姿が形が色が違うという理由で散々な目に会ってきたし、それは日に日に増してきている。
「エルフとして生きてきた中で最も長く辛い十年だたったと言い切れます。ですが、こうしてタイガ様が来てくれて……救われた気がします」
エルフの寿命は亜人で最も長い、最長で2000年も生きた者がいるほどだ。
大河はまだ知らないがエルダだって140年は生きているし、目の前にいるリーラなんかは300年も生きている。
そんな長い時間を生きる者から〝一番嬉しい〟と言われたことが、どれほどのものなのかなど……大河本人も到底理解できないていないだろう。
「わたしを見ても嫌な顔を一切しなかった。それだけではなく、この……大っきくなったモノ。実物を見なくても分かる大きさとこの嗅いだこともない、いやらしい匂い……クォーミァが言っていたことも頷けます」
すらりとした細長いリーラの指が、ズボンを突き破らんとしている肉棒の頂点をつんっと触れる。
「お、おい」
その後、リーラは大河の様子を伺いながら一回、二回、三回と夢中になっていくように触れ始める。
当然、大河の体は小さく反応を見せる。足が動いたり、腹筋が固くなったり、呼吸が荒くなっていく……大河は無言で耐え、リーラは夢中になって大河の体に触れていくと同時に先程までシリアスだった雰囲気が一変した。
「こんなに雄々しくなるなんて…………どうですか、タイガ様」
「……?」
つんっと再びリーラが体に触れると、大河が漂流時から履いていた耐水性の少しぶ厚めなフィッシングパンツが光の粒子となって消失した。
「え、俺のズボ――――」
「タイガ様。わたしはラムルフと違って目隠しや拘束などしてませんよ?」
リーラの来ている服もまた光の粒となって消え、薄暗い空間にほのかに光るエルフ特有の白い素肌が露わになった。
そして四つん這いになったリーラが大河へと近づくと、どんな形にでも変形してしまいそうな柔らかすぎる爆乳が大河の肉棒へぶつかった。
「…………」
「タイガ様の意思で――――わたしを孕ませたくなったり……しませんか?」
先程まであった少しの理性が、リーラという存在によって容易くぶち壊される。
次に大河がちゃんと理性を取り戻し見た光景は――――リーラだけではなく、エルダを含む数名のエルフたちの股から白濁とした液体が溢れこぼして抱きつくように寝息を立てている光景だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます