Que sommes-nous ?

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「あんたさ、嘘吐きながら生きるのやめた方がいいと思うよ」

 出し抜けに彼女はそう言った。初対面の人間に言うような言葉でないことは確かだけれども、その言葉が指している「嘘」について、私には心当たりがあって心臓が跳ねる。きっと、探偵に指をさされた犯人というのはこういう気持ちなのだろう。最悪な気分だ。これからも殺人はしないままで生きようと思えた。

「どういうこと?」と一応惚けてみる。けれど、彼女は怠そうに溜め息を吐いて何も答えなかった。その沈黙こそが、答えなのだろう。彼女は私のことを見透かしている。

 私はそうして彼女の興味を持った。いや、興味を持ったというよりも話をせざるを得なくなった。私の嘘は、知られてはいけないものだから。

 それが久我夏目との出会いだった。

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