フェニックス

 事前情報

 以下にフェニックスの捜索、観察にあたり、必要と考えられる情報をまとめる。



 前提情報について

フェニックスは言い伝えと極少数の目撃情報にて存在を確認されている大型の燃える鳥である。基本的に飛ぶ姿が目撃されており、飛んでいない目撃情報は極めて稀である。しかしながら、勇者伝記とやらにフェニックスを含め様々な魔法生物の名称があり、それにより知名度自体は高い。


 他、文献などから得られた情報は以下の通りである。


情報源が曖昧なもの、伝説など

 ・不死の伝説があり、不死鳥とも呼ばれる。

 ・蘇る際には火に飛び込むと言われている。

 ・フェニックスの羽で火をつける登山家のおとぎ話がある。

 ・おとぎ話の中ではフェニックスの羽は白く美しいと書かれている。


情報源が明確なもの、研究記録のあるものなど

 ・燃える鳥である。

  燃えながら飛ぶ様子も確認されている。

 ・非常に大きく、翼を広げた時の大きさは数mある。

 ・魔法を使い、炎を飛ばす等の攻撃を行う。

 ・川辺に焼けかけた羽が落ちていることがあり、

  フェニックスのものでは無いかと言われている。

 ・羽は殆どが白だと記録されている。

 ・実際に拾われた羽で、おとぎ話の再現を試みたが火は点かなかった、という検証例がある。



 情報の多くは焼けかけた羽と伝説だった。研究なども羽が見つかったという内容ばかりだ。よっぽど警戒心が強いか、見つけられない場所に隠れているのか。役立ちそうな情報は多くない。


 だが、羽から推定できることがある。


 鳥には水浴びを行う種と砂浴びを行う種が確認されている。フェニックスは燃えるという特性上どちらを行うにしろ消火されるタイミングがあるはず。更に、砂地で羽が発見された前例は無く、水辺に燃えかけの羽があることから、火がついた状態で水浴びをし、消火する生態があるのではないだろうか。

 そして羽の色から、燃えていない状態のフェニックスは大型の白い鳥であると推定される。


 これを一つ目の手掛かりとして調査を開始したいと思う。




 調査のきっかけについて

今回、フェニックスの捜索を開始することになったのは目撃情報を入手したからだった。山岳地帯のとある家の住民が豪雪の日に、燃える鳥を確認したとの報告を受けた。本人から詳細な情報を得るために研究所に当該人物を呼び出し、聞き取り調査を行った。



 目撃者の証言を一通り纏める。


 ・一つ目、我々は本当に鳥であるのかと言う確認を行った。彼は確実に鳥が羽ばたいている様子であったと言った。それが事実であるならば燃えていると言う状況も合わせて、フェニックスの可能性は高い。


 ・二つ目、どちらの方向に飛んでいったのかと聞いた。山の地理には詳しくないが、凡そ南東の方向に飛んでいったとのことだ。分からない者が多かったため、地図での説明を求め、飛んだであろう道筋を書き込んでもらった。緩やかに、と言うよりも遠回りで高地から低地に移動しているようにも見える。


 ・三つ目、今までフェニックスらしき何かを見たことはなかったのか確認した。見たことがなかったと返答したため、私は疑問に思った。生物の生息地域が変わった可能性は考えられる。だが、気候変動や地形の変化等、急激に生息地域を変える原因となり得る情報は無い。


 生息する鳥の種類がヒントになるのではないかと思い確認すると、当たり障りのない野鳥が挙げられるばかりだった。その中で気になったのは鷹のように旋回する大型のカラスの話である。昔からその山に住んでおり、どうやら魔法を使う特殊個体らしい。このカラスが生息地域の変化に関わった可能性もあり、大変興味深い内容であったので、今回のサブターゲットとして狙っている。


 他の情報もあったが、有用であると判断できる範囲はこの程度である。



 実のところ、この山でフェニックスの報告があったのは初めてだ。この人物の情報も信憑性が高いとは言い難い。しかし、報告内容に一定以上の具体性、一貫性があると判断できることから調査に踏み切った。


 以上が調査開始に至るまでの経緯である。




 現在、調査のための人員確保に少々手間取っているらしい。研究所側が人を集めるというのでそれを待っている状況だ。すぐにでも動き出したいところではあるが、満を持すというのも悪くないだろう。


 今は気長に待つこととしよう。



 勇者暦7■■年

 3代目 《極端な勇者》

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