魔法生物観察記録

しなりをひじき

はじめに


 これは魔法生物を観察して得られた情報についての記録と、その考察を纏めたものである。主に、絶滅危惧種の可能性がある魔法生物を保護する目的のため、地名や具体的な日付等は伏せて記載している。多少見にくい箇所もあるかもしれないがご容赦願いたい。



 まずはこれを読む方々のために自己紹介をしよう。

 私は、クルズ帝国直轄ちょっかつ研究機関 総合研究所「みちいろ」の魔法生物及び魔法微生物研究室 室長、《極端な勇者》である。専門分野は魔法寄生生物、特に線虫を得意分野と公言している。


 聖書によれば私は定住が望まれないらしいが、現在諸事情によりクルズ帝国に席を置いている。いや、この世界の住人にとっては聖書の内容は常識だろうから書く必要はない。それでも、わざわざここに書きたくなるのはきっと、私のささやかな反抗なのだろう。


 余談はさておいて、この記録についてだ。

 この記録は私が室長になったことをきっかけに始めたものである。何故これを書いているかといえば、今後の情報量の増加に対応するためだ。今までは、フィールドワークも魔法寄生生物の観察も私一人である程度管理できるものであったが、これからはそうはいかない。魔法生物全体の研究に携わる以上、私一人で対処できるような事案や研究は少ない。頭は悪くない自負があるが、全てこなせる天才だとは思っていないのでね。


 そこでここに、私が携わった研究についての記録を残すことで、情報の整理を行う。考察や私の私情が入っているのは半分日記のつもりで書いているからだ。読み飛ばしてくれるとありがたい。



 私の室長としての最初の任務はフェニックスの捜索だと前室長から聞かされている。大型の魔法生物の研究観察は初めてだからあまり上手くいく自信はないが、興味はある。伝説上の生き物を一目見たいという心は、誰もが持つ童心だ。私も例外ではない。


 これからその情報収集を行う予定だ。早ければ一週間以内には動き出せるだろう。

 

 初めての室長としての仕事に、これを書きながら既に緊張している。せめて、大きな失敗はしないよう尽力したい。



 勇者暦7■■年

 3代目 《極端な勇者》





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