第3話 思い残しのやり直し

「秀君学校行こ~」


「ああ。今行く」


 朝、理奈はいつも俺を迎えに来てくれていた。

 忘れてたけどそういえばいつも迎えに来てくれていた。

 そういう所も俺は好きだったんだけど最終的に金に目がくらんでしまった。


「なんでそんなに暗い顔してるの?」


「そんな顔してた?」


「うん。相当に暗かったけど何かあった?」


「ないない。ちょっと眠くてさ」


「また夜更かししたの~?」


「そんな感じ」


 他愛もない会話が懐かしい。

 俺はこの日々が大好きだ。


「また手をつないでもいい?」


「え!?ま、まあいいけど」


「ありがと」


 許可を取ってから理奈の手を握った。

 やっぱり理奈の手は暖かくて柔らかかった。


「秀君最近私と手をつなぎたがるよね?なんで?」


「なんでかな?理奈のことが好きだからかも」


「ひゃえ!?す、すすすす好き!?」


 理奈はとても動揺しながら顔を真っ赤にしていた。

 こんな理奈を見るのは昔の経験を踏まえても初めてかもしれない。


「ん!?」


 あれ?

 今の俺の言い方まんま告白じゃないか?

 自分の発言を思い返して動揺していると理奈が声を上げる。


「えっとその好きって友達として見たいな?」


 理奈は俺の目を見ながらそう聞いてくる。

 迷った。

 それはもう大いに迷った。

 正直に答えればいいのかごまかせばいいのか。


「いや、それももちろんあるけどこの好きはその、異性としてのだ」


 ごまかす必要なんかない。

 俺はそれで後悔してるんだから。

 これからは正直に生きていけばいいんだ。


「え!?それ本当!?」


「こんなことで嘘なんてつかないよ。俺は人の心を弄ぶような屑になった覚えはないぞ?」


「いや、それは知ってるけどさ。でもなんだか信じられなくて」


「確かにロマンのかけらもない告白だったからな。なんかごめん」


「え!?いや、謝る必要はないっていうか!?うれしいっていうか」


 顔を真っ赤にしながら理奈はあたふたしてたけどそれから少しして落ち着きを取り窓してから言った。


「私も同じ気持ちだからうれしい」


 声は次第に小さくなっていったけど理奈は気持ちを伝えてくれた。


「えっと、改めて天道理奈さん俺と付き合ってくれませんか?」


「ふふふっ。なんか改まって言うと恥かしいね。でも、こちらこそよろしくお願いします。秋宮 秀人さん」


 朝の登校中に手をつなぎながら何のロマンもない場所で俺たちは結ばれた。

 一度目の人生では経験できなかった幸せ。

 お金なんてどうでもいい。

 隣に理奈がいてくれるのなら俺はもうそれだけでいい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る