第2話 もう絶対に間違えない

「起きて!秀君」


 誰かに体を揺さぶられてる。

 それになんだか暖かい?

 俺は確か真冬に公園で寝てたはず。

 それにこの声、俺のことを秀君と呼んでいた人間は一人だけ。


「理奈?」


「やっと起きた!そうですよ~君の可愛い可愛い幼馴染の天道理奈様です!」


 胸を張りながら理奈はそういった。

 長く綺麗な金髪に大きな緑色の瞳。

 俺が知っている理奈その人だ。


「えっと、なんで理奈がここに?」


「まだ寝ぼけてるの?もう学校終わったよ?一緒に帰ろ!」


「は!?え?学校?」


 学校なんてもう何年も前に卒業したはずなんだけどな。

 でも、理奈は目の前にいるし俺は制服を着てるしおまけにここは学校だし。


「そう学校。そろそろ私達も卒業なのに秀君ったら居眠りはずっと治らなかったね」


「あ、ああ。そうだな。もうそろそろ卒業か」


 外を見れば雪が降っていた。

 暖かいと思ったのは純粋に室内だからだったのか。


「そうそう。秀君も私ももう大学は決まってるし後は無事に卒業するだけだから居眠りしたくなる気持ちもわかるけど」


「そう、だったな」


 確か、俺は高校三年生の二学期の終業式に二人に告白された。

 勿論同時というわけじゃない。

 先に理奈に告白されて気持ちの整理をつけたいといって保留にしたらあいつに告白されてあいつと付き合ってしまった。

 もしこれが、創作などでよくあるタイムリープなのだとしたら俺は。


「そうだよ~まあ帰ろうよ。雪も降ってるしそろそろ真っ暗になっちゃうよ?」


「だな。一緒に帰ろうか」


 俺は立ち上がって自然と理奈の手を取る。


「ひゃっ!?なんでいきなり手をつないでくるの!?」


「ごめん。なんか理奈と手をつなぎたくなってさ。ダメだったかな?」


「だめ、じゃないけど。秀君がこんなことしてくるの珍しいね」


「かもね。でも、理奈の手暖かい」


「秀君の手が冷たすぎるんだよ」


「そうかな?そうかも」


 この手を離したくない。

 もう一度やり直せる機会を与えられたというなら俺は理奈と一緒にこれからを歩んでいきたい。

 勿論理奈は覚えてない、いや、知らないだろうけど俺は一度間違った。

 だから、俺は今度こそ間違えない。

 もう決して理奈を泣かせるようなことはしない。


「なんか今日の秀君変だよ?なんかあったの?」


「別に何もないよ。さっき少し悪い夢を見たくらい」


「そう?ならいいけど」


 過去のことが夢だなんて思っていない。

 でも、今の現状が夢だとも思えない。

 つないでいる手から伝わってくる理奈の体温が何よりの証拠だ。

 もうこの手を離すようなことはしない。

 絶対に。

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