もう一度あの頃に
夜空 叶ト
第1話 ただ一つの思い残し
「俺はどこで間違えたんだろうな」
真冬の公園で段ボールにくるまりながらふとそんなことを考える。
考えたって意味のないことだとはわかっていても考えずにはいられない。
「高校時代にあの女と付き合ってしまったことがそもそもの間違いだったのか」
高校時代告白をしてきてくれた女の子が二人いた。
片方は大金持ちの令嬢だ。
もう片方はずっと一緒にいた幼馴染だ。
「あの時、金に目がくらんであいつを選んでなければもう少しはましな生活を送れていたのかもしれない」
後悔しかない。
人生の一番大きな分岐点であり人生の汚点だ。
「まあ、今更こんなことを考えてもどうにもならないか」
段ボール一枚にくるまって寝てるから寒すぎる。
雪も降り始めてきた。
いよいよ死んでしまうかもしれない。
思い返してみれば俺の人生何にも良いことなかったな。
あいつと付き合って高校卒業前に陥れられた。
「金に目がくらんであんな腹黒女を選んじまった時点で俺の人生は詰んでいたのか」
後悔はやっぱり絶えない。
ああ、なんだか眠たくなってきた。
手足の感覚もあやふやで震えが止まらない。
音も聞こえなくなってきたような気がする。
ただただ寒い。
「あはは。やり直せるなら俺はあいつを選ぶのに」
幼馴染。
天道
恋愛的に好きかと聞かれれば好きだったと思う。
でも、俺は金に目がくらんでしまった。
彼女の気持ちを踏みにじってしまった。
「なんて、言うのはいくら何でも自己中かな?」
もう限界が近い。
瞼が重い。
命の灯が消えていくのが分かる。
「最後に、あいつに、理奈に謝りたかったな」
思い残すことはそれだけ。
でも、それが叶わないことは誰よりも一番俺が知っている。
「はは、最後の最後までみっとも、ねぇな、」
最後に自嘲を一つこぼして俺の瞼は完全に閉じられた。
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