第51話 シーホースは馬刺しより不味いのか?



「いらっしゃいませぇーい!」



「あの、一人で……」



「かしこまりましたぁー! こちらへどうぞぉー!」



 こんにちは、ヘンリエールです。

今日は休日を利用して、イザヨイにある大きな湖に遊びにやってきました。

まあ遊びにというか、この湖付近でしか食べられないとある料理を食べに来ただけなんですけど。



 〝湖鮮料理・忍琶〟



「ご注文お決まりですかぁ~?」



「えっと、イザヨイ酒……この『葉隠れ』ってやつをひとつと、マスと湖草のカルパッチョをひとつ、あと……シーホース刺しをひとつ」



「かしこまりましたぁ~!」



「ふう……」



 そう、今回のわたしの目的は『シーホース刺し』を食べること。

シーホースはこの湖に生息している馬型の水棲魔物で、死ぬとすぐに肉が傷んでしまうため、わたしが暮らしている地域の方までは冷凍したもの以外は流通しない貴重な食材。

それがなんと、この忍琶というお店では生肉をお刺身として食べることが出来るのだ。

魔物肉の中でもクセがなくて美味しいと評判なので、今回は思い切って食べに来たってわけ。



「ヒッヒヒィ~ン!!」



 サッバアアアアアン!! バシャバシャバシャ!!



「…………」



 席の窓から見える湖の中を、シーホースが飛び跳ねながら泳いでいた。

これからあれを食べるのかあ……



「こちらお先にお飲みものとカルパッチョになりまぁ~す!」



「あ、ありがとうございます」



 よし、まずはサラダと地酒のチェックから……



「森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……」



 …………。



「う~ん! 美味しい!」



 すぐ近くの湖で獲れた新鮮なお魚と、恐らくそれに合うように作られたイザヨイ酒。

わたしが魚好きなことを差し引いてもかなり評価が高い。



「お待たせいたしましたぁ~! こちらシーホース刺しになりまぁ~す! こちらの酢味噌をつけてお召し上がりくださぁ~い!」



「はーい」



 つ、遂に来たわ、シーホースのお刺身……



「なんか、すっごいピンク色のお肉なのね」



 普通の馬刺しのような赤身肉とも、鶏肉のような薄い桜色とも違う、ド派手なピンク色をしている。

今までの経験上、こういうのはちょっと味が微妙みたいな気がするんだけど……でも美味しいって評判だし、とにかく食べてみよう



「酢味噌をつけてっと……はぐ」



 ……もぐもぐ。



「……ん!!」



 なんだろう、プリッとしてちょっとコリコリしてて……馬刺しと刺身こんにゃくを同時に食べたような感じ……?



「でも、美味しいかも」



 少しだけ水棲魔物特有の生臭さがあるけど、酢味噌のおかげで全然気にならない。



「コク、コク……ん~! イザヨイ酒に合うわねこれ!」



 わたしはシーホース刺しと地酒を楽しんだ。



 ―― ――



「お会計5650エルになりまぁ~す!」



「ごちそうさまでした」



「ありがとうございましたぁ~!」





 …………。





 ……………………。





 最高の休日やん。




 【湖鮮料理・忍琶/イザヨイ酒『葉隠』、マスと湖草のカルパッチョ、シーホース刺し】



 ・お店:湖が見える良い立地。たまに野生のシーホースも見える。



 ・値段:まあまあ高い。



 ・料理:イザヨイ酒と合わせると更に美味い。



 ヘンリエール的総合評価:91点。

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