第50話 一人焼き肉は至福の時間



「ふふふ……つ、遂にきてしまった……」



 〝焼肉叙々星〟



「今日は食べまくるわ!」



こんにちは、ヘンリエールです。

昨日、わたしが働いている商業ギルド『カゼマチ食品』から夏のボーナスが支給されました。

イザヨイの支部に配属になってから初めてのボーナス。

最初のボーナスの使い道は『ちょっとお高い焼肉屋さんに1人で行くこと』にしようと前々から決めていた。



「す、すいませーん……」



 お店の豪奢な扉を開けて中に入る。

ここに来るまではめちゃめちゃテンション高めで意気込んでたけど、いざ一人で焼肉屋さんに入ると緊張するわね……



「いらっしゃいませお客様」



「えっと、予約したヘンリエールです」



「ヘンリエール様……はい、おひとり様でご予約ですね。こちらへどうぞ」



「はい……」



 店員さんに案内されてお店の奥へ。

てかおひとり様で予約とか言わなくたって良いじゃない、ちょっと恥ずかしい。



「こちらのお席になります。奥にあるマジックパネルで注文していただきまして、最初のお肉が到着した際にこちらで点火いたします」



「はい」



「網の交換は無料ですので、お気軽にお声掛けください」



「わかりました」



 席は二人掛けの個室になっていて、周りを気にせず食事が出来る。

さすが高級焼肉屋さんね。



「なに食べよっかなあ。とりあえずこの盛り合わせが……えっと、1人前……4200エル!?」



 これだけで安い焼肉屋さんの食べ放題プランいけちゃうじゃない。

しかもお肉もちょっとずつしか乗ってないし……



「い、いけないいけない。今日はボーナスをパーッと使うって決めてるんだから、値段なんて気にせず食べるわよ」



 よし、盛り合わせと……ざぶとん? 面白い名前のお肉があるわね、これも頼んで……



「ミスジ、サンカク……あ、これは知ってるわ! シャトーブリアン!」



 『最上級ヒレ肉、シャトーブリアン4切れ:9800エル』



「…………」



 いくっきゃないわね。



 ……。



 …………。



「お待たせいたしました、こちらシャトーブリアンになります」



「は、はい」



 先に届いた盛り合わせのお肉を食べていたら、遂にやってきたシャトーブリアン。

他のも美味しかったけど、これはもう別格に楽しみだ。



「あまり焼きすぎないように……よしっ」



 まだ赤みが残るレアな焼き加減で肉を取り、甘口のタレに浸けていただく。



「……はぐっ」



 …………。



「……溶けちゃった」



 これはたしかに、9800エルかも。



「もういっこ頼んじゃお」



 ―― ――



「ふう、美味しかった……」



「ありがとうございます。こちらお会計になります」



「はい。えーと、38500……」



 …………。



「4万エルで」



「頂戴いたします……こちらお返しの1500エルになります」



「ごちそうさまでした」



「またお越しくださいませ」





 …………。





 ……………………。





 やっぱりわたしはチェーン店の食べ放題でいいや。




 【焼肉叙々星/高いお肉いっぱい】



 ・お店:個室で換気もしっかりしてて良かった。



 ・値段:バカ高い。



 ・料理:めちゃめちゃ美味しい。でもバカ高い。



 ヘンリエール的総合評価:77点。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る