第47話 害獣ジビエはケモノ臭い
「ジビエ肉、ですか……」
「実はうちの農場を荒らすゴミどもを罠で捕まえて解体し、ジビエ料理として提供してるんですよ」
「ええ……」
こんにちは、ヘンリエールです。
今日はわたしが働いている商業ギルド『カゼマチ食品』の取引先である農業ギルドのファームレストランにお邪魔しています。
〝塚内農場〟
ここは『カゼマチ食品』の主力商品のエルフードの材料に使わせてもらっている野菜を作っている農場なんだけど、栽培している野菜を食い荒らしに来る『シシザル』という動物を定期的に捕獲していて、ただ駆除するだけよりも何かに有効活用できないかということで、シシザルの肉を栽培している野菜と一緒に料理して提供するファームレストランを併設しているらしい。
「シシザルの肉は少し……いや、まあまあクセがありますが、同じくクセの強いパクチーなどの香草と合わせることでクセが対消滅してまろやかな味わいになるんですよ」
「本当ですかそれ」
今回は農場の見学ついでにファームレストランで食事もご馳走してもらえることになった。
ジビエかあ……わたしはどちらかというとクセが無いお肉が好きなんだけど、大丈夫かしら。
「お待たせいたしました。こちら蒸したシシザル肉とパクチーのナンプラーサラダでございます」
「ありがとうございます……ナンプラーってなんですか?」
「魚醤のことですね。魚と塩を原料にした醤油の様な調味料です」
「へえ……」
お魚は大好きなので、ちょっと期待できるかも。
「こちらも少々クセのある調味料ですが、ジビエ肉とパクチーのおかげでクセが対消滅してマイルドに仕上がっております」
「はあ……」
ちょっと不安になってきたな。
あとなんか、若干死んだ魚を放置した感じの生臭い香りが漂ってきてる気がする。
まあでも、本当に美味しければ害獣駆除も兼ねられて一石二鳥な料理ですものね。
とにかくまずは食べてみよう。
「そ、それではいただきます……森羅万象の恵みに感謝を」
ぱく……もぐもぐ。
「…………」
「いかがですか? 口の中でシシザルのケモノ臭さとパクチーの青臭さ、ナンプラーの生臭さが交わり最強になったでしょう」
……。
……ゴクン。
「こくこく、こく……ふう」
わたしは味覚と嗅覚を遮断してサラダを水で流し込んだ。
―― ――
「本日はお世話になりました」
「またいつでも見学に来てください。あ、良ければシシザルの肉をエルフードの原料に……」
「気が向いたら検討を考えさせていただきます」
…………。
……………………。
なにも対消滅してねえから。
【塚内農場/蒸したシシザル肉とパクチーのナンプラーサラダ】
・お店:田舎って感じ。
・値段:タダ。普通に食べるとちょっと高い。
・料理:獣臭くて青臭くて魚臭くて生臭い。万物の臭み。
ヘンリエール的総合評価:0点。
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