第48話 生親子丼は絶対食うな
「えへへ……ヘンリエールさん、今日はワタシに付き合っていただいてありがとうございます」
「可愛いのが手に入ってよかったわね」
こんにちは、ヘンリエールです。
今日はハーピィ族のヒバリちゃんと一緒にショッピングモールに来ています。
ヒバリちゃんが双子の妹ちゃんの誕生日プレゼントを買いたいということで、わたしも付き合って一緒に選びました。
「それにしてもエプロンかあ。妹ちゃん達、まだ子供なのにお料理手伝って偉いわね」
「ヘンリエールさんに、『いつか自分たちで産んだタマゴを食べてもらうんだ』ってがんばってます」
「それは止めた方がいいんじゃないかしら……」
ヒバリちゃんは『エッグランド・はぴはぴ☆ハーピィ』という、ハーピィ族の産みたてタマゴが食べられるちょっと大人なお店で働いている。
自分の産みたてタマゴを他の人に食べさせるのは多分だいぶアブノーマルなので、妹ちゃん達には是非とも認識を改めてほしい。
いやまあ、ヒバリちゃんのお仕事を否定しているつもりはないのだけどね。
なんならわたしも食べちゃってるし。
「ヘンリエールさん、そろそろお腹空きませんか? お買い物付き合ってくれたのでワタシにごはんご馳走させてください」
「えっいいの? じゃあお言葉に甘えちゃおっかな~」
わたしは奢られるのに遠慮しない。
他人のお金で食べるごはんは最高に美味しいから。
「といっても、ここのレストラン街に来たの初めてだから良いお店とか知らないんですけどね」
「わたしも初めてかも。どこか適当に入っちゃおうか」
というわけで、ショッピングモールの気になったごはん屋さんに二人で入ることに。
〝鳥奴隷〟
「……料理はおいしそうだけど、お店の名前はすごいわね」
「ヘンリエールさん、今度はぴはぴ☆ハーピィで奴隷ごっこしましょ?」
「しないわよ」
お店に入ってメニューを眺める。
ふわとろオムライス、半熟親子丼、じゅわっとだし巻き卵……なるほど、ここは卵料理メインのお店なのね。
あ、ちなみに鶏の卵ね。ハーピィじゃないわよ。
「ヘンリエールさん、これ見てください」
「えーと、なになに……『ぬるっと新鮮☆生親子丼』……なにこれ」
「なんかいやらしいですね」
「やめなさい」
親子丼は前にパーシアス先輩と食べた出前のやつがめちゃめちゃ美味しかったので、かなりお気に入りの卵料理だ。
鶏肉は火を通さないと危ないって聞いたことがあるけど、これは生の親子丼ってことなのかな……大丈夫かしら。
「怖いけど、興味あるわね……」
「ミニサイズもあるみたいなので、別でひとつ頼んでみます?」
「良いわね」
というわけで、ミニサイズの生親子丼をヒバリちゃんと分けて食べてみることにした。
…………。
「お待たせいたしました~! こちらふわとろオムライスが二つと、ミニ生親子丼になりま~す!」
「……あ、ども」
「ありがとうございます……」
生親子丼は、丼ぶりご飯の上に生の鶏肉と卵黄が乗った料理だった。
卵黄の上に薬味の青ネギと刻みのりがかかっている。
「こちらの特製醤油たれをかけてお召し上がりくださ~い!」
「あ、はーい……」
…………。
「本当の本当に生なんだけど」
「これ、大丈夫なんですか……?」
見た目はなんというか、焼く前のお好み焼きの具材みたいね……
「よし、まずはわたしが毒味してみるわ」
「ヘンリエールさんすごい漢気。すき」
卵黄を潰して醤油たれをかけ、生肉と一緒にレンゲで掬う。
「……ふう、森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……はむ」
……もぐもぐ。
「…………」
「ど、どうですか?」
「……めっちゃ調理前って感じ」
―― ――
「お会計3200エルになりま~す!」
「あ、カードで……」
「ありがとうございました~!」
「ヒバリちゃんごちそうさま。……うーん、おなか壊さないか心配だなあ」
「ヘンリエールさんヘンリエールさん」
「ん? どうしたのヒバリちゃん」
「妹たちがタマゴ産めるようになったら、ヘンリエールさんに姉妹丼をご馳走しますね」
「やめなさい」
…………。
……………………。
3日後に時間差でおなか壊したし熱も出た。
【鳥奴隷/ぬるっと新鮮☆生親子丼】
・お店:綺麗で広くて良い感じ
・値段:ショッピングモール価格。ちょい高い。
・料理:『あ、これ生焼けだわ』のレベル100。ちなみに食中毒多発で1か月後に閉店してた。オムライスは美味かった。
ヘンリエール的総合評価:21点。
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