第41話 お好み焼きは完成品を出してくれ



「よし、お仕事終わり。今日のごはんはどうしようかな~っと」



 こんばんは、ヘンリエールです。

今日は早めに仕事が終わったので、少し街をぶらついて適当なお店にでも行ってみようかしら。



「うーん、良い匂い……ここの家はきっとカレーね」



 この時間になると周りの家から夕ご飯を作る香りが漂ってきて、なんともいえない気分になる。

いいなあ……わたし、食べるのは好きだけど自分で作るのは苦手なのよね……



「くんくん……ん? なんだろう、ものすごく美味しそうなソースの匂い……たこやきかしら……?」



 〝お好み焼き・とんとん堀〟



「お好み焼き……?」



 好きな物をひたすら焼いて食べる感じかしら……?

なんだか面白そうだし、今日のごはんはここにしよう。



 ガラガラ、ガラ。



「へいラッシャイ! やで~!」



「あ、一人で……」



「一名様ご案内やで~!」



 化ヶ狸族の店員さんに案内されて席に向かう。



「わ、鉄板だ」



 席の真ん中には長方形の鉄板が設置されていて、他のお客さんを見ると、何やらパンケーキっぽい物をそこに置いて切り分けて食べていた。



「ご注文お決まりですか~?」



「あっいや、えっと……オススメとかあります?」



 初めて行った店で注文に迷ったらオススメを聞く。

最近身に着けた高等テクニックよ。



「ほなら豚玉デラックスとかどうですか~?」



「あ、じゃあそれで」



「かしこまり~! 少々お待ちくださいやで~!」



「ふう……あら? これはなにかしら」



 席の端にメニュー表とは別でなにかの説明書きみたいなものが置いてある。



「お好み焼きの焼き方……」



 ……もしかして、あのパンケーキっぽいやつって、自分で焼くのかしら?



「お待たせしました~! こちら豚玉デラックスになりますやで~!」



「あっりがとう、ございます……」



 運ばれてきたのは、白くてドロドロした謎の液体の上にキャベツや生の豚肉が乗った料理だった。

いやこれ、絶対わたしが自分で焼かないといけないやつじゃん。



「……よし、やるしかないわね」



 わたしは焼き方の説明書きを読みながら、一緒に載っている写真を参考に見よう見まねで豚玉デラックスを焼いていった。



「えっと、具材をよく混ぜて、油を塗った鉄板で焼いて……豚肉はあとで乗せる? ちょっと、全部混ぜちゃったんだけど……!」



 …………。



「片面が焼けたら、ヘラで裏返す……こ、こうかしら? わっ! 端が崩れて折れちゃった~!」



 …………。



「ハケでソースを塗って、お好みで青のりとかつお節、マヨネーズ……よし、全部乗せよう」



 …………。



「出来た! 美味しそう~!」



 途中ひっくり返すのをミスって若干形がアレだけど、初めてにしては上出来だろう。

さすがわたし。やればできるじゃない。



「それじゃあ、森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……はぐ……あっつ! はふ、はふ!」



 …………。



「うっま」



 このあともう一枚追加で食べた。

二枚目はモチ明太デラックスっていうのにした。



 ―― ――



「お会計1500エルになりますやで~!」



「はい。ごちそうさまでした」



「まいどおおきに~! また来てやで~!」





 …………。





 ……………………。





 正直めんどいから作って出してくれ。





 【お好み焼き・とんとん堀/豚玉デラックス、モチ明太デラックス】



 ・お店:ソースの匂いと煙まみれ。



 ・値段:普通。



 ・料理:美味いけど作るのがめんどい。



 ヘンリエール的総合評価:74点。

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