第40話 ヒーローのグミは本当にジューシーなのか?



「うーん……多少は減ったけど、まだまだ闇市に流されてるわね……」



 こんにちは、ヘンリエールです。

以前に調査したスラム街の闇市に賞味期限切れのエルフードが売られている問題、一度流出元を特定して対策をしたので、確認調査ということで再び闇市に行ってみたのだけれど、他にも入手ルートがあるのか、いくつかの店で違法な賞味期限切れエルフードが安く売られていた。

まあ回収しても廃棄するだけだし、ある程度は仕方ないのかもしれない。



「賞味期限が切れて3日経ったら自動的に爆散する魔法でもかけておこうかしら……」



 そんな感じでスラム街を歩いていた時だった。



「あっヘンリーねーちゃんだ!」



「ねーちゃーん!」



「……おねーちゃん」



「スラムのガキどもじゃないの。どうしたのこんなところで」



「ヒーローが来るんだよヒーロー!」



「ケロルライダーがスラムに来てるんだ!」



「……グミ、くれるの」



「えっなにそれ、誰?」



 ケロルライダー?



「ねーちゃんケロルライダー知らねーの? 遅れてら~」



「子供の流行なんて分かんないわよ」



「ケロルライダーはスラムのヒーローなんだ!」



「……色んなスラム街に行って、グミをくれるの」



「グミ? くれるの?」



 どうしよう、知らない人に食べ物貰っちゃダメって教えた方が良いのかしら。

いやでも、わたしもスライムゼリーとか奢ってあげたしなあ……まああれは屋台で買ったやつだけど。



 パカラッパカラッパカラッパカラッ……



「スラム街の良い子のみんな! ケロルライダーが、来た!!」



「「うわあああああケロルライダーだあああああ!!」」



「わぁっ!?」



 遠くから馬か何かが走って来るなーと思ったら、まさかのケンタウロス族だった。顔に何故かカエルのような仮面を付けている。

ケンタウロス族は下半身が馬、上半身が人型のヒューマンで、主に手紙や荷物の配達業務を担う郵送ギルドで働いていたり、馬車より速いため背中に人を乗せて高速タクシーのような仕事のギルドに所属している人が多い。この人の仕事は……街の治安維持、とかなのかしら?



「さあ良い子のみんな! ケロルライダーがパーフェクト・グミを無料配布しに来たよ!」



「わああああ無配だああああああ!!」



「グミ食べたーい!!」



「……グミ、すき」



 ケロルライダーが子供たちに謎のお菓子を配っている。

なるほど、これが例のグミか。



「そちらのお嬢さんも、パーフェクト・グミを食べてスクスク育ってくれよな!」



「あ、ありがとうございます」



 わたしまで貰っちゃった。もしかして子供に見られてたのかしら……?



「パーフェクト・グミは完全栄養食! ひとつ食べれば半日分の栄養がまるっと摂れるんだぜ!」



「へえ……」



 それは凄いかもしれない。

しっかりしたごはんが食べられないスラムの子供達にはありがたいだろう。



「ヘンリーねーちゃん、このグミめっちゃジューシーなんだぜ!」



「え~本当? 普通のグミなんじゃないの~?」



 わたしは半信半疑でグミを食べてみる。



「森羅万象の恵みに感謝を。いただきます」



 はむっ……もぎゅ、もぎゅ。



「こ、これは……!!」



 めっちゃジューシーだった。



 ―― ――



「「ケロルライダー! グミありがと~!!」」



「……ばいばい」



「ケロルライダーさん、グミ美味しかったです」



「はっはっは! スラムの子供たち、がんばって生き残るんだぞ!! ……あっエルフのお嬢さん、少しよろしいですか?」



「えっ? な、なんでしょう?」



「そちらの胸元のギルドバッジ、カゼマチ食品さんですよね? わたくし、ケロット製菓の者でして……」



「えっあっ……へっ!? 同業の方だったんですか!?」





 …………。





 ……………………。





 ケロルライダーと名刺交換した。




 【ケロット製菓/パーフェクト・グミ】



 ・お店:子供にやさしいスラムのヒーロー。



 ・値段:無料配布。



 ・料理:めちゃめちゃジューシー。栄養満点。



 ヘンリエール的総合評価:81点。

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